韓国食品から大腸菌 原料をバキュームカーで搬送した事件も
昨年末に起きた韓国海軍駆逐艦の火器管制レーダー照射問題に、徴用工への賠償判決と、問題山積の日韓関係。「言いがかりは無視しておけばいい」と考えたくもなるが、両国を日々行き交う物流についてはそう片付けるわけにもいかない現実がある。
財務省の調査(2017年度)によれば、韓国は日本の製品輸入先として中国、米国、豪に続く4位で、その輸入額は年間3兆円を超えている。
なかでもキムチや韓国海苔といった韓国食品は老若男女に親しまれているが、その割に日本人が口にする“メイド・イン・コリア”の実態は知られていない。
厚生労働省が公表する「輸入食品等の食品衛生法違反事例」の過去3年分を紐解くだけでも、冷凍カルビスープや高麗人参茶から基準値超の細菌や微生物が検出(2018年)、白菜キムチから食中毒を引き起こす腸管出血性大腸菌O-103が検出(2016年)といったケースが報告されている。
このキムチは山口県内のスーパー14店舗で流通していたことが発覚。店頭販売前のものを含む計468キロ分を回収する事態となった。
大腸菌群の検出事例は目立っており、過去3年(2016~2018年度)で食品衛生法違反に該当した韓国輸入食品65例のうち、大腸菌群の検出によるものは20例。実に3割にのぼる。この数字は他の輸入先となる先進各国の中でも極めて高い。
昨年1年だけでも冷凍チャンジャや冷凍干し柿、ハンバーガーやアイスクリームといった食品から相次いで大腸菌群が検出された。
日本で『JINRO』の名で親しまれている焼酎の生産会社「ハイト眞露」のノンアルコールビールも、日本の殺菌基準を満たしていなかった。
2014年には大手調味料メーカーが、その原料の糖蜜37トンを糞尿収集業者のバキュームカーで搬送し、摘発される事件も起きている。韓国に詳しいノンフィクションライターの高月靖氏が語る。
「韓国では昔から食品や食器の使い回しが日常化していたこともあり、先進国としては衛生意識が低いことは否めません。衛生管理にコストをかけない工場が多いことに加え、この数年の夏は猛暑だったので、食品を扱う現場も温度管理に苦労したようです。病原菌の繁殖が進み、食中毒の報告が増えています」
※週刊ポスト2019年2月8日号
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猫のひげは重要! 抜いたり切ったりは×、その4つの役割
猫の絵を描く際、“ひげ”を描くと大抵それっぽく仕上がる。それほどまでに、猫らしさを象徴するパーツであるひげ。実際はどこに何本生えているか知っているだろうか。今回はそんなひげにまつわる豆知識を紹介する。
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猫のひげといえば、口元のひげ袋(“ω”の形をしている部分)から生えているイメージが強いが、実は口元以外にもまぶたの上、頬、あご、さらに前脚の後ろ側の計5か所から生えていると、猫専門病院Tokyo Cat Specialistsの獣医師・有田早苗さんは言う。
「顔のひげは全部合わせて約50~60本あります。色は白もあれば、茶色、根元だけ黒いなどさまざま。いずれも半年ほどの周期で自然に抜けて生え変わります」(有田さん・以下同)
ひげの根元には神経が集中しており、わずかな気配や空気の流れまでも感じ取れるという。猫が暗い場所でも視覚に頼らずに歩けるのも、ひげで音の振動を感知できるからだ。
「猫のひげは、自分の周りの情報を収集するアンテナのようなもの。ですから、ひげを切ってしまうと、能力が低下し、生活に支障が出てしまいます。普段と異なる状況に不安を感じて元気がなくなることもあるので、無理に抜いたり、切ったりしては、絶対にいけません」
◆狭い場所でもひげで通れるかをジャッジ
生えている場所により、ひげの役割には違いがある。例えば顔のひげは、周辺情報をキャッチする他に、ひげの長さで狭い場所を通れるか判断する役割をもつ。
「一般的に口元のひげの長さは体の幅より長く、顔にあるすべてのひげの先端をつなぐと円の形になります。狭い場所を通る際は、まずひげを広げてから顔を入れ、ひげが当たらないかどうかを確認します。そしてひげが当たらなければ、体も通れると判断しているのです」
といっても、この方法が通用するのは健康で標準体形の猫の場合。肥満の場合、頭は入ってもお腹が通り抜けられないこともあるという。
さらにひげは動かし方次第で、感情も表現できる。例えば、周囲の様子をうかがっている時は外側に向けて上下に広げるが、眠っている時やリラックスしている時は、だらんと垂らしている。攻撃的な時は鼻より前に向け、恐怖を感じている時は頬にペタッとくっつける。よく見ていないと判断は難しいというが、覚えておくとよさそうだ。
「実際、動物病院の診療でも、ひげがだらんと垂れている子はストレスが少ないと判断します。逆に、ひげを前方に向けている子は緊張していて過敏になっており、攻撃してくる可能性があるため、こちらも気をつけます。ひげの状態から猫たちの心理状況をくみ取っているんです」
あまり知られていない前脚の後ろ側のひげは、捕まえた獲物の微妙な動きを察知するためのもので、肉食動物の特徴でもある。
私たち女性にしてみれば“ムダ毛”のひげも、猫にとってはとても重要なもの。愛猫のひげの色、長さ、動きに注目してみては?
