2019年の幕が開けた。平成最後のカウントダウンという一度きりの「瞬間」を、Perfumeの3人は横浜アリーナに集まった1万2000人のファンだけでなく、渋谷交差点にいる2000人の観客、そしてライブ配信を見ていた延べ9万人と共有した。

年越しの瞬間の横浜アリーナ。会場全体が光に包まれ、無線制御でカウントダウンしていく数字がLEDライトで描かれた
(出所:NTTドコモ)
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2019年の始まりをファンと一緒に迎えて喜び、肩を組むPerfumeの3人
(出所:NTTドコモ)
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渋谷のサテライト会場にも、年越しの瞬間映像が遅延なく送られた
(出所:NTTドコモ)
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 Perfumeの3人は肩を組んで喜び合うと、それまで着ていた赤い服を脱ぎ捨て、ステージ上で白い服に変身。今回のライブツアーの1曲「天空」を歌い上げ、新年の始まりを横浜アリーナのファンや渋谷交差点の観客、そしてスマホの視聴者と分かち合った。2019年の最初の1曲も、離れた場所にいるファンを含めて共有できたわけだ。筆者にとっても、平成が終わる2019年の最初に聴いた天空は、忘れられない曲になるだろう。

年越し前の赤い衣装を脱ぎ捨て、白い服に変身。2019年の最初の1曲「天空」を歌うPerfume
(出所:NTTドコモ)
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 顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)の大切さが叫ばれて久しいが、筆者自身の経験でいえば、誰かと共有できた体験ほど記憶に残りやすいと感じている。その意味では、5Gが本格展開される2020年以降は、離れた場所にいても同じ体験を同じ時間に複数の人と共有することで、そのときの喜怒哀楽がより強く頭に残る時代になるのかもしれない。CG(コンピューターグラフィックス)を使えばどんな映像でも作れてしまう今の時代だからこそ、リスクはあってもライブの価値はますます高まると感じた。

 企画段階では、Perfumeがライブツアーで回った全ての会場を5Gでつなごうといったアイデアまで出ていたという。だがそれには膨大な費用がかかる。そこで今回は日本を象徴する場所として渋谷のスクランブル交差点に絞り、「体験を濃くした」(菅野氏)。大みそかでにぎわう渋谷のスクランブル交差点が映れば、誰でもこれが事前に作り込まれたフェイクではなく、生中継の映像だと信じられる。

 ちなみにリオ五輪閉会式のセレモニー映像にも渋谷交差点が登場し、そこでマリオとドラえもんが協力して地球の裏側にあるリオに向かうというストーリーになっていた。菅野氏があえて渋谷を選んだのは、説明が要らない日本を象徴する場所と横浜アリーナをつなぐことで世界との共有まで意識したからでもある。