ペロロンチーノの冒険   作:kirishima13
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第18話 孕ませモノは幸せとか家族とか計画的に

―――スレイン法国 議場

 

 そこには最高神官長と地火風水光闇それぞれの六神官長、漆黒聖典隊長と占星千里、クレマンティーヌに加え、さらにペロロンチーノが揃っていた。最高神官長が口火を切る。

 

「それでは漆黒聖典隊長よ。報告を聞こうか」

「はっ。破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)を捕獲するためトブの大森林に赴きましたが、この者・・・・・・例の冒険者によって破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)は倒されました。そのため、その仲間・・・・・・主人であると予想しましたヴァンパイアの女に傾城傾国(ケイ・セケ・コゥク)で仕掛けたところ、この者が庇い精神支配することになりました。さらにヴァンパイアの女に術者であるカイレ様とセドランを討ち取られたため、やむを得ず撤退してまいりました」

「待て待て、いろいろと情報に齟齬がある。まず例の冒険者?人間・・・・・・いや、ヴァンパイアではなかったのか?その者は亜人に見えるが」

「なんらかの能力により人間に化けていたようです」

「しかし、これは・・・・・・ただの亜人でしょうか。見たこともない。このような4つもの翼を持ち光り輝くなんと見事な姿か・・・・・・」

「クレマンティーヌ。お前を捕まえたのはこの者で間違いないのか?」

「あたしは人間の姿しか見てねえからしんなーい。っていうかお前らなんかに協力するかよ」

「ペロロンチーノ。お主はこのクレマンティーヌを知っているか?」

「ええ、エ・ランテルの墓地で捕まえたエロい女です」

「そ、その声は・・・・・・まさか・・・・・・本当に!?あああああ、何してんだおまえらあああ!」

「その反応・・・・・・本人で間違いないようじゃな」

「馬鹿だろ!おまえら。そいつがどんなやつか知ったらおまえらだって・・・・・・」

「しかし、この者が破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)を一人で倒したなどとは・・・・・・信じがたい」

「それは事実です。私がこの目で確認いたしました」

「あっ・・・・・・あんっ・・・・・・あっ・・・・・・そんなところ・・・・・・」

「よほど、強大なマジックアイテムを持っているのではないか」

「いえ、調べたのですが彼の装備は・・・・・・何と言うか装備と言っていいものかどうか。ただの木の弓に布の服・・・・・・装備として攻撃力も防御力も皆無です」

「ではその者の力のみで破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)を倒したと・・・・・・」

「これは神の降臨なのではないか」

「魔神の可能性もあるぞ」

「ああっ・・・・・・そこは・・・・・・あんっ・・・・・・だめっ・・・・・・」

 

 議論を遮る喘ぎ声に、神官長達がその発生源を見つめる。

 

「おい、うるさいぞ占星千里」

「お主、傾城傾国(ケイ・セケ・コゥク)でその亜人を操り何をやっておるのだ」

「神聖な議場で亜人を使って一人遊びか。ケツなど揉ませおって」

「ケツって言うな・・・・・・。いえ、これは彼が勝手に・・・・・・」

「そうです。占星千里様がどうしてもケツを揉んで欲しいというのです。魔道具の効果で俺には逆らいようがありません」

 

 ペロロンチーノからしれっといい加減なことを言い出され、周りの視線が冷たいものとなって占星千里に突き刺さる。

 

「ちょっ、何言ってるんですか!違いますよ!私はそんな女じゃありませんから」

「まぁいい、ケツを揉ませようが揉ませまいが話を続けよう。趣味は人それぞれじゃ」

「違いますって!っていうかケツって言うな!」

「ではまず問おう。ペロロンチーノ、お前はこの世界を守る者か、それとも仇なす者か」

「え、俺?俺はただのエロゲーマーですが・・・・・・」

「エロ・・・・・・ゲーマー?なんだそれは」

「聞き方が不味かったのではないか?お前は人間を傷つける者か?」

「えーっと、それがプレイじゃないのであれば・・・・・・そうですねー、人を傷つけるのは好きじゃありませんね」

「ぷれい?まぁいい、それでお前はどこから来たのだ?」

「リアルです」

「りある・・・・・・?先ほどから言ってることがよく分からないな。リアルとはどのような場所だ?」

「深刻な環境汚染・・・・・・汚染された空気により太陽の光は失われ・・・・・・酸の雨が降り注ぎ緑の消えた世界・・・・・・防護服なしでは外も歩けないディストピア」

 

