人里編です。人里では誰と出会うんでしょうか。
翌日、真田の協力(深海棲艦の言葉は人類のそれとは違うため翻訳機を用意)のもとヲ級の事実聴取が始まった。
「まず、君の仲間はどこにいる?」
「いない、私達はいわゆる穏健派で過激派の行動を止めようとしていた。
けど失敗して仲間や友達が大勢粛清された。
だから残った仲間と逃げようとした。
けどその途中でやつらに見つかって……グスッまた、やられた。……助けられなかった。グスッ……そしてずっと独りだった……ヒック
そしたら、目の前にボーキサイトが降ってきた……それを上のやつが食べようとしたら、釣られた」
ヲ級は一旦話を切るとしばらく今は亡き友を想い、すすり泣いていた。
それからもヲ級の事情聴取は続けられたが得られたものは少しの衝撃を鎮守府にもたらした。
「深海棲艦は、まだ生きている。……多分ここにも攻めてくる。
武装も種類も豊富になって…」
皆それを否定したかったが、目の前に実例がある上に可能性が絶対にないとも言い切れず、ただ重苦しい沈黙が臨時取り調べ室となった執務室を覆った。
舞台は変わって人里。ここは幻想郷最大にして唯一の人里。
その人里に彼女達は到着した。
「へぇ~。ここが人里かぁ」
「この雰囲気懐かしいですね♪」
「そう言えば扶桑さんは大正の生まれですもんね」
「あの頃はまだこんな街というか村がいたるところにあったわ」
「そろそろ買い物に行きましょ? じっくり見物するのは買い物が終わってからでもできますよ」
端から見れば正論を言っているようだが、実のところ大和はただ、早く買い物を終わらせたいだけであった。
「まずは居酒屋で待ってる鳳翔さんと合流しましょう」
彼女達が言う居酒屋とは鎮守府が幻想入りした次の日から早速人里にオープンした、鳳翔が切り盛りする居酒屋鳳翔だ。
元々は店は屋台だが、料理は一流であり、元の世界にいたときからどこに出店しても大繁盛だった。
この幻想郷では中心部からやや、鎮守府に近い西地区に屋台ではなく、店舗を借りて店を構えているという。
ちなみに居酒屋鳳翔の売り上げが、今のところ駿達の主な収入源である。
そのため、買い出しに来た大和達はお金を持っていないため、資金を管理している鳳翔のもとに向かっていた。
「あ、あれじゃないのか?」
「ん?そうですね。店の前で待ってくださってます」
「鳳翔さーん!お久しぶりなのです」
「待っていましたよ。さぁ、行きましょうか」
「まずは生鮮食料…主に野菜と肉ですね」
「そこに八百屋があります。野菜はそこで仕入れましょう」
鳳翔が指定した八百屋は威勢も体格もいい若干強面の親父が頭に鉢巻きを着けてまさに八百屋という感じで切り盛りしていた。
「いらっしゃい! 何をお求めで? ここは幻想郷一品揃えがいいって自負してるぜ」
「この紙に書かれた分を後で取りに来るので確保してくれますか?」
「こんなに買うのかい?」
「ええ、何しろ人数が多いので」
「わかった任せろ! 代金は…こんだけ買ってくれるんだ、少しまけてやろう…五百七十円でどうだ?」
「ちょっと高いですね……今度私のお店でサービスしてあげるから…五百三十円」
「ほう、何の店だ? 五百六十五円」
「結構繁盛している居酒屋ですよ。五百三十五円」
「もちろん酒はうまいだろうな?五百六十円」
「もちろんです。外の世界のお酒もあるわよ?仕方ないわね五百四十円」
「かーっ……そいつぁいいや。五百五十五円」
「五百四十七円」
「よしっ決まりだ!」
値引き合戦は最後は鳳翔が折れ、譲歩した。
「分かってるじゃねぇか。決まりだ!値段は五百五十五円。毎度ありぃ!」
「はい、お代。五百五十五円。」
「確かに。よし、これでこの商品はお前さん達のものだ。必ず取りにこいよ?」
「分かったわ。今度は私のお店にもきてね?」
「当たりめぇだ!」
商談が終わると彼女達は次の目的地へ歩き始めた。
「次は・・・お肉ですね。鶏肉と何でもいいからもう一種類。」
「じゃあ鴨と兎のお肉でも買っていきましょうか。コレノホウガヤスイカラ・・・」
「何か言いました?」
「い、いえ?なにも。さ、行きますよ。あそこの角を曲がった先にあります。」
鳳翔はかなり主婦体質も身に付いているようだ。
結局、買い物を全て終えた時には鳳翔の粘り強い値切りのお陰で予定の半分の資金で済んだ。
同行した者曰く、まるで大阪の商店街のおばちゃんそのものだったとのこと。
その帰り道、大和達は現人神である東風谷 早苗にひょんなことから絡まれ、鎮守府にまで着いてこられるはめになった。
ちなみにひょんなこととは、
早苗、大和にぶつかる→お詫びと自己紹介そして、話が盛り上がり暁が自分達のことをばらしてしまう→お邪魔させていただきます。
と、いう流れである。
「そういうわけで着いてきた東風谷早苗さんです。きっとここには大和だけではなく宇宙戦艦とかもいるはずです!とか言ってますけど…若干ショックだったんで撃っていいですか?」
「あとでな。ところで、帰る時はどうするんだ? 外は真っ暗だぞ?」
「・・・・・ハ!?」
急に冷や汗をかきはじめたので何事かと聞くと、夜道が怖いのだという。
そこで、本人の非常に強い希望で鎮守府に一晩泊まることになった。
「ま、こちらもおもてなししよう。『ヤマト、ヤマトはいるか?』」
「呼んだ?」
「その人に本来のお前の姿を見せてやれ」
「あいよ。じゃあこっちへ…」
しばらくして帰ってきたSFオタクが嬉しさのあまり失神して帰ってきても気にしてはいけない。
シナノがヲ級に名前を聞いたところ、命名してくれと言われたためこれ以降ヲ級は白龍と命名された。
由来は白い肌と近くにいた空母飛龍から。
あれ?展開が早い?ちょっと無理矢理かな?