【首都スポ】[フェンシング]17歳ツヨカワ女剣士! 上野優佳は東京五輪メダル候補2019年2月1日 紙面から
2018年の日本フェンシング界に、一躍その名をとどろかせた若き女剣士がいる。世界ジュニア(20歳以下)・カデ(17歳以下)選手権女子フルーレでジュニア、カデの両部門を制覇、日本選手初の2冠に輝いた埼玉・星槎国際高2年の上野優佳(17)だ。同年10月のユース五輪(ブエノスアイレス)の同種目でも優勝し、3冠を達成。来夏に迫る東京五輪に向け、中2から参戦するシニアの舞台での飛躍が期待されるホープの今を追った。 (フリージャーナリスト・辛仁夏) 自称、人見知り。それでも、真摯(しんし)な受け答えに人柄がにじみ出た。少しはにかみながらも目を輝かせて、自分の考えをハキハキと答える姿がまぶしく映る。17歳の女剣士、それが上野優佳の等身大の姿だ。 「小さい頃からオリンピックに出たい夢を持っていて、太田さんがロンドン五輪団体で銀メダルを取ったのを見て、自分もあの舞台に立ちたいと強く思いました」 当時10歳の少女の目に焼き付いたメダリストの太田さんとは、現日本フェンシング協会の太田雄貴会長(33)。その会長は昨年、上野の快進撃をこうツイッターで伝えている。 「カデ&ジュニア世界選手権制覇!本当に快挙なんです!」 上野は昨年、シニアへの登竜門となる国際大会で3冠の偉業を成し遂げ、国内外の注目を集めた。17年世界カデ選手権ではベスト8に終わっただけに、年齢的に最後の挑戦となる昨年の大会には「絶対に優勝しようと思って臨みました」。その前に、想定外の事態が起きた。カデに先立って行われたジュニアで、頂点に立ったのだ。 「(ジュニアで)メダルは取りたいと思っていたんですけど、まさか優勝できるとは思っていませんでした」。苦しかったと振り返るジュニアの激戦を制して臨んだカデ。「リラックスしてできたので、気持ちとしては、決勝まで余裕のある試合ができました。(シニアへの)登竜門となる2つのカテゴリーを取ったので、これからはシニアが勝負の舞台だなと思いました」。目標の優勝を果たし、2冠を手にした。同年秋のユース五輪では日本選手団の金メダル第1号となり、東京五輪代表候補の若手筆頭株として名乗りを上げた。 フェンシングを始めたのは6歳ごろ。両親がそろってフェンサーで、国体優勝や日本代表コーチの経験がある父親が指導している練習場に遊びに行っていたのがきっかけだ。「最初はフェンシングをするつもりはなくて、練習前のバスケットボールやバレーボールをするのが楽しかったんですが、そのうちに自然な感じで、剣を握っていた感じです」。兄・優斗(19)と切磋琢磨(せっさたくま)しながら、高1までずっと父から指導を受けていた。 「小2くらいから泣きながらきつい練習をやってきて、あいさつや生活面も厳しく、メンタルを鍛えられて誰よりも強いと思います」 着実に才能を開花させ、国内外の大会で優勝を積み重ねた小中時代から注目を集めてきた。北京五輪日本代表監督などを歴任した埼玉・星槎国際高の江村宏二コーチ(57)の誘いがあり、昨春に大分・別府翔青高から転校した。「兄が中大に入って練習相手がいなくなったこともあって、練習拠点を移しました」と、その視線の先には東京五輪代表入りの目標もあったに違いない。 自身の強みは「守りに徹した上で(他の選手よりも)スピードと剣さばきがあり、相手によって戦法を変えられる」という臨機応変さ。日本女子フルーレでは、まだ誰も五輪メダルを取っていない。「(20年は)19歳とちょうどいい年齢なので、自分が絶対に出て、チームとしても個人としても金メダルを取りたい。銀メダルの太田さんを超えたいし、自分たちの代で変えたい」。東京五輪でレジェンドを超える日を迎えるため、剣の腕を磨く日々が続く。
◆ア・ラ・カルト●スポーツ万能 幼稚園からフェンシング、小1から小6まで水泳、中学3年間は陸上。「体を動かすことが好きで、スポーツ全般何でもできると思います」 ●今よりハードな生活!? 陸上部では800メートルと1500メートル、駅伝を走っていた。「部活後に別府から大分まで通ってフェンシングの練習をして、夜10時に帰宅して夜12時ごろに寝る感じで、今よりもハードな中学校生活でした」 ●憧れの人 野球が好き。「大谷翔平選手(エンゼルス)が一番好き。二刀流もすごいし、真面目な部分も結構好きです」 ●試合前日は…「特にルーティンはないですが、『勝つ』ということでトンカツを食べます」 ●好きな食べ物 「チキン南蛮とトマトは必ず食べますね。毎日でも全然いいくらい食べたいです(笑)」 ●好きな言葉 「父からの言葉で『有言実行』は絶対ですし、『苦しいときほど冷静に』ということはずっと言われています」 <上野優佳(うえの・ゆうか)> 2001(平成13)年11月28日生まれの17歳。大分県別府市出身。159センチ、53キロ。星槎国際高2年。小2から本格的にフェンシングに取り組む。17年全国高校総体優勝(当時は別府翔青高)。18年は世界カデ・ジュニア選手権で2冠、ユース五輪金。同年12月全日本選手権準優勝。両親と兄・優斗との4人家族でフェンシング一家。 ◇ 首都圏のアスリートを全力で応援する「首都スポ」。トーチュウ紙面で連日展開中。
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