 ペロロンチーノの語る、かつていた絶望しかない世界のことを。この世の地獄とも思える世界の話を聞くにつれ、神官長達の顔が引きつる。

 

「なんだそれは!?どこの地獄から来た!?こやつは魔神なのか!?ぷれいやーである可能性もあるかと思っていたのだが・・・・・・」

「お前はそこでどんなことをしていたのだ」

「エロゲをしていました。そう・・・・・・ある時、俺は大学生でした。家庭教師として招かれた館にてロリ女主人とメイドに薬を盛られ、無理やり女の子と・・・・・・」

「や、やめい。何の話をしている!?」

「ある時、俺は女学園の寮の管理人でした。そこで俺は女生徒の部屋にカメラを仕掛け、それで撮った弱みをもとに彼女たちを・・・・・・」

「や、やめろ汚らわしい。だからさっきから何の話をしたいるのだ!?」

「え?どんなエロゲをやっていたのかって話じゃないんですか?」

「先ほどの地獄のような世界の話はどこにいったのだ!」

「わけがわからないぞ」

「六大神はゆぐどらしるなる世界から来たと言う伝承がある。それについては分かるか?」

「・・・・・・ユグドラシル

・・・・・・それは世界樹の名

・・・・・・無数にあるその葉を食い荒らす巨大な魔物が出現する

・・・・・・葉は一枚一枚と落ち、最後に九枚の葉が残った

・・・・・・アースガルズ、アルフヘイム、ヴァナヘイム、ニダヴェリール、ミズガルズ

・・・・・・ヨトゥンヘイム、ニヴルヘイム、ヘルヘイム、ムスペルヘイム

・・・・・・九つの葉が九つの世界へとなる

・・・・・・しかし、最後に残った九つの葉にも魔物の影が

・・・・・・君が世界を守るのだ

・・・・・・さあ未知の世界を旅び立とう・・・・・・COMEING SOON」

「ユグドラシルを知っている!?」

「かみんぐすーんってなんじゃ!?」

 

 そこで今まで黙っていた闇の神官長が咳ばらいをする。全員がそちらを見て嫌な顔をした。本来呼ばれもしていないのに何を話すというのか。どうせ碌なことは言うまいという無言の共同認識があった。

 

「皆さん神学の研究が足りませんな。りあると言う名称は六大神の一人が使った記録がある。それにゆぐどらしるという言葉も。これらの言葉を知っているというだけで神と同等の存在と見て間違いないだろう」

「魔神の可能性がある以上神などと軽々しく認定はできん」

「話した感じでは温厚そうではあるな」

 

 その言葉に反応したのはクレマンティーヌであった。手足をつなぐ鎖をジャラジャラと鳴らし叫ぶ。

 

「温厚!?温厚だってこいつが!?おまえらがどうなってもあたしは構わないけど一言言っておく!こいつはとんでもない変態だぞ!」

「黙っていろクレマンティーヌ。お前は聞かれたことだけに答えればいい」

「神は魔神かは別にして、精神支配してしまった彼を今後どどうすべきか・・・・・・」

「ペロロンチーノ。お前は精神支配が解除されたどうする?」

「このケツとは離れがたいですが帰って冒険者組合に報告しますね」

「ケツって言うな・・・・・・」

「冒険者組合?どのような依頼をされていたのだ?」

「王国の村々を襲ったという帝国兵に扮した者達を調べるようにと」

「帝国の冒険者組合か・・・・・・それは・・・・・・まぁ当然の調査だろうが・・・・・・」

「あなたたちが犯人なんですか?」

「王国のクズどもが悪いのだ。肥沃な大地を持っているというのにそれを巡って争い、麻薬を流行らせ、国民を奴隷のように扱う」

「その話は今すべきではないだろう。だが、この者を帰すことはできぬな」

「仲間も恨んでいよう。帰すくらいであれば戦力として利用すべきでは」

「本当にそれでよいと思っているのか?」

 