※女性セブン2019年2月7日号
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病気と闘う子供を励ますセラピー犬ベイリーを知っていますか
病気で入院する子供のベッドで添い寝したり、時には、検査室や手術室まで付き添ったり…そういった役割を持ち、小児病院に常勤する犬がいることをご存じだろうか。
2010年に日本で初めて、静岡県立こども病院でその試みは始まった。その第1号となったのが、「ベイリー」だ。ベイリーは、現在11才。静岡から活動の場を神奈川県立こども医療センターに移した後、昨年10月、その任務を終え、惜しまれながら引退したが、これまでに、ベイリーが励ましてきた子供たちはのべ2万3000人を超えるという。
ベイリーは、オーストラリア生まれのゴールデンレトリーバーのオス。ハワイで、医療施設で働くための特別な訓練を受け、日本にやって来た。
当時、日本では、かつてない試みだったこともあり、衛生面など、院内に動物を入れることに抵抗を持つ人も多く、小児病院に受け入れられるまでの道のりには、数々の困難があったというが、実際に活動するベイリーの姿に、病院関係者、入院患者の親たち、そして誰よりも子供たちの心が動いていった。
ベイリーとそのハンドラー・森田優子さんに密着したノンフィクション『ベイリー、大好き セラピードッグと小児病院のこどもたち』(岩貞るみこ著 小学館)では、ベイリーの生い立ちから、小児病院に受け入られるまでの日々、入院する子供たちとの交流を、関係者への取材を元に写真と共に詳細に紹介している。
本書では、ベイリーを常勤にするよう院長に掛け合った少女、・マコさん、小児集中治療室でベイリーに会うことを心待ちにしていた2才のユヅキくんなど、ベイリーがやってくることで入院生活が一変した数々の子供たちのエピソードが掲載されている。
実際に、犬が“病院内を普通に歩いている”、“子供のベッドに寝ている”、“手術室に付いていく”…その様子、そして子供たちの笑顔を切り取った数々の写真を目の当たりにし、犬がもたらす様々な効果の大きさに気付かされることだろう。
1月27日には、『NHKスペシャル』で「ベイリーとゆいちゃん」と題し、重い病と決別するために、大手術を受ける少女・ゆいちゃん(10才)とベイリーが心を通わせながら、様々な困難を乗り越えていく日々が紹介され、なぜ、このように「犬と人間が、互いに愛情を感じ、心を癒やし合う」かの理由を最新科学で解き明かす。
現在は、ベイリーに続き「ヨギ」(ゴールデンレトリーバー・オス)、「アニー」(ゴールデンレトリーバー・メス)の2頭が、それぞれ静岡と神奈川の病院にて活動中だ。彼らを病院に派遣している特定非営利活動法人シャイン・オン!キッズは、今後も新たな犬の導入を検討しているという。
シャイン・オン!キッズは、日本で2才の息子を白血病で亡くしたアメリカ人夫妻が、設立した「タイラー基金」がその前進だ。小児がん、重い病気と闘う子供たちとその家族を励ますために「ファシリティドッグ(シャイオンキッズではセラピードッグをこの名称に定義している)」「ビーズ・オブ・カレッジ」などの提供を続けている。
ベイリーは、ボランティアとして今も病院に通う。
「ベイリーがいたから治療をがんばれた」「病院での思い出がつらい記憶にならなかったのは、ベイリーの存在があったから」「ベイリー、大好き」…子供たちからの声、手紙は、今もシャイン・オン!キッズに続々と届いているという。
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35才で「強」になりたい中条あやみ、幼い頃のかわいい姿
女優・中条あやみが「ハーゲンダッツ ジャパン」の日本創業35周年記念イベント&新CM発表会に登場。中条はブランドアンバサダーを2016年から務めている。
イベントでは、幼少期の写真を公開した中条。さらに、ハーゲンダッツ35周年にかけて、自身が35才を迎えたときに叶えていたいこととして、「強」の一文字を書いた。
