社会

千葉10歳女児死亡 2017年まで住んでいた糸満市、ハイリスク認識も…「虐待確認できず」

「女児の虐待の事実については確認できなかった」と説明する糸満市こども未来課の金城満課長(右)=29日、同市役所

 千葉県野田市立小4年の女児(10)が死亡し、父親(41)が傷害容疑で千葉県警に逮捕された事件で、一家が2017年8月まで住んでいた沖縄県糸満市が家庭訪問を2度試みたが、父親の要望で延期され、訪問が実現しなかったことが29日、分かった。市は、母親へのドメスティックバイオレンス(DV)や次女(1)が低体重で生まれたことを踏まえ、一家を「ハイリスク世帯」とし、夫婦の関係や次女の健康不安について野田市へ申し送りしたが「身体的な虐待の事実は確認できなかった」として、女児の記録は提供していなかった。

 糸満市によると、女児は父親と母親との実子で長女。09年9月、母子で市へ転入した。父親と母親は11年10月に離婚したが、17年2月に再婚し同居した。母親はその後次女を出産した。

 17年7月、市の窓口に母親の親族から「母親へのDVと女児へのどう喝がある」と相談が寄せられ、市が女児の通う小学校に連絡。学校は女児の様子を観察し、担任が7月下旬の終業式に女児と父親を交え、3者面談した。虐待の事実は確認できなかったという。

 市は7月中に家庭訪問を2度計画したが、父親からの直前の連絡でどちらも延期になった。直後に父親は女児を連れて実家のある千葉県に帰省した。8月中旬、母親の親族が「一家と疎遠になり子どもが心配」と再び市に相談。市は女児らが沖縄に戻り次第訪問する計画を立てたというが、8月下旬、父親は女児と次女を連れて野田市に転居した。母親は出産後入院中だったため、退院後の9月に野田市に移った。

 糸満市は、転居まで家庭訪問がかなわなかった理由について「終業式の時、父親から市内の別の小学校に転校すると聞いており、一時帰省との認識だった。母親も入院中のため、沖縄に帰ってこないという想定はできなかった」と説明した。

 県中央児童相談所には、市から7月14日に相談があり、児相は支援体制の確立を助言した。その後、市から児相に相談はなく、児相も情報提供を求めなかった。

 県中央児童相談所の前川英伸所長は「県が市への指導・助言後も積極的に情報提供を求めるべきだったのか、市町村とのやりとりがどこまで必要か考えなければいけない」と話した。