 闇の神官長は全員を見渡しながら眼光を飛ばす。普段のふざけた態度はそこには微塵もなかった。

 

「闇の神官長、どういうことだ」

「私は彼は今までの発言からやはり神と言えると思う。その神を魔道具で縛るなど不敬ではないか。ここは精神支配を解き、腹を割って話し合うべきではないのか」

「このいつまでもケツを揉んでいるのが神だと!?」

「まったくだ。ケツさえあればいいというのか」

「あんたはいつもセクハラしてるから慣れてるかもしれんが、ケツを揉むなど犯罪だぞ」

「ケツケツ言うな・・・・・・」

 

 占星千里が涙目で訴えるが、その間もケツを揉まれている。

 

「とにかく、ケツさえ揉ませておけば精神支配は完成している。質問にもすべて答えた。この者は法国の所持する兵器扱いとすればよかろう」

「「「「「異議なし」」」」」

「・・・・・・」

 

 闇の神官長が呆れたようにため息を吐くが、合議制である以上仕方ない。こうしてペロロンチーノは法国の戦力として保持することで議会は閉じた。

 

 

 

 

 

 

―――占星千里の部屋

 

 漆黒聖典の隊員は機密保持等のために、闇の神殿に各自の部屋を持っていた。占星千里もその一人だ。その部屋の前から扉を叩く音が鳴り続けている。他の隊員はそれを見るなり呆れて帰っていった。

 

「ちょっと、占星千里様。カギを開けてください。中に入れません」

「入れるわけないでしょう!あなたには部屋を用意したのだからそちらで寝てください!」

「一人じゃ占星千里様の体をまさぐれません」

「まさぐるな!」

「頭の中を占星千里様でいっぱいにしておいてそれはないでしょう。あんなことやこんなことしておいて」

「あなたの頭の中の占星千里様とか言う人に色々と言いたいことはありますが、私はもう寝ます!」

 

 バタンと音がして、返事がなくなる。ドアと叩き呼びかけるがすべて無視された。途方に暮れるペロロンチーノの肩を叩き、救世主が現れる。

 

「お困りですかな?」

 

 闇の神官長マクシミリアンであった。

 

「えーっと、あなたは?」

「先ほど議場でお会いしたと思いますが・・・・・・」

「男の顔なんて覚えません」

「ふふっ、素晴らしい考えです。私は闇の神官長ををしておりますマクシミリアンと申します」

「膜染みアンアン?」

「おお、素晴らしい聞き間違いです。神よ」

「神?神って俺が?」

「いかにも。ぜひ神とお話がしたく伺いました」

「男とお話しする趣味は・・・・・・」

「おっと、なぜか私の手の中に占星千里の部屋の鍵が・・・・・・」

「神よ!」

 

 ペロロンチーノがマクシミリアンの手を強く握る。

 

「それで神よ」

「なんですか神よ」

「いや、私は神ではないのですが」

「俺も神じゃないんですが」

 

 二人で笑いあう。結局お互い名前で呼び合うことにした。マクシミリアンからすれば不敬ではあるが神が望むのであれば仕方ない。

 

「それでペロロンチーノ様。先ほど話をされていたエロゲなるものについてお聞かせいただきたい」

「聞いてくれますか!」

 

 ペロロンチーノは語る。エロゲとは何か。法であり、社会の規範であり、抑止力であり、人生である。ペロロンチーノが熱く語るそれをマクシミリアンは目を輝かせて神の言葉として記録する。

