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【芸能・社会】

柄本明「まだ覚めない夢の中に」 妻・角替和枝さんお別れの会

2019年1月31日 紙面から

角替和枝さんの「お別れの会」で、あいさつする柄本明(左)。中央は長男の柄本佑、右は次男の柄本時生=東京都世田谷区の北沢タウンホールで(代表撮影)

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 昨年10月27日に原発不明がんのため64歳で亡くなった女優角替和枝(つのがえ・かずえ)さんのお別れの会が30日、東京都世田谷区の北沢タウンホールで営まれ、浅野忠信(45)、大竹しのぶ(61)ら芸能関係350人、一般450人の計800人が参列した。喪主を務めた夫で俳優の柄本明(70)は、笑顔の遺影に「まだどこかにいるような気がします。毎日、毎日、まだ覚めない夢の中にいるようです」と涙ながらに語りかけた。

 亡くなって3カ月。角替さんのほほ笑みが、お別れに来た参列者を迎えた。遺影は数年前、自宅がある下北沢の喫茶店でカメラマンの浅井慎平さんが撮影した。故人のお気に入りの写真だった。

 下北沢は角替さんと柄本が芝居や生活の拠点として40年以上暮らしてきた街。白い花を基調に4000本の生花に囲まれた祭壇を前に、柄本は喪主としてあいさつした。

 「和枝ちゃんと初めて会ったのが21か22の頃。僕がひと目ぼれして、その人と一緒になれて子供も3人できました。とにかく残念です。64でしたから。正直にばかがつく、いい人でした」。40年以上連れ添った妻を失った悲しみを、絞り出すように言葉にした。

 角替さんは一昨年8月に受けた人間ドックでがんが見つかった。「骨に真っ黒ながんができちゃって…。その時点でステージ4でした。原発不明がんという面倒で、元のがんがわからないというやっかいな病気でした」と話し「和枝ちゃん、家族全員で病気と闘ってきましたが、とうとうこうなりました」と悔しそうに報告した。

 2人は1980年に結婚。長女、俳優になった長男佑(32)と次男時生(29)をもうけた。夫婦は大の仲良しでいつも一緒だった。毎朝、地元下北沢の喫茶店に通うのが日課で、家族や芝居の話などをして2時間ほど過ごした。浅井さんが撮った写真も、そんなある日の1枚。角替さんが亡くなって喫茶店通いも止めたという。

 「今は和枝ちゃんと行った喫茶店には行けません。思い出して…」。自宅地下の稽古場で、若い俳優たちが稽古をするのを見るのが励みになっているという。そして「一生懸命ご飯を食べて、寝るようにしています。この悲しみは生きている限りずっと…」。父親の切ない思いに佑や時生の目にも涙が浮かんだ。

 遺骨はいまも自宅にある。納骨の時期について、所属事務所は「家族で決めることですからわかりません」とした。

 告別式は当初、家族だけで営むことを考えていたが、仕事関係者や近所の人たちからの要望を受けて「お別れの会」として開くことを決めた。女性の友人は弔辞に代え、歌をささげた。

 「40年以上住んでいる場所で、こういう会ができてうれしい。和枝ちゃんは幸せな人生だったと思っています」と締めくくった。

お別れの会で祭壇に飾られた角替さんの遺影(高嶋ちぐさ撮影)

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◆國村隼 男前な人だった

 俳優の國村隼(63)は角替さんの人柄を「女優さんでありながら、すごく男前な人だった」と力説。演技力についても「こちらの芝居をちゃんと受け止めてくれるし、打てば返ってくる。融通無碍(ゆうづうむげ)な女優だった」と絶賛した。

 闘病中であったことについては、「全く知らなかった。びっくりした」。それでも昨年7月に撮影で会った際、「控室でうたたねしていた。今思えば体調が優れなかったのかも」と話した。

◆笹野高史「お疲れさま」

 柄本を通じて角替さんと親交があったという俳優笹野高史(70)は「ひとつのお芝居が終わったあとみたいに、『お疲れさま』としか言えなかった」と肩を落とした。

 最後に角替さんと会ったのは亡くなる直前、病室だった。帰ろうとすると、「相変わらずオシャレね」と声をかけられたという。その時を振り返り、笹野は「あの状況でそんな優しい言葉をかけられるだろうか。すごい人だなと思った」。

 柄本と角替さんは毎朝喫茶店で会話していたそうで、「本当に仲がいいなと思った。とても想像できないような、幸せな時間を毎朝過ごしていた」と思い出していた。

◆浅野忠信 本当に温かい人

 浅野忠信は柄本と親交があることから出席。直接、角替さんと面識はなかったというが、「柄本さんと接していて、本当に(角替さんは)温かい人なんだなと感じていました」と話した。

 あいさつで柄本さんの涙を見ただけに、「これからもし、柄本さんと一緒に仕事をする機会があったら元気づけたい」。役者としての大先輩である角替さんに対しては「こうやって僕らがいられるのも、1つの時代をつくってくれた方々がいたから」と感謝した。

 【主な出席者】安藤和津、國村隼、高田純次、笹野高史、ベンガル、佐藤B作、石橋蓮司、六角精児、吹越満、佐野史郎、大竹しのぶ、浅野忠信、小野武彦、村田雄浩、徳井優、石丸幹二、渡辺いっけい、永島敏行(順不同、敬称略)

 

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