この「強」という文字には、「母のように強く、ハーゲンダッツのように長く愛される女性になりたいです」との思いが込められているという。
この日はサンドアートパフォーマーのKohei氏も登場し、ハーゲンダッツ35周年記念作品を披露した。
■撮影/高柳茂
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高津臣吾・ヤクルト二軍監督 「叱らない」育成哲学
ペナントレースで常に結果を求められる一軍の監督・コーチと、新人選手の育成や調整中のベテランの再起を託される二軍監督では、同じ指導者であっても求められるものが違う。ヤクルト二軍監督・高津臣吾氏の著書『二軍監督の仕事』(光文社新書)がベストセラーになっているのは、ビジネスマンにも通じる若手の育成法、組織の運営法が詰まっているからだ。春季キャンプを目前に控えた高津氏に、二軍監督としての心構えを訊いた。
* * *
二軍監督に就任して3年目のシーズンを迎えました。高卒の選手は、高校までエースで4番だった人が多いですが、プロに入ると一番下っ端です。指導者として「ゼロから教える」という心構えでやっていますが、一番気をつけているのは「野球に関しては叱らない」ということです。
叱って学んでくれればいいと思いがちですが、失敗から成功へ導くためには、何がダメだったのかを説明して、選手からも意見を聞くことで、本人が納得して次のプレーに準備できるほうがいい。技術面で叱るのは二軍コーチに任せていて、僕の役割はヒントを与えることだと思っています。
僕が叱るとしたら、野球以外のことだけ。選手がSNSに書いたことで問題が起きたり、門限を破るなどチームのルールを守らないときは厳しく叱ります。
監督やコーチにアピールするために練習する“見せ練”に励む若手もいますが、僕はそれが一番嫌い。それは前向きな練習とはいえない。常に「うまくなりたい」という欲を持って練習してほしいと話しています。
◆「一軍の要望」が最優先
昨年は、ドラフト1位で入団した村上宗隆(18)が一軍に昇格して初打席初本塁打を放ったり、2016年ドラフト3位の投手・梅野雄吾(20)が8月に一軍に昇格してから26試合投げたりと、成長を見せてくれました。この瞬間が、二軍監督の醍醐味だと思います。
球団の将来を担う選手を育てるには、きちんとした育成プランが必要です。そのために、ヤクルトには「強化指定選手」という仕組みがあります。
強化指定選手は一軍や球団のスタッフたちと協議して決めます。指定された選手は、調子が悪くても二軍の試合で使い続けます。「この投手は何日間に1回は登板させないといけない」など、開幕前に球団が育成方針を固めるのです。
僕たち二軍は、どんなに結果が出なくても一軍の方針に従って起用し続けます。
一軍で将来8番を任されるタイプの選手は、二軍でも8番で起用するようにもしています。捕手の古賀優大(20)は、どんなにバッティングの調子が良くても8番から打順を上げません。一軍では間違いなく8番を打つからです。次の打者が投手であることを意識しながら打席に入るように指導しています。
最も優先されるのは、一軍が何を望んでいるのか。二軍に調整にきた一軍の先発投手を、3週間後に一軍で投げさせたいというのであれば、逆算して二軍の試合で優先的に投げさせることもあります。
一軍から「いま状態がいい左投手はいるか?」と問い合わせがあったら、僕たちから推薦する。一軍とのやり取りは、毎日密に行なっています。
“親会社”の経営方針や要求を的確に把握し、それに合った材料(人材)を整えて、送り出す。二軍監督は、下請け会社の社長みたいなものでしょうか。
◆「失敗の翌日」が大事
〈二軍には18歳の新人から、ケガで調整する30代、40代のベテラン選手もいる。そうした選手のモチベーションを保つのも、二軍監督の仕事だ〉
二軍キャンプでのスタートが決まったベテラン選手は、「一軍からお呼びがかからなかった」と感じます。「開幕まで何日ある」とか「オープン戦で結果を出そう」と声をかけますが、気持ちが乗っていかない選手も出てきます。ケガで調整中だったり、リハビリ中で野球ができない選手を見ると、若い選手と同じ態度で接してはいけないと感じます。