 

「なるほど・・・・・・妄想を現実とする仮想空間を作り、そこで絵や映像を見せて体感させると・・・・・・。それにエロ本やエロ動画、エロ小説・・・・・・エロマンガなる存在・・・・・・興味深い」

「いやぁ、すみません色々と語っちゃいまして」

「ペロロンチーノ様。これをご覧いただきたい」

 

 そう言ってマクシミリアンは水晶を取り出す。そしてそこにあられもない姿の女神官が映し出された。風呂の映像だろうか。湯気で曇っている。

 

「おおっ!これはエロ動画!?」

「私はこういった魔法や魔道具の研究をしていましてな。映像を撮る魔道具、それを映し出す魔道具等、そういった世の中のためになるものを作ろうとしているのです」

「素晴らしい研究です!」

「そしてペロロンチーノ様の語られた様々なエロを伝道するための触媒。まずは簡単なエロマンガやエロ小説なるものから取り掛かることになるかもしれませんが、いずれ映像を制御する魔法を開発することに成功すればエロゲなるものも作れるようになるかもしれません」

「本当ですか!」

「ええ、その時はぜひペロロンチーノ様にもお見せしましょう。ですのでお願いしたいことが」

「エロゲの知識ですか!?もちろんです。あらゆる性的趣向からシチュエーションまでお教えしましょう」

「それもお願いしたいのですが、それよりもまずはペロロンチーノ様を精神支配などにより縛っていることをお許しください」

 

 そう言ってマクシミリアンは真摯に頭を下げる。

 

「今はその精神支配を解くわけには参りません。ですが、いずれその術式が解除されたとき、我らを許してくださいませんか」

「そんなことですか。同好の士を許さないわけないでしょう」

「ありがとうございます!それで、先ほどの性的趣向の話を詳しく・・・・・・」

「そうですね・・・・・・ではロリあたりから・・・・・・」

 

 そうして夜は更けてゆき、マクシミリアンとの友情が深まるのであった。その後、映像記録の魔道具を持ったペロロンチーノが占星千里の寝室に侵入し、神殿中に響き渡るような悲鳴が上があがるがそれはまた別のお話。

 

 

 

 

 

 

 次の日、ペロロンチーノは正座で占星千里の前に座っていた。

 

「あのペロロンチーノさん、お尻揉んだり寝室に侵入したりもうやめてください」

「お断りします」

「何でですか!術者の私の命令ですよ!」

「何を言ってるんですか!占星千里様は俺の頭の中でもっとエロいことしてって命令してるじゃないですか!俺はどっちの命令を聞けばいいですか!訳が分かりませんよ!」

「訳が分からないのはこっちですよ!」

 

 朝から騒ぎ立てる二人であるが、騒ぎを聞きつけたのかそこに左右の髪と瞳の色の違う幼いと言ってもいい顔立ちの少女が通りかかる。白銀と漆黒で分けられたその髪により耳まで隠れている。

 

