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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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襲撃

「す、全て……ですか? ハイ」

「そうですぞ。例外なく、フィロリアルのアリア種の卵を全て買い取るのですぞ。金はこれだけありますぞ」


 と、俺はシルトヴェルトでもらった金袋をドサッと魔物商の前に差し出しますぞ。


「これでお釣りがくるはずですぞ」


 中身は全部金貨ですな。

 これで買えない物があるのでしたら、またシルトヴェルトでもらってくるだけですぞ。

 それでも足りないのでしたら盗賊狩りでもして金を調達するだけですな。


「か、貨幣がシルトヴェルト国の物ですね。ハイ」

「問題がありますかな?」

「い、いえ、私共は国を跨いで商売をしているので、問題はありません。ですがここはメルロマルクなので少し低めに扱わせてもらいますが、よろしいですか? ハイ」

「それでいいですぞ」

「では、私が用意できる全てのフィロリアルのアリア種の卵を提供させて頂きますです。ハイ」


 魔物商の配下が金貨を確認して驚きの声を漏らしていますぞ。

 雇用主の魔物商も驚きで言葉を失っているご様子。

 しばらくすると押し車に満載になったフィロリアル様達の卵が運ばれてきましたぞ。


「これが、私共の商品にあるフィロリアルのアリア種の卵全てです。ハイ」

「余す事無いですな?」

「ありませんです。ハイ。たまごガチャの景品も含めて全てです。ハイ」


 ふむ……という事は、この中に必ずフィーロたんになる卵があるはず!

 俺は喜びの感情で満たされました。


「良い買い物をしましたぞ」

「魔物紋の登録、孵化器の手配はどう致しますですか? ハイ」

「そっちは問題ないですぞ」


 シルトヴェルトの方で用意してもらえますぞ。


「それじゃあ、良い買い物をしましたぞ。ではさらばですぞ」

「ありがとうございましたです。ハイ。……指名手配犯への内通を疑われる可能性があるので、私共はこれからしばらく閉店となりますです。ハイ」


 俺はスキップ気味にテントを出ましたぞ。

 山ほどの卵です。このままではポータルで運べませんな。

 どうしますかね。安全そうな場所で、小分けにしてポータルで運びますかな。

 と、俺はついでに買い取った荷車を前にホクホク顔で歩きますぞ。


 袋にフィロリアル様の卵を小分けにして入れて、ポータルでシルトヴェルトに運んで行きますぞ。

 もちろん、過去の失敗を参考に、この元康、メルロマルクのポータル管理はしっかりしてますぞ。

 ポータルは本来四カ所しか取得できませんが、スキルによる強化と七星の強化にある特殊強化でポータル数は格段に増えるのですぞ。

 しかも管理もしやすくなっておりますな。


 まあ、卵を全てシルトヴェルトに運び終えて、登録と孵化準備をするだけでその日は終えてしまいました。



「さてと」


 卵の整頓を終えた俺は、お義父さんに報告せずにこれまでの問題に清算に行ったのですぞ。

 それは……メルロマルクの三勇教とクズ共をぶっ潰す事!

 錬も不穏な動きと言っていたので、邪魔者共は先に潰しておくのが良いでしょう。


「ブリューナク!」


 夜……メルロマルク城下町にある三勇教の教会を正面からスキルをぶっ放して乗り込みました。

 轟音を立てて教会の扉をぶち抜き、中に入ると、騒ぎを聞きつけて三勇教の神父やシスターが駆けつけてきます。

 奴等は同罪ですな。

 お義父さんの命を狙って胡坐をかいていた罪、万死に値する!


