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【社説】

がん登録制度 情報生かし患者支えよ

 医療では、患者情報を集め活用することも予防や治療につながる。がん対策の分野で動きだした。集めた情報を整理し活用する仕組みを対策に役立てたい。ただし、個人情報の漏出がないように。

 がんは日本では一九八一年から死因一位だ。今は国民の二人に一人がなり、年間約百万人が亡くなる疾患である。高齢化で増える傾向だし、治療を受けながら働き続けられる社会の実現も求められている。がん対策は社会全体で取り組む課題といえる。

 がんは、研究が進み原因や治療法、早期発見、予防対策などの技術が確立してきている。的確な予防法や治療を提供できれば患者を減らせたり、患者の社会復帰にもつながる。それには患者の実態を把握しその情報を活用することが大切になる。

 そこで期待されているのが全国がん登録制度だ。医療機関に患者の情報登録を義務付け、国立がん研究センターが集約する。

 最初にがんと診断された時点から、どんな治療を受けたか、その結果どうなりどれくらい生存しているかなどを追跡する。予防や治療の評価を行う基礎となる。

 地域ごとの特徴も把握し対応できる。例えば、大腸がんが多い地域ならそれに合わせた対策が取れるし、早期発見が少ないのなら検診の強化が必要と分かる。医療の提供体制を地域に合わせきめ細かく検討できる。

 がん登録は欧米では既に取り組まれている。日本では一九五一年に宮城県で始まった。徐々に取り組みは進み規模は広がったが医療機関の参加は任意で、信頼性に地域ごとのばらつきがあった。

 二〇一三年にがん登録推進法が成立し、一六年から全国統一の登録が始まった。やっと法整備が社会のニーズに追いついたことは歓迎したい。

 一月、制度にのっとった情報が初めて公表された。一六年にがんと診断された人は九十九万五千百三十二人だった。実態に近い数字だ。部位別では男性は胃、前立腺、大腸の順、女性は乳房、大腸、胃の順で多かった。

 今後は、研究者にも情報を公開する。情報漏えいなど不正には二年以下の懲役など罰則がある。外部に提供する情報は患者個人が特定できない対策もされている。それでも情報管理には最新の注意が必要なのは言うまでもない。

 手ごわいがんには新たな“武器”だ。しっかり活用し患者を支えてほしい。

 

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