例えば、「頑張れ」という言葉ひとつでも、18歳とベテランでは受け取り方が違います。リハビリ中の選手には重い言葉になるかもしれない。そういった一つの言葉を使い分けるようになりました。
一軍から二軍に落ちてくる選手は、年齢関係なく精神的に傷ついている選手が多い。そこからもう一度尻を叩いてやらせるのは難しいので、まず長い時間をかけて話します。
他にも気をつけているのは、「臆病になったり、躊躇してミスしたらすぐに交代させること」と、「そうやって交代させた選手は、翌日に必ずスタメンで使うこと」です。そういうミスをした選手は、コーチが指導して復習しているので、それを披露する場を作ってやる必要がある。翌日に試合に出ると、プレーが何か変わっていることが多いですね。
二軍では、試合に負けても、選手が学んでうまくなってくれればいい。常に勝たなければいけないのは一軍の勝負。二軍では、負けることで悔しさや苦しさを感じ、勝ちに対する貪欲さを身につけてほしいと思っています。
※週刊ポスト2019年2月8日号
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元祖ひょうきんアナ山村美智 女優として意外な活躍ぶり
放送作家でコラムニストの山田美保子氏が独自の視点で最新芸能ニュースを深掘りする連載「芸能耳年増」。今回は“元祖・ひょうきんアナウンサー”と呼ばれた山村美智について。
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1月16日、当サイトで公開された『平成の人気女子アナトップ10』を興味深く読んだ。
実は『週刊ポスト』編集部から私のところにも取材があり、元フジテレビの高島彩アナや、元TBSの吉川美代子アナについてコメントをさせてもらった。
ちなみに、同ランキングは、1位・小宮悦子アナ、2位・高島彩アナ、3位・田丸美寿々アナ、4位・八木亜希子アナ、5位・吉川美代子アナ、6位・水卜麻美アナ、7位・夏目三久アナ、8位・有働由美子アナ、9位・河野景子アナ、10位・中井美穂アナという結果。
毎年、オリコンが発表する「好きな女性アナウンサーランキング」との重なりは驚くほど少なく、『週刊ポスト』の読者層が見る(見ていた)報道番組やスポーツニュースのメインを張った女子アナが目立っている他、「平成の~」という括りが、ベテラン勢にもスポットを当てることとなったようだ。
田丸美寿々、吉川美代子、小宮悦子にピンときた世代なら、この女子アナをもちろん覚えていることだろう。『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)の大人気コーナー「ひょうきんベストテン」を島田紳助が仕切った際、最初にアシスタントをつとめた“元祖・ひょうきんアナウンサー”山村美智子(現・山村美智)だ。
1980年入社で、『オレたちひょうきん族』に抜擢されたのはその翌年。モデル並みのスタイルと、クールビューティーなルックスは、華やかな衣装がよく似合ったうえ、毎週、売れっ子芸人らの“洗礼”を受けていた山村アナは、1985年の退社前、同局のテレビマンと結婚したことをネタにされ「ひょうきん懺悔室」にも行っている。
◇後輩女子アナとは一線画す女優魂
昔話は尽きないが、果たして、山村美智の現在の肩書は「フリーアナウンサー・女優」なのである。
近年では、木村拓哉主演の『アイムホーム』(テレビ朝日系)に出たことでネットが沸いた。
同局の女子アナで女優活動をしている後輩は意外と多く、入社直後、『同・級・生』(フジテレビ系)で安田成美、菊池桃子、山口智子らとメインキャストに名を連ねた中井美穂。『下町ロケット』(TBS系)の医療ジャーナリスト役が好評だった高島彩。演技の評価は分かれたが、『ブラックペアン』(同)で重要な役を演じた加藤綾子。そして、『あまちゃん』(NHK)や『真田丸』(同)、『トットちゃん!』(テレビ朝日系)、映画『みんなのいえ』『THE有頂天ホテル』から、舞台『江戸は燃えているか』まで、コンスタントに女優業をこなす八木亜希子がいる。