「何者だ!」

「愛の狩人ですぞ! 故あって、三勇教にお義父さんを弾劾する愚かさを教えに来たのですぞ!」

「何!?」

「エイミングランサーⅤ!」


 マルチロックで目の前にいる愚かな邪教徒共を可能な限りロックオンしました。

 スキルが発動して邪教共を駆逐していきますぞ


「ぐはぁ!」

「ぎゃあああ!」

「ははははは! 未来の不安の種は先に摘んでおくのですぞ!」


 まあ、死なない程度に加減はしておりますがな。

 我慢の限界はとっくに超えていたのですぞ。


「教皇は何処ですかな?」


 最後に命乞いをしている神父相手に槍を向けて警告しました。

 お義父さんが殺すなというから死んだ方がマシの恐怖をコヤツ等に植え付けているまでですぞ。

 時と場合によっては教皇辺りは消し炭にするつもりですがな。 


「悪魔に語る口など持たない!」

「ではその口、引き裂いてくれようですかな」


 槍の先を神父の口にねじ込んで、少しずつ、右へと移動させます。

 この槍は十二の強化と無数の魔物共の屍から作られた伝説の槍。

 人の肉など簡単に裂けるでしょうな。


「話さないと痛い目を見るのですぞ」

「や、やめろぉおおおぉおお!」


 やがて神父は白状しましたぞ。

 さすがは利己的な邪教徒。簡単に根をあげましたぞ。

 真に信じる者の為ならば死すらも受け入れるのが愛という物。

 俺はお義父さんとフィーロたんの為ならば、後悔はあろうとも命など惜しくはありません。


「きょ、教皇様は出国なさった! ここにはいない!」


 ふむ……怪しい所ですが、この建物にはいないのですから確かなのでしょう。

 俺は槍を抜いて、思い切り神父の頭を叩いて失神させましたぞ。

 まあ、正面から乗り込まれて手も足も出なかった事を悟ったのなら、少しは大人しくなるでしょうな。


 後は……。



「槍の悪魔が城に向かっているぞ!」

「急いで防衛線を展開するんだ!」


 三勇教の教会を破壊した後、メルロマルクの城下町を歩いて城を目指しますぞ。

 兵士共が徒党を組んで襲ってきますが、俺の敵ではありません。

 千切っては投げ、千切っては投げ、死なない程度に倒していきます。


「うわ、なんて強さだ!」

「エイミングランサーⅩ!」

「ぐはぁああああああ!」

「ぎゃあああああ――」


 襲い来る兵士共を薙ぎ払いながら、愚かにも兵士共が放った魔法による火の海と化した城下町を、俺は火を消す為に火の魔法を唱えますぞ。

 火を操るという事は火を消す事も可能。

 まあ、中々難しいですが、戦争をやりにきた訳ではありませんからな。

 勇者を殺そうという身の程を知らない愚かな連中に身の程を叩きこみに来ただけですぞ。


「さーて……クズとヴィッチは何処ですかな?」


 閉ざされた城門をスキルでぶち抜いて正面から乗り込みますぞ。

 城の中をゆっくりと歩いて行くと、何処からやってくるのか兵士がワラワラと出て来ては倒されて行きますぞ。

 加減するのが面倒なのを知って欲しいですぞ。

 この程度の城、外から強力な魔法を何発か撃てば落ちるのを理解しているのですかな?


「クズとヴィッチ……王と王女は何処ですぞ。この元康が死なない程度に身の程を叩きこみに来たのですぞー」


 と、玉座の間を抜け、クズの寝室やヴィッチの部屋へ行ったのですが、姿が見えませんな。

 さすがはクズとヴィッチ。

 逃げ足だけは速いですな。


「お、王と姫は軍を引き連れて出国した! 国にはいない!」


 大臣っぽいのが命乞いをしながら言いましたぞ。

 ふむ……これは骨折り損と言う奴ですな。

 面倒ですな……まあ、これで奴等もある程度身の程を理解するでしょう。


「ではすぐに報告するのですぞ。余計な真似を仕出かしたら、お前等の命など容易く刈り取れる。ちゃんと身の程を理解しろ……ですぞ。ハハハハハハ!」


 悔しげに呻く連中を無視して、俺はポータルで帰還したのですぞ。



「おかえり元康くん」


 夜、シルトヴェルトに帰還するとお義父さんがシルトヴェルトの城で出迎えてくれましたぞ。


「何処行ってたの? 城の倉庫に卵が一杯あるけど……食べる訳じゃないよね?」

「全部フィロリアル様の卵ですぞ」

「あ、やっぱりそうなんだ」

「配下が増えますわ」

「騒がしくなるね! コウ、楽しみー」

「んー? どっちにしてもナオフミはサクラが守るよ?」

「ありがとう。サクラちゃん。で、元康くん、今回は大量に買ったね。波に備えてなのかな?」

「この中にフィーロたんがいるはずなのですぞ」

「あー……そっちなんだ」


 お義父さんが半眼で見ているとサクラちゃんが後ろからお義父さんに抱き付いて登りますぞ。

 なんとも微笑ましい光景ですな。

 ですが、この元康、フィーロたんに再会できると思うと胸が躍りますぞ。


「ついでにメルロマルクの三勇教と城に乗り込んで身の程を叩きこんできましたぞ」

「え? サラッととんでもない事を言ってるよね? 何をしたの? 下手をすると戦争になるってわかってる?」


 その後、お義父さんに数時間に渡ってお願いをされましたぞ。

 お願いというか、最後近くは命令口調で、余計な事をしないで欲しいとのことでしたが。

 これは所謂、説教ですな。

 この元康、至らぬ所ばかりで申し訳ない気持ちでいっぱいですぞ。


「というか……ツメの勇者を探すはずなのに、元康くんは毛頭から探す気が無い様に感じるんだけど……」

「準備は重要ですぞ」

「まあ、それが元康くんの担当だしね。これだけのフィロリアルの卵があれば人海戦術が出来るもんね。シルトヴェルトの人達も関係各所と連絡を取り合って探している最中らしいけど」

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