東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から > 1月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

川口いじめ 市教委文書 「事実と異なる」母不信

川口市教委が開示せず、埼玉県教委への開示請求で出てきた文書=一部画像処理

写真

 埼玉県川口市教育委員会がいじめに関する多数の文書を当事者の元男子中学生に開示しなかった問題で、県教委の開示で判明した市教委の文書の中には、いじめとして問題になった原因が保護者にあるかのように印象付ける記述が複数あった。元生徒の母親は「事実と異なることを県教委などへ報告していたから、開示しなかったのでは」と不信感を強めている。 (柏崎智子)

 問題の記述があったのは、二〇一七年八月三十日付の「部外秘」とされた市教委指導課作成の文書。

 いじめの概要と学校、市教委などの対応をまとめたもので、冒頭の「本事案の概要」に「二年生時の夏休みに、母親とサッカー部保護者との間でトラブルがあり(中略)これをきっかけに、母親が一年生時の事案をいじめであるとして学校に申し出た」と書かれていた。

 しかし同じ文書の中で、元生徒が一年生の一学期に会員制交流サイト(SNS)で仲間外れにされた件では「一年生時の担任から、かかわる生徒全員が指導を受け」たと書いていた。一年生の頃から学校がいじめを把握し対応していたとしており、記述が矛盾している。

 また、市教委の対応では「母親に対して相当回数にわたり直接指導、学校訪問を行い、解決に向けた指導助言を行った」などと強調。不登校が長引いた原因が母親にあるかのような書きぶりが目立った。

 文書を読んだ母親は「一年のころから学校に相談しており、二年になっていじめを申し出たというのはうそ。私と他の保護者との間でトラブルになったこともない。このような文書を基に第三者調査委員会も話し合ったのかと思うとショックだ」と話す。

 また、不登校だった元生徒のため、カウンセラーの派遣や学習支援を市教委が提案しスケジュール案を示した保護者宛ての文書も新たに開示されたが、母親は「文書は見たことがなく、学習支援はほとんど実施されなかった。本人に届かない文書がなぜ県教委に提出されていたのか」と驚く。

 指導課は取材に「いじめの件で元生徒側と係争中であり、文書の内容は裁判にかかわるため答えられない」とコメントした。元生徒は、学校や市教委の対応が不適切だったため不登校が長引いたとして、損害賠償を求め市を提訴している。

 教育評論家の尾木直樹さんは「母親をいわゆる『モンスターペアレント』だと思わせ、たいしたいじめではないと見せようとする意図を感じる。第三者調査委員会は被害を受けた子どものために実施するものなのに、市教委の保身のためのよう。多数の文書を開示しなかったことも含め、職員の処分を検討するべきだ。放置すれば市長にも責任が及ぶ」と話している。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】