最近では、その八木アナの同期だった河野景子にも女優としてのオファーがあるのではないかと芸能マスコミが書き立てているところだ。
だが、山村の女優業は、フジテレビのアナウンサーになる前からのもの。彼女、津田塾大学の女子大生時代、東由多加氏主宰のミュージカル劇団『東京キッドブラザース』に在籍していたのである。
Wikipediaの「在籍していた俳優」の項には、深水三章、柴田恭兵、三浦浩一、純アリスら、同劇団の代名詞ともいうべき俳優陣と共に「山村美智子」の名前も記されている。そんな素地がある山村が出演した『蝶々夫人とスズキ』を昨年末、観る機会に恵まれた。
「池田理代子のオペラと山村美智の一人芝居でお魅せする」のキャッチに、最初は“はてなマーク”がたくさん浮かんだものだ。
池田理代子とはもちろん、少女マンガ『ベルサイユのばら』でおなじみの池田理代子先生。現在は「ソプラノ歌手」の肩書をもつ。
◇女子アナ時代に培ったスキルを発揮
そして山村は、脚本を手がけ、蝶々夫人、女中のスズキ、ピンカートン、領事シャープレスの4役を演じ分けた。いい悪いではなく、件の後輩女子アナらのそれとは大きく異なる女優ぶりなのである。
とはいえ、ミュージカル劇団に所属していた“過去”があるからだろう。幕が下りれば裏方仕事もこなす山村。「私、女優よ」とふんぞり返るようなところは一切ない。MCのように、共演者やスタッフの名前を読み上げたり、近況を上手に聞き出したりできるのはアナウンサーの面目躍如といったところ。観客一人ひとりに挨拶をして回ったり、写真撮影に応じたり、会場となっていたレストランのPRもする細やかな気遣いぶりもみせていた。
山村が局アナだった頃は、近年のように女子アナがアイドル的な存在ではなかっただろうし、早くに売れたがゆえに周囲から嫉妬もあっただろう。局内の上下関係も今よりずっと厳しかったに違いないが、そうしたことも含めた女子アナ時代の経験は、女優として立つ公演の隅々に活かされていると見た。
実は山村、2002年からオフブロードウェイなどで二人芝居を地道に続けてきた。「その延長線上に」一人芝居があるといい、芝居はもちろん、アナウンサーとしてのそれとは一味も二味も異なるものの、ナレーションも担当していたのだから物凄い。
来月16日と17日にも、赤坂のドイツ文化会館にて、同じキャストで山村の一人芝居『蝶々夫人とスズキ』の公演がある。「ドラマティックオペラ」と名付けられたジャンルで輝く「女優・山村美智」は必見だ。
しかし件のランキングに登場した女子アナを含め、記憶に残る“平成の女子アナたち”の人生は、まさにドラマティックだ。
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有名アニメ作品の「聖地巡礼」と鉄道、その現状と課題
「聖地巡礼」という言葉はもともと、聖人にゆかりがあったり、奇蹟が起きた土地を訪れることを指すが、最近はアニメーションの作中に登場する場所をファンが訪れることも表す。風光明媚な場所が作中モデルになることも多く、意外な場所に多くの観光客が訪れるきっかけともなっている。ライターの小川裕夫氏が、アニメ作品の聖地巡礼と、鉄道との関係についてレポートする。
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信仰心が薄いと言われる日本人だが、初詣や学業祈願などで神社仏閣に参拝したことがないという人は少数派だろう。日本では神社仏閣のほか山や川、海などは聖地と化し、人々の信仰を集めてきた。一例を挙げれば富士山がそれにあたり、そうした聖地を訪ねる旅は聖地巡礼と称されてきた。
聖地巡礼において、鉄道が果たした役割は大きい。関東なら成田山新勝寺や川崎大師、関西なら高野山や生駒山宝山寺といった聖地の多くは、鉄道が発達したことにより明治期から大正期にかけてメジャー化した。
神社仏閣を巡る鉄道は、いまだ人気がある。その一方、現在は聖地巡礼の新たな形が生まれている。それが、アニメやマンガの舞台になった地を訪れるというものだ。
