岐阜県各務原市の養豚場で29日に確認された家畜伝染病「豚(とん)コレラ」の感染は、本巣市内の養豚場にも拡大した。野生イノシシから飼育豚への感染が指摘されたこれまでとは異なり、子豚の売買を通し人の手で感染が広がった事例といえ、関係者はショックを隠し切れない。
本巣市の養豚業者の関係者とみられる男性は30日、会員制交流サイト(SNS)で「残念ながら豚コレラ陽性反応出てしまいました」と報告した。
昨年10月まで、本巣市の養豚場に子豚を出荷していた愛知県内の養豚業の男性(49)は「同業者として残念でならない。(本巣市の農場関係者と)電話で今朝話したが泣いていた。明日はわが身だ」と表情を曇らせた。
十年来の付き合いだったが、岐阜県内での豚コレラの発生を受けて「お互いのため」と取引を中断した。悩んだ末の決断だったが不安は的中し、本巣市の養豚場は全頭を殺処分する事態に見舞われた。
出荷元の各務原市の農場は子豚を搬出する3日前に県の清浄性検査を受け、異常は確認されなかった。「検査時にウイルスが持ち込まれた可能性もあるのでは」と男性。行政の対応は後手に回っているとした上で、「豚コレラの問題で関東の客から嫌がられるようになり、(一部の出荷が)動かない」と肩を落とした。
恵那市の業者は「豚コレラが流行している状況で、県内の業者同士のやり取りはまずかったかもしれない」と指摘する。出荷する農家の豚が病気に感染すれば、買い受ける農場も被害に遭う恐れがあるためだ。この業者は以前から飼育豚の3分の1を繁殖させ、残りを愛知、静岡両県内から仕入れている。一方で「買う方も売る方も信頼関係で成り立っている。豚コレラの発生を受けて、全ての業者がすぐに県内からの購入をやめることも難しい」と一定の理解も示した。