大量廃棄が心配される節分の「恵方巻き」。農林水産省は「需要に見合った売り方を」と、スーパーやコンビニなどの団体に通知した。異例のこと。だが食品ロスは、売り手だけでは減らせない。
節分に恵方を向いて丸かじりすると縁起が良いといわれる恵方巻き。関西に古くから伝わるという風習だが、近年コンビニを中心に全国的に広まった。
すでに「ウナギの日」と化した感がある土用の丑(うし)の日同様、商戦が過熱気味。気の早い大手コンビニの中には、年明け前から「恵方巻き」と大書されたのぼりを並べたところもあるほどだ。
恵方巻きは、その日限りの縁起物。大量生産が大量の食品ロスにつながりやすい商品だ。
節分の時期には食品廃棄量が顕著に増えるという。店頭に並ばず、工場から直接廃棄に回る恵方巻きもあったという。
そんな世相に一石を投じたのが、昨年の二月一日、兵庫県の地方スーパー「ヤマダストアー」が地元で配った一枚のチラシ。食品ロスを出さないように、「売り切れ御免(ごめん)」を顧客に呼びかけ、理解を求め、メディアに乗って全国的な共感を呼んだ。
これを受け、量販店の中には、予約販売を強化するなど、廃棄対策の動きも出始めた。
日本だけでも一年に約六百五十万トンという食品ロスは、地球規模の深刻な問題だ。
大量生産(乱獲)、大量消費、大量廃棄の悪循環は食の資源を枯渇の危機に追い込んでいる。
すでに絶滅が危惧されているウナギやマグロだけではない。
例えばタコ。欧州などでの国際需要の高まりと、アフリカ産の不漁が相まって、輸入の冷凍ダコが高騰し、たこ焼きの“高級化”さえ、心配されるご時世だ。
国連は、人類が繁栄を続けるための「持続可能な開発目標(SDGs)」の中に「二〇三〇年までに世界全体で、一人あたりの食料廃棄を半減させる-」を掲げている。そのためにも「つくる責任、つかう責任」を考えようと訴える。
食品ならば、売る側はその作り方、売り方を、買う側は買い方や食べ方を考えなければならない時代になったということだろう。
子々孫々まで、うな丼やマグロの刺し身を味わい続けていくために、恵方巻きの風習を末永く続けていくために。
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