「あれ?なにその亜人は?亜人が神殿に来てるなんて聞いてないけど」

「これは番外席次様。おはようございます」

「おはよう。それで?殺したほうがいい?それとも拷問する?」

「い、いえ。この人は何と言うか・・・・・・ただの変態です」

「どうも、俺がその変態です」

「ただの変態相手に法国の至宝である傾城傾国まで使ってるの?」

「いや、あのそれは・・・・・・」

「私に言えないこと?無理やり言わされるのと自分から言うのどっちがいい?」

「脅さないでくださいよ。言います、言いますから。彼はぷれいやーっぽいです。破滅の竜王も倒しましたし・・・・・・」

「ぷれいやー?神様ってこと?」

「神じゃないですよ。神様っていうのは昨日俺に占星千里様の部屋のカギを渡してくれた人のようなことを言うんですよ」

「おい、それ初耳ですよ。誰からもらったんですか!?」

「それは神のみぞ知る・・・・・・」

「ぷっ・・・・・・あはははは。全然精神支配されてないじゃない。面白い。それになんかキラキラしてるし・・・・・・綺麗」

「褒めてくれてありがとうございます。俺もこのアバター作るの結構苦労したんですよ」

化身(アバター)?やっぱり神様なんじゃ・・・・・・それに破滅の竜王を倒すほど強いって?」

「あ、あの番外席次様。おかしなこと考えないでくださいよ」

「おかしなことなんかじゃない。ねぇ、貴方名前は?」

「俺の名前はペロロンチーノ。占星千里様のエロ奴隷です」

「だーかーらー!変な事いうなーー!」

 

 占星千里が首を絞めるがペロロンチーノは喜んでいる。そんなペロロンチーノを見て番外席次は唇の端を吊り上げる。

 

「ペロロンチーノ。私と勝負して」

 

 

 

 

 

 

―――アーグランド評議国

 

 広間に一匹の巨大な竜と人間の老婆がいた。竜の名はツァインドルクス=ヴァイシオン。アーグランド評議国の永久評議員を務める白金の竜王(プラチナ・ドラゴンロード)と呼ばれる者である。そして腰から剣を下げた白髪の老婆はリグリット・ベルスー・カウラウ。十三英雄の一人であり、ツァインドルクス・・・・・・ツアーの友人でかつての冒険仲間だ。

 

「やあ、リグリット。よく来たね」

「ああ、ちょっと相談があっってな」

「君が相談何て珍しいね。どうしたんだい?」

「インベルンの嬢ちゃん、いや、今はイビルアイと名乗っておったかの。あのチビ助から相談を受けてな」

「ああ、あのヴァンパイアの・・・・・・確か国堕としとか呼ばれていたね」

「あの子をそんな名前で呼ばないで欲しいね。それにあれはあの子が悪いわけでもない」

「ああ、そうだったね、悪かったよ。おや、ところで君にあげた指輪をしていないようだけどどうしたんだい?」

「それにも関係ある話さ。まず、指輪だけど若いのにやった・・・・・・んだけど、その若いのが最近殺されたらしい。殺したのは恐らくスレイン法国」

「それはまた厄介な国の連中の手に渡ったようだね。あれは竜の魔法で作ったアイテム、同じものはもう二度と作れないだろうアイテムだよ。戦士としての技量を限界を超えて高めるアイテムをもしぷれいやーや神人にでも使われたらと思うとぞっとする」

「さらに、そのぷれいやーが現れたやもしれぬ。100年目の嵐かもしれない話さ」

「なんだって!?」

「イビルアイが言うには最近おかしな冒険者が現れたらしい。王国を襲った悪魔を撃退したらしいが、その強さはイビルアイを優に超すということじゃ。その冒険者の一人が法国に精神支配を受け連れ去られたらしい」

「まさかかつての盟約を破るつもりなのだろうか」

「100年前といい今回といい、まったく困ったものじゃな」

「100年前には失敗したからね。まさか亜人に滅ぼされるだけと思っていた聖王国がたった一人のぷれいやーのためにあそこまでの強大な国になるとは・・・・・・。ぱわーれべりんぐなる大儀式を行い、あそこの国民はもはや人間とは思えぬ強さを持っている。気づいて攻め入った時にはもう遅かった。我らとしたことが完璧に撃退されてしまったよ」

「じゃがあの国は完全に閉じておる。侵略などしない以上放置しておくしかないじゃろ」

「もし法国に同じようなことが起これば奴らは人間以外を駆逐するべく動くだろうね。もしそのような動きがあるのであれば・・・・・・それとも聖王国が動くような事態になれば・・・・・・もはや戦争しかないかもしれないね」

「とにかくその冒険者・・・・・・調べてみてくれるか?」

「ああ、私はここを動けないが・・・・・・」

 

 そう言ってツアーはちらりと鎧を見つめる。かつてリグリット達と共に冒険者として活躍した鎧を。

 

「あれの出番かな」

 

 

 

 

 

 

 占星千里、番外席次、ペロロンチーノは町から離れた草原に立っていた。遠くに森が見えるが、それ以外には何もない平野だ。番外席次は十字槍に似た戦鎌(ウォーサイズ)を持ち、その体を六大神が残したとされる至宝で身を固めていた。さらも陽光聖典がガゼフ・ストロノーフより奪った至高なる指輪も装備している。

 

「あの番外席次様。まずいですって勝手にこんなことしちゃ」

「いい、責任は私がとるから。ペロロンチーノ、あなたも最高の装備できて」

 

 ペロロンチーノは自分の手元にある弓を見つめる。みすぼらしい何の変哲もないただの木の弓だ。

 

「これが俺の今の最強装備です」

「は?ふざけてるの?」

「わけあって俺の最強装備は持っていません。でも大丈夫です。これに勝って占星千里様と結婚します」

「勝手に勝負の景品にしないでください!いいですか!殺しはなしですよ!殺しは!」

「いえ、殺す気できて。こっちも殺す気で行く。じゃあ占星千里、合図よろしく」

「ああ、もう!知りませんからね!じゃあ、魔法のハンドベルを持っていますからこれが鳴ったら開始です」

 

 やる気なさそうに棒立ちのペロロンチーノ。それに対して番外席次は殺気を放ち、構えをとる。そしてハンドベルが鳴り響いた。

 

 

「はぁーーーーー!」

 

 番外席次の戦鎌がペロロンチーノに詰め寄る、と思われた瞬間、爆風が発生する。ペロロンチーノが飛び上がったのだ。番外席次が飛行の効果を持ったアイテムを使い飛び上がろうとするが上空から矢の雨がその全身を滅多打ちする。

 

「痛っ!」

 

 叫ぶ番外次席が上空を見上げるとすでにペロロンチーノはいなかった。矢は殴打属性が付与されているようで、体に刺さるようなことはなかったが、それを手加減されていると感じ、怒りを胸に上空へ飛び上がる。ペロロンチーノを探すが、周囲を見渡しても見つけることが出来ない。

 

(逃げた?いえ、そんなことをする必要はないはず。それに精神支配されているのだから・・・・・・不可視化?でもその程度は見破れる!)

 

 全神経を感知に回して気配を探るが周辺には全く気配がない。そう思っているとガンっと頭にまた強い衝撃が走った。

 

「痛った!」

 

 激痛に撃たれた方向を見つめる。森があるが、そこから番外席次のところまではどう見ても1キロ以上の距離がある。

 

(そんな超長距離スナイプが可能なはずがない・・・・・・近くに隠れているの?)

 

 きょろきょろと周りを見回していると同じ方向から今度は矢が嵐のように撃ち込また。さらに身動きが止まったところに今度は上空から振り注ぐ矢により地面へ打ち付けられる。余りの連続攻撃に立ち上がるのがやっとの番外席次が顔を上げるとそこには頭に矢を突きつけるペロロンチーノの姿があった。1キロを超える超長距離スナイプをした上、その距離を瞬時に詰めてきたのだ。

 

「ずるい!遠距離攻撃とかずるい!」

「えー」

「ずるいずるいずるい!」

「わがままだなぁ・・・・・・だけどロリは正義。じゃあもう一回やろうか?」

 

 番外席次のわがままにペロロンチーノは快く応じる。再試合となり、開始の距離は戦鎌(ウォーサイズ)の届くほどの近距離となった。

 占星千里の開始のベルが鳴ると同時に番外席次が仕掛ける。首を薙ぎに行くと思われた瞬間、ペロロンチーノのカウンタースキルにより回避と同時に番外席次に矢が放たれた。だが、その矢は見当違いの地面に刺さる。

 

「ふふっ、やっぱ近距離戦闘苦手なんだ。外してるし・・・・・・やっぱ私は強い」

 

 そう言ってペロロンチーノに迫ろうとするが番外席次の体は動かなかった。

 

《影縫いの矢》

 

 スキルにより影を縫われ動けない番外席次に対して上空至近距離から弓を弾き絞るペロロンチーノ。

 

「ちょ、ちょっと待って・・・・・・そんな近くから撃ったら・・・・・・」

 

 矢に恐ろしいほどの魔力が注ぎ込まれていくのが分かる。光が一点に集約し、莫大なエネルギーを感じる。命乞いともとれることを言う番外席次に対してのペロロンチーノの答えはシンプルだった。

 

「近接戦闘が得意なんだろう?」

 

―――そして矢が放たれた。

 

「にゃーーーーーー!!」

 

 

 

 

 

 

 滅多打ちにされ、犯された後の女の子のようにボロボロになった番外席次に占星千里が必死に回復魔法をかけている。

 

「私ってそんなに弱いかなぁ?」

「弱いとかじゃなくて戦闘経験がないって感じかな?」

「仕事でいっぱい亜人を殺してるんだけど」

「自分と同格以上と戦ったことは?」

「・・・・・・ない」

「遠距離攻撃をさせたくないなら移動阻害や遅延、時間対策をしないといけないし、回避が間に合わないならダミーなり何なりで相手をごまかして距離を詰めないと。何の対策もしてなかったよね」

「・・・・・・ペロロンチーノはあたしより強い」

「かもね」

「決めた!私ペロロンチーノの子供を産む」

 

 番外席次の宣言に占星千里が慌てる。いつもおかしな言動をする番外席次であるが、今日は特におかしい。

 

「ちょっと、番外席次様何を言ってるんですか!」

「私は強い子供を産みたいの。これは本能なのかな、どう?ペロロンチーノ」

「ロリと子作り・・・・・・ううっ・・・・・・だが・・・・・・断る!」

「え、なんで」

「俺は今魔道具のせいで占星千里様としか子作りできないからです。ちなみに頭の中ではずっと子作りしてます」

「おい、その妄想をいますぐやめろ」

 

 占星千里に首を絞められるが、ペロロンチーノの妄想は現在進行形で実施中だ。

 

「魔道具のせいなんだ。じゃあ、傾城傾国を私が着ればペロロンチーノは私のものってことね」

「え・・・・・・まさか番外席次様」

「脱いで」

「いえ、ですが、これは預かりものですし・・・・・・」

「脱いで。至宝は私が守るから安心して」

「ここで・・・・・・ですか!?」

「早く!それとも無理やり脱がされたい?」

「俺はどっちかと言うと無理やり脱がされるところが見たいです」

「あなたはあっち向いててください!」

 

 しぶしぶ傾城傾国を脱ぐ占星千里をガン見するペロロンチーノであるが、占星千里と番外席次が服を交換し終わると態度ががらりと変わった。

 

「この服胸が苦しいです・・・・・・それにお尻も・・・・・・」

「それ以上言ったら殺すわ」

「あ、なんかすみません。っていうかお尻触られるのから解放されるならこれはこれでいいかなって思いました」

「そうですね。俺はもう番外席次様のことを愛していますから過去の女には興味ありません」

「あの、私この人のこと好きでも何でもないですが。むしろ嫌いですが、何か捨てられたみたいな言い方がすごく傷つくんですが」

「俺のことは忘れて新しい愛を見つけてください」

「きぃーーーーーー!むかつくぅーーー!って言うか何で番外席次様のお尻は触らないんですか!」

「YES!ロリータ!NO!タッチ!これは俺のポリシーですから」

「何か釈然としない・・・・・・」

「じゃあ子作りに行くわよ。ペロロンチーノ」

「はい、番外席次様」

 

 こうして二人は闇の神殿に戻ることになる。その後、占星千里はパツパツの服を着ているところを闇の神官長に撮られたり、男性神官たちを集め占星千里の映像の上映会を開かれたりとひと騒動あるのだが、それもまた別のお話。

 

 

 

 

 

 

―――番外席次の部屋

 

 番外席次はシャワーを浴びながらこれから始まることを考え、薄い胸をドキドキさせていた。

 

(キラキラしてた・・・・・・神官たちが召喚する天使なんかよりもっと・・・・・・)

 

 あれが本当の神と言われるものなのだろう。全身を羽で覆われ鳥の顔をした亜人であったが光り輝く4枚の翼、その精悍な顔立ち、思い出しただけで心臓が高鳴る。

 

(負けた・・・・・・それも力じゃなく技で・・・・・・知識で・・・・・・それにキラキラしてた!)

 

 力だけでも負けていたもしれない、しかし彼の洗練した戦い方に結局番外席次は近づくことさえできなかった。そんな彼が今は自分の支配下にあり、そして男女の関係になろうとしている。

 

(それに占星千里にはあんなにセクハラしまくってたのに私にはしないなんて・・・・・・ふふっ、それって私のほうが大事ってことじゃ・・・・・・)

 

 ついついニヤついてしまい、番外席次は思わず口元を両手で押さえる。

 

(そんな彼とついに・・・・・・私は今夜初めてを・・・・・・きゃーーーー!)

 

 自分の中の女が目覚め、嬉しいのと恥ずかしいのでシャワーを浴びながらバタバタする番外席次。いつも敗北を知りたい、強い男の子供が欲しいなどと言っていたが実際いたすとなるとどうにも踏ん切りがつかないのであった。

 

(よ、よぉし、行くわ。は、初体験・・・・・・私とペロロンチーノの子供を作りに!)

 

 番外席次が覚悟を決め、体に薄い胸を手が隠しながらシャワー室からベッドに向かう。

 

―――しかしそこにはすでにペロロンチーノの姿はなかった。

 

 

 

 

 

 

 闇の神殿上空、そこにペロロンチーノはいた。そして、その背にクレマンティーヌを乗せている。下からは警報(アラーム)の魔法の大音量が聞こえているが、そんなことはもはや関係なかった。

 

「あはははは、色ボケが!初体験に期待するあまり油断してるからこういうことになるんだよー!」

 

 クレマンティーヌはその身に傾城傾国を身に着けていた。番外席次は服を来たままシャワーを浴びるわけにもいかず、脱ぎ散らかした傾城傾国をクレマンティーヌが奪ったのだ。

 

「やった・・・・・・やってやったわ!法国の糞どもが!いつもいつも糞兄貴と比べて馬鹿にしやがって!ざまあ見やがれ!」

 

(とにかく助かった。こいつに関する情報を喋っちまった以上、あたしはもう用なしに近い。殺されるのも時間の問題だった・・・・・・。闇の神殿に軟禁されていたが、こんなチャンスがあるなんて・・・・・・)

 

「しかもこの指輪まで手に入るんなんてね!あははははは!さいっこーの気分だよ。さあ、ペロロンチーノあたしを連れてこの国から逃げ出しな!」

「はい、クレマンティーヌ様。それでどこに行くんですか?」

「あたしたちを一番高く買ってくれそうな国だよ。そう、竜王国へ!」

 

 窓からクレマンティーヌを連れて飛び出したことにより警報(アラーム)の音が鳴り響いている神殿を後目にはるか上空をペロロンチーノが息も詰まるような速度で飛び去って行く。しかしそのあまりの速度にクレマンティーヌはバランスを取るのに必死だった。

 

「おまえ、ちょっと!落ちるって!」

「クレマンティーヌ様。そうやって背中から抱きつかれるのもいいのですが、落ちると心配です。俺の手に捉まってください」

「そお?じゃあ、たのもっかなぁ。ってどこつかんでんだ!?ちょっ、おまっ」

「これは仕方のないことなんです!ええ、仕方のないことなんですとも!」

「どこに手を入れてんだ!おい、や、やめろーーーー!」

 

 こうして新たなコンビが新たな国を目指して飛び去って行くのであった。






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