アニメやマンガの舞台を巡る"聖地巡礼"は、近年、コンテンツツーリズムと呼ばれるようになった。2012年から放送を開始した「ガールズ&パンツァー」(ガルパン)は、コンテンツツーリズムの先駆けでもある。
茨城県大洗町に本拠地を置くとされる大洗女子高校と、戦車道という競技で競い合う女子高校生たちの奮闘ぶりを描いた同作では、あちこちのシーンで大洗の街並みが描かれている。同作のファンは、実際に現地に足を運びアニメの世界に没入する。
「鹿島臨海鉄道では、アニメ放映と同時にガルパンのラッピング車両を導入しました。現在までに、ガルパンのラッピング車両は4両製造しています。そのうち初代の1号車は塩害で車体が傷んだことで廃車になりましたが、2017年にリニューアルでラッピングを貼り替えて、新たに4号車として生まれ変わりました」と話すのは鹿島臨海鉄道の担当者だ。
鹿島臨海鉄道は、茨城県の水戸駅と鹿島サッカースタジアム駅との約53.0キロメートルを結ぶ路線。大洗町の玄関でもある大洗駅は、茨城県の水戸駅から3駅目に位置する。水戸駅からの乗車時間は、約15分と短い。
そのため、大洗駅から水戸へ通勤・通学している人も少なくない。なにより、大洗は東京から近い人気の海水浴場としても知られているので、夏場になると首都圏から多くの海水浴客が集まる。
その一方、大洗町の人口は約1万6000人と少なく、ほかの地方都市と同様に人口減少に悩まされている。
沿線の市町村人口が減少すれば、当然ながら鹿島臨海鉄道の利用者は減る。しかし、人口が増加する兆しは見えない。
そうした中、鹿島臨海鉄道は交流人口の増加に活路を見出そうとする。ガルパンとのコラボは地域を活性化させる一手段でもあった。
大洗駅は、作中で頻繁に登場する。それだけに駅構内ではガルパンの登場人物を描いたヘッドマークやポスターなどをあちこちで目にする。また、駅の中にある案内所はガルパングッズで埋め尽くされている。
さらに、駅を一歩外に出ればガルパンの顔出しパネルも設置されているので、駅で記念撮影をしていくファンが多い。大洗に足を運ぶだけではなく、ガルパンに登場する北浦湖畔駅を訪問する巡礼者もいる。
ガルパンの聖地になっている鹿島臨海鉄道は、遠方からの巡礼者に満足してもらおうと工夫を重ねている。特に、好評を博しているのが、記念入場券の販売だ。
「弊社では硬券の入場券を販売し、日付の入った記念スタンプを押しています。この記念スタンプはガルパンのキャラクターを絵柄にしているのですが、月替わりで絵柄を変えるようにしています。そのため、それを御朱印のように集めているファンも多いようです。また、日付が入るので、推しメンの誕生日に訪れるファンもいます」(同)
アニメと鉄道のコラボでは、2019年1月から劇場版が公開された「ラブライブ!サンシャイン!!」(ラブライブ!)も話題になっている。同シリーズは2010年からマンガ連載を開始し、すぐに人気に火がついた。
スクールアイドルという部活動で全国大会「ラブライブ!」に出場する物語である同作は、架空の高校・浦の星女学院高校が舞台になっている。その所在地とされているのが静岡県の沼津市と三島市の一帯だ。
沼津は鉄道の街としても知られる。過去には機関区があり、SLの名所でもあった。沼津駅は今でもその名残をとどめており、駅南口にはSLの煙室扉と動輪が展示されている。
ラブライブ!の作中では、その横で、津島善子が堕天使のパフォーマンスを披露するシーンがある。印象的なシーンではあるが、残念なことにJR東海や沼津駅、沼津市がラブライブ!を全面的にPRしている雰囲気は駅前からは感じられない。
地域に密着した私鉄とは異なり、JRが全面的にラブライブ!を押し出すことは難しいのかもしれない。
ラブライブ!とのコラボに力を入れているのは、三島駅-修善寺間の約19.8キロメートルの駿豆線を運行する伊豆箱根鉄道だ。
伊豆箱根鉄道駿豆線の伊豆長岡駅は、駅舎全体がラブライブ!のラッピングで覆われている。この駅舎ラッピングが大規模だったため、ファンや地域住民の間で大きな反響を呼んだ。しかし、
「伊豆長岡駅では、2017年7月からラブライブ!のラッピングを施しました。しかし、市の"屋外"広告条例に抵触しているとの指摘を受けました。そうしたことから、2018年3月に“屋内”広告物に貼り替えることになりました。貼り替えと同時に、新しいデザインに変えています」と話すのは伊豆箱根鉄道総務課の担当者だ。
ラブライブ!のラッピングが施されていた駅舎のガラス壁は、厚さが約1センチ。はた目からしたら、屋外だろうが屋内だろうが、さほど違いを感じない。それでも内側と外側の違いだけで、条例に抵触してしまった。
市からの指摘を受けて新たに貼り替えられた屋内ラッピングは、屋外に貼り出されたモノよりサイズは大きくなった。これが、かえってファンを歓喜させた。
ラブライブ!効果は、数字にも表れている。伊豆長岡駅の一日平均乗降人員は、2015年度が4816人。対して、2017年度は4953人。一日あたり100人以上も増加した。
一日に100万人以上も利用される東京圏や大阪圏と比べれば、100人の増加は微々たる数字に思えるかもしれない。しかし、地方の鉄道にとって、一日100人の利用者増はかなり大きい。
人口減少待ったなしの地方都市にとって、公共交通の維持は至上命題になっている。なかでも、鉄道インフラの存亡は街の衰退を左右する。それだけに、自治体も鉄道維持には躍起になる。
しかし、どこの市町村も自治体財政は逼迫しており、地域にとって重要だとわかっていながらも鉄道会社の経営支援のために税金を投入することに二の足を踏む。
コンテンツツーリズムで聖地巡礼者を呼び、巡礼者たちが鉄道を利用することで鉄道維持にかかる地元住民の負担軽減にもつながる。それは、ひとえに地方都市の生存戦略にもなるだろう。
しかし、アニメファンを金づると見てしまえば、巡礼者はそっぽを向く。そうしたら、せっかくの地域振興が水の泡だ。
アニメの放映期間は原則的に3か月。マンガの場合はそれよりも長い連載になるが、それでも聖地巡礼は一時的なブームでしかないと冷ややかに見る向きもある。
しかし、クレヨンしんちゃんの埼玉県春日部市やちびまる子ちゃんの静岡県静岡市(マンガ連載時は清水市)のように一般に浸透した聖地もある。
地域資産として定着させるためには、地方自治体と鉄道会社の協力関係は不可欠だ。どのように巡礼者と向き合うのか? 地方自治体と鉄道会社の新たな向き合い方が注目される。
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50代からの起業でよくある失敗は「ドゥ・モア・ベター」
年金だけではまともに暮らせなくなりつつある中で、豊かで安定した老後を迎えるためには何歳になっても「稼ぐ力」が必要となる。その場合、独立して事業を始める「起業」も有力な選択肢の一つだ。『50代からの「稼ぐ力」』を上梓した経営コンサルタントの大前研一氏が、定年後に始める「シニア起業」のポイントを解説する。
* * *
実は「起業」は決して難しいことではない。年齢も関係ない。シニア世代であろうと、起業のチャンスはいくらでも転がっている。
ただし、シニアが起業する場合、注意してほしい点がある。
一つは、複数の他人が絡んだ仕事をしないということだ。自分だけでできる、あるいは家族や自分の親しい友人1人を加えればできる、という仕事に絞る必要がある。これはお金もそうだ。借金をしてまでやってはいけない。あくまでも自己資金の範囲で始めるべきである。
たとえば「おいしい地鶏」を売りにレストランを始めるとしよう。そうすると、地鶏を優先的に卸してくれる養鶏業者と契約する必要がある。果たしてこの養鶏業者が、一定のレベル、一定の量の地鶏を卸し続けてくれるかどうか。複数の他人が介在するとはそういうことで、ここにリスクが発生する。関わった人間の数だけ、リスクが大きくなるのだ。また、仮に成功を収めた場合でも、大手企業が参入してきてやり方を真似られたら、太刀打ちできない。
体力の問題もある。20~30代ならば、徹夜もいとわないだろう。何日か寝ずに働いたとしても、何とかなる。マッキンゼー・アンