ペロロンチーノの冒険 作:kirishima13
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―――歌う林檎亭
ペロロンチーノ達は朝食を取っていた。冒険者組合で聞いたところ、ここの宿屋は食事が美味しくて有名らしい。さらにお金さえ出せば身分は問わないというのも魅力の一つだ。シャルティアは食事が不要なので飲み物だけ注文している。
「今日もジルのところでエロを語り合おうと思うんだけど」
「えー、また行くんですかあそこ」
「ペロロンチーノ様。わらわあそこでジジイに足を舐められたでありんすよ」
シャルティアが涙目でペロロンチーノに抱きついた。そしてついでに甘えてやれと顔を胸にこすりつけている。
「初対面の相手の足を舐めるとは・・・・・・そのじいさん上級者だな」
「足を舐めながらしよーしよーって言われたでありんす」
「初対面の女の子にエッチしようだと・・・・・・直結厨か・・・・・・」
「でしにしてくれーしよーって言ってたでありんす」
「あれは気持ち悪かったねー。でもあれは師匠って意味じゃないの?弟子になりたいって」
「師よ?ああ、なるほど。で、その後そのじいさんはどうしたんだ?」
「まぁ・・・・・・やっちゃったよね」
「で、ありんすね」
「え?
「ペロロンチーノ様になるべくやるなって言われてるでありんすから死なない程度にぼこぼこにしただけでありんす」
「顔パンパンになってたもんね、あのおじいさん」
「老人は労わろうよ・・・・・・でもそこまでやったんならもう来ないんじゃないか?」
「それならいいんでありんす」
「まぁ、また来たらジルさんに言っておくよ。しかし、ここのご飯本当に美味しいな」
ペロロンチーノはパクパクと美味しそうに出されたメニューを頬張る。ピンク色のスクランブルエッグのようなもの、何の肉か分からないが厚くジューシーな肉をやいたもの、リアルでは合成の味気ないものしか食べられなかったペロロンチーノにはその美味しさは初めてのものであり、感動していた。
「そっかなー。ナザリックのご飯のほうがあたしは好きだなー」
「ペロロンチーノ様。わらわにあーんさせて欲しいでありんす。あーん」
食事の出来ないシャルティアの前には飲み物だけだ。ペロロンチーノのスプーンをもって口に運ぼうとするとペロロンチーノの顔は真っ青になる。
「や、やめろおおお」
「ど、どうしたでありんすか?」
「キ、キノコが・・・・・・キノコが振り返るとメイドで・・・・・・給仕をしたいって・・・・・・」
ブルブルと震えるペロロンチーノ。恐ろしいものを見たように周囲を警戒している。
「どうしたんだろ。ペロロンチーノ様」
「何があったんでありんすか?ペロロンチーノ様」
「と、とにかく自分で食べらるからあーんはなしだ。それをよりアレを見ろ」
そう言って、スプーンを指す方向には4人の男女がいた。くすんだ金色の髪を短めに切ったエルフのレンジャー風の女、。そして少し幼さが残る金髪の魔法詠唱者風の少女、髪は肩口あたりでざっくりと切っている。あと男が二人いるがペロロンチーノの目には映らない。
「あの4人がどうかしたんですか?冒険者ですかね?」
「はぁー、アウラみたいなお子様には分からないでありんすか」
「なによーあんたには分かるって言うのー」
「あのエルフ、かなりの貧乳のようでありんす。そしてあっちの大人になりかけのロリ。尻尾が似合いそうで美味しそうでありんす。あれを視姦しないとは失礼にあたりんす」
「そうだな。シャルティア、エルフと言えば巨乳、しかしあの貧乳はレアだ。モモンガさんならレア魂を揺さぶられていたことだろう。そこがいいんだ。あっちの女の子も合格だ。これは愛でるしかない」
「あたしそれ分からなくても別にいいかも」
そうして変態二人はじろじろ見つめそれをおかずに朝食を食べていると、エルフの女がこちらを見て眉をしかめる。
「ちょっと、何見てんの?」
「お気になさらず」
ペロロンチーノは気にしない。そして、貧乳を凝視する。
「ハーフエルフがそんなに珍しい?」
そう言って立ち上がるハーフエルフ。手は刃物に置かれいつでも抜けるように構えている。目には明確な怒りがあった。
「おい、イミーナやめておけよ」
「ヘッケランは黙ってて」
「あんた!そんなにハーフエルフが珍しいの?何か文句でもあるわけ?」
「ああ、エルフじゃなくてハーフエルフなんですか。別にそれはどうでもいいんですが、文句どころかむしろその貧乳にこそ価値があると俺は思います」
「さすがペロロンチーノ様はいいことを言うでありんす」
「どうでもいいって・・・・・・じゃあそっちのダークエルフは?あんた奴隷なんじゃないの?」
「へ?あたし?あたしは奴隷じゃないよ。別にペロロンチーノ様の奴隷なら嫌じゃないけど」
「ペロロンチーノ様の奴隷はわらわだけでありんす!」
「でもペロロンチーノ様。そう言うの本当に変態みたいだからやめたほうがいいですよ。気持ち悪いです。ぶくぶく茶釜様もそう思ってると思います」
「それ今言わないとだめなの?」
凹むペロロンチーノ。腕に抱き着くシャルティア。呆れるアウラ。そんな馬鹿な会話にイミーナの毒気が抜かれる。
「ごめん。ちょっと知り合いにエルフの奴隷を道具のように酷く扱うやつがいてさ。あんたもそういう奴かと思っちゃった。あんたがエルフを差別してないってのは分かったけど・・・・・・あんたたちどういう関係なわけ?」
「関係?このダークエルフの子は・・・・・・うーん何て言ったらいいか複雑だなあー。姉ちゃんの子供?みたいな?」
「え?でもあんた人間でしょ?あんたの姉さんって何なの?」
「俺の姉ちゃんは・・・・・・えーっと、ピンクの肉棒?」
「はぁ?」
ペロロンチーノの姉、ぶくぶく茶釜のアバターはピンク色のスライム種であり、周りからピンクの肉棒と呼ばれなかなかパーティに誘われなかった。そこをギルドに誘われた経緯がある。ヘッケランから声が上がる。
「そりゃ誰だってピンクの肉棒が親だろうさ。イミーナお前だってピンクの肉棒のおかげで生まれたんだろうし、俺だって一皮剥けばピンクの肉棒が・・・・・・ぐはぁ!」
イミーナの裏拳がヘッケランにまともに入る。それを見てペロロンチーノが指を刺して笑っている。シャルティアも指を差して笑っている・・・・・・が、もちろんシャルティアには意味が分かっていない。
「ははははは」
「ほんともう何なのあんたたち・・・・・・」
「そのくらいにしませんか。もういいでしょう」
ロバーデイクのその言葉にイミーナは振り向き、ふともう一人の少女、アルシェがうつむいたまま考え込んでいるのに気づく。先ほどからの彼ら《フォーサイト》は深刻な話をしていたのだ。アルシェの両親の貴族が膨大な借金を抱えながら贅沢な暮らしをやめないこと。その両親から妹二人を引き取るためにお金が必要なこと。そして次の大きな仕事が終わった後アルシェはチームから抜けること。こんな馬鹿を相手にしている暇はない。
「ごめん、アルシェ。話の途中だったね。ほらっ、ヘッケランもさっさと起きて」
倒れ伏してるヘッケランを起し、アルシェに声をかけたところ、アルシェがイミーナを見つめる。そして、イミーナの向こうに見える恐ろしいモノも。
その瞬間、アルシェが突然、虹を吐いた。
「おええええええ。イミーナ、そ、その後ろの人・・・・・・」
「ど、どうしたのアルシェ」
「おええええええ」
「大丈夫か!?」
「気分が悪いなら治癒魔法を使いますよ」
後ろからは驚いたような喜ぶような声。
「美少女ゲロインが虹を吐くところとか・・・・・・ありがとうございます!」
「ゲロインとはなかなかいいものでありんすね」
「あの・・・・・・あたしついていけません」
アルシェが真っ青になりながら震える指でシャルティアをさした。
「そ、その子!その子は!!」
「あんたたちアルシェに何かしたの!?」
「わらわがどうしたんでありんすか?」
不思議そうに首を傾げるシャルティア。美少女によるその様子はまわりを魅了してやまないほど可憐なものであるが、それがアルシェにはとてもとても異様に見えていた。その
「どうしたの?アルシェ。あの子がどうしたの?」
「え、えと・・・・・・えっと、あの子可愛い!って言おうとしたの。余りの可愛さに餌付いいちゃって・・・・・・」
「うふふ、わらわの美しさも罪でありんすねぇ。ぬし可愛がってあげてもいいでありんすよ?」
「いえ・・・・・・ごめんなさい遠慮しておきます。あの・・・・・・失礼ですが、そちらの子とあなたはどういう関係なんですか?」
「俺?俺とシャルティア?それは・・・・・・うーん、そうだなぁ。この子は俺の性癖のすべてを詰め込んだ俺の娘のようなものですね!」
「そうでありんす!わらわにはペロロンチーノ様のあらゆる性癖が詰め込まれているでありんす!」
そう言って、シャルティアは誇り高そうに偽物の胸を張る。酷いことを言われているのにとても嬉しそうだ。
「シャルティア。あんたさぁ、そう言うのやめてよね。あたしまで馬鹿に見られるじゃん」
「あの、変なこと聞いてすみませんでした」
「別にいいですよ。さて、ご飯も食べたしそろそろ行くか。でも、この国ではエルフがそんな酷い目にあっているのか・・・・・・奴隷ねぇ・・・・・・ちょっと気になるな」
そんなことを言い残しながらペロロンチーノ達が宿屋を出ていく。残されたのはフォーサイトの四人。代表としてヘッケランがアルシェを問う。
「で、アルシェ。何だったんだ?今のは」
「あの3人・・・・・・。化物・・・・・・だと思う・・・・・・」
「化物だと?人間じゃない?」
「それは分からない。でも、フールーダ様よりずっと強い・・・・・・と思う」
「はぁ!?フールーダって言ったら帝国どころか周辺国最強の魔法詠唱者だぞ。それより強いとかありえないだろ」
「あのシャルティアっていう子の力はフールーダ様の数倍、いやもっとかもしれない。大きすぎて私じゃつかめない」
「私も気づいたこと言っていい?」
「なんだ?イミーナ?」
「あのダークエルフの子、瞳の色がそれぞれ違ってた」
「ああ、珍しかったな。それがどうしたんだ?」
「強大な力を持つエルフの王は瞳の色がそれぞれ違うらしい。無関係とは思えない」
「じゃあ、そんな二人に様付けで呼ばれてるあの男はなんなんだよ」
「調べてみる?」
「やめてイミーナ!絶対にやめて!関わらないほうがいい!」
「そ、そうだな。でかい仕事が控えてるんだ。危ない橋は渡らない。このことはもう忘れよう」
次に控えた大きな仕事のためこれから準備をしなければならない。前金もたっぷり。成功報酬も莫大だ。トブの大森林の南に位置する草原に発見された遺跡の調査。複数のワーカーチームの合同で行う仕事の相談、そしてそのお金の使い道についての話を彼らは再開するのだった。
◆
―――歌う林檎亭前
そこに決意をした女、帝国四騎士の一人《重爆》レイナースが立っていた。ペロロンチーノが宿屋から出てくるのを確認し、レイナースは皇帝に言われたことを思い出す。これから行うことはテンプレなる儀式であり、ペロロンチーノには非常に魅力的な行為らしい。「遅刻遅刻」と言いながらパンを咥えてぶつかると言う儀式。これをされた男はその女性の魅力にメロメロになってしまうらしいのだ。
勇気を振り絞りレイナースはパンを咥え走り出したが、「遅刻」と言おうとして戸惑う。パンを咥えてどうやって喋れと言うのだ。しかも口が塞がって息が苦しい。
「ひほふーひほふー」
くぐもったような声を出しながら、息苦しさと極度の緊張で混乱したレイナースは全速力でペロロンチーノへと向かっていく。前回と同様に全力でのタックルとなってしまったその衝撃は、レイナースを弾き飛ばし、塀に突っ込む結果となるのだった。余りといえば余りの事態にペロロンチーノは呆然とする。だが、そのまま放っておくわけにもいかず、遠慮がちに声をかけた。どこかで見たような光景だと思いながら。
「あ、あの・・・・・・大丈夫ですか?」
顔を見ると、やはりどこかで見たような女性であった。しかし、その恰好は異様だ。ブルマに体操服・・・・・・その姿を見たまま固まるペロロンチーノ。およそこの世界の世界観にあっていない。もっともシャルティアにセイラー服を着せているペロロンチーノに言えることではないが。そんな彼をよそにレイナースは勇気を振り絞ってテンプレなる台詞を言う。
「痛ったーい。どこ見て歩いてんのよあんた。気をつけなさいよ」
恐ろしいほどの棒読みであったが羞恥に晒され混乱したレイナースにはこれが精いっぱいであった。恥ずかしさで顔が火照りとてもペロロンチーノの顔を見ることが出来ない。両手で顔を隠し反応を待つ。
「これは・・・・・・何と言っていいか・・・・・・」
ペロロンチーノは思う。これは・・・・・・。
(デミウルゴスのプロデュースだろうが・・・・・・違うだろう!フラグを立てるらしいがこれは色々間違っている!がんばったのは認める、認めるがこれは違う)
ペロロンチーノが言うべき言葉に迷っていると、シャルティアの容赦のない言葉が飛んだ。
「わらわも体操服とブルマは持っているでありんすが、着る人が違うとこうも痛い服になるんでありんすな」
さらに、そこへアウラの追撃も加わる。
「なんかもう可哀そうで見てられない感じだよね」
人間に興味のないアウラにさえ憐れみの視線を受けるレイナース。涙目で顔を真っ赤にして固まっている。さすがにペロロンチーノが彼女を庇う。
「や、やめて差し上げろ!」
ペロロンチーノからの自分を庇う一言。呪いを解いてくれた彼はまたもや自分を救ってくれる。愛しい彼のその言葉に一筋の光明を求めレイナースは縋るようにペロロンチーノを見つめた。
「確かに痛い!痛痛しい!見ていられない!そう、確かに体操服とブルマと言うものはもっと幼い感じの女の子が着てこそ映えるものだ!綺麗系のお姉さんが着た場合はエロい。エロいが違うんだ!ギャップ萌えと言う言葉があるがそれは元の姿を知っていてこそギャップが萌えるんだ。初見でいきなりお姉さんが体操服にブルマはないと思う」
「そしてパンを咥えてぶつかってくるシチュはいい!とてもいいがこれも体操服ではだめだ!スカート!スカートを要求する!ぶつかった拍子にスカートがめくれ足の付け根が露わになる!それがブルマでは出来ないんだ!スカートがめくれ、どこ見てんのよと言ってビンタされる!そこまで頑張らないと!百歩譲ってどうしても体操服とブルマで行くというのであれば体に触れさせてください!どこ触ってんのよビンタして欲しい!」
「でも安心してください。俺はお姉さんの体操服とブルマも評価します!企画もののAVみたいでそれはそれでいいです!だが、それはあくまでコスプレとして楽しむものでありたい!だけどお姉さんは頑張った!頑張ったところを評価して俺はこう言わせてもらおうと思う!」
ペロロンチーノは一呼吸置き、真面目な顔で叫んだ。
「そっちがぶつかってきたんだろう!お前のほうこそ気をつけろ!」
そう言って振り向いたペロロンチーノの指の先には、レイナースはすでにいなかった。
「あの人なら泣きながら走っていっちゃいましたよ」
「え、どの辺で?」
「痛々しいって言われたあたりでありんすね」
「そうか・・・・・・」
(残念だ、デミウルゴス・・・・・・今回は結構頑張ったのにな。今度会ったら褒めてやろう)
澄み渡った青空に笑顔で敬礼するデミウルゴスを幻視するペロロンチーノであった。
◆
―――帝都郊外
「そうか、駄目だったか。私も何となくレイナースには似合ってないかなぁっとは思ってたんだが」
「それなら言ってあげましょうよ陛下。まぁ、俺も思っていましたが」
「それでペロロンチーノの評価はどうだったんだ?」
「ええと・・・・・・何か《重爆》の年じゃこの服はきついそうですぜ」
「なるほど、装備に年齢制限がある服というわけか。それは失敗したな。これも若さゆえの過ちと言うものか」
「陛下、今回は若さが足りないんで失敗したのではないんですかい」
「ははっ、確かにそうだな」
部屋の隅で体育座りで泣いていたレイナースが二人を睨みつける。
「笑い事じゃないですよ!ぐすっ・・・・・・私もうお嫁にいけない・・・・・・」
「そう気を落とすな。ほら見ろ。《どうていをころすふく》が完成したんだぞ」
露出の少ないブラウスとスカートだ。ただ、胸のあたりを強調するデザインではある。ジルクニフにはその良さはよく分からないが、ペロロンチーノには効くかもしれない。
「・・・・・・」
涙目でジルクニフを睨むレイナース。
「だ、大丈夫。今度は比較的まともな服だぞ。ああ、そうだ。今度ペロロンチーノ達が来た時に色々聞いておいてやろう。次の作戦のためにな」
「痛い女って言われたんです・・・・・・ぐすっ」
「それでいいじゃないか。好かれようと嫌われようと今回はどっちでも結果はよかったんだ」
「へ?それはどう言う意味ですか?」
「ペロロンチーノ曰く、好きと嫌いは変換可能。駄目なのは興味を持たれないこと、だそうだ。だが、お前は奴に強烈な印象を与えたのは間違いない。次こそが本番だと思え」
「そ、そう・・・・・・なんですか?」
「そうそう、大丈夫、大丈夫。お前は世界一可愛いぞ《重爆》。きっとこの服なら奴もいちころだ。なぁ?バジウッド」
「へ?俺ですかい?俺に振らないでくださいよ」
「・・・・・・絶対ですよ」
「何?」
「私諦めませんからね!絶対応援してくださいよ、陛下!」
「あ、ああ・・・・・・」
レイナースの決意が籠った本気の眼差しに若干引き気味のジルクニフであったが、さらに引かせるような声が別のところから上がった。
「ところで、陛下!提案がありますぞ!」
「いたのかフールーダ・・・・・・」
フールーダは昨日のペロロンチーノの仲間の靴を舐めるという失態を犯したため本来ここには呼ばれていなかった。
「先日、シャルティアなる御方を見た際のあの魔力の波動!あれこそは最高位たる魔力の波!あの力を見たとき私は・・・・・・私はもう・・・・・・ほぼイキかけました!」
「じい、お願いだからもう帰ってくれないか」
「まだ話は終わっておりませんぞ陛下」
「はぁ・・・・・・まだ何かあるのか」
「陛下、かの者たちを帝国魔法学院の教師として招聘することを提案します!」
お前それ自分が学びたいだけだろうとその場の誰もが思ったが、ジルクニフはその案が意外と悪くないのではないかと考える。
「そこで教師として魔法の実演でもさせてみる・・・・・・か。そうすることによって奴らの魔法がどの程度の力があるかを試す。そして奴らの力の秘密も明かされるかもしれないな」
「その通りです!陛下!かの御方の魔法の深淵を探るためにも!ぜひ!ぜひ!」
「なるほど、そしてそこに私が生徒として紛れ込んで、ペロロンチーノ様と一緒に学生ライフを送ればいいのですね」
「おい、そんなことは何も言ってないぞレイナース」
「陛下、私も生徒として・・・・・・」
「あのなぁ・・・・・・じい、お前その年で生徒になる気か?さすがに無理があるだろう」
「ご安心ください。幻術を使用し、女生徒に紛れ込もうかと思います」
その発言にジルクニフは頭が痛くなる。フールーダは魔法が絡むと駄目になる時があるが、今回は特に駄目だ。だが、そんなことはお構いなしにフールーダは魔法により姿を少女に変えた。
銀髪のおさげの13~4歳くらいの非常に可愛らしい少女だ。シャルティアをモデルにしていると思われる。
「なぜ女生徒なのだ・・・・・・。だが、声はどうしようもあるまい。じい、お願いだからもう帝国魔法省で魔法の研究でもしていてくれないか」
「ご安心ください陛下。帝国魔法省の魔法詠唱者を総動員して声を変換する魔道具を作成しました。これで少女の声です」
そう言って首につけた蝶ネクタイ型の魔道具を発動させたフールーダの声は幼い少女のものとなる。
「おいじい!お前は国民から預かった大切な税金を何に使ってるんだ」
「魔法少女フールにおまかせあれっ」
そう言って片足を上げ、頭に右手をかざすポーズを取るフールーダ。仕草が数世代ほど古い。元の姿を知っているジルクニフは吐き気を催す。
「ああ、もう分かった分かった。彼らが帝国魔法学院の教師をしてもいいというのであればお前たちに任せよう。奴は学校というものにこだわりをもっていたからな。乗ってくるかもしれん」
「陛下・・・・・・。俺帰ってもいいですかい?」
「何を言っているんだバジウッド。こいつらが暴走したら斬り捨ててもいいからお前が止めるんだぞ」
「ええー・・・・・・」
「さて、お前たち帝国魔法学院に潜入するための準備をしておけよ」
「「はっ」」「はぁ・・・・・・」
郊外の閑静な屋敷の一室で、二つの元気な返事と一つのため息が静けさに消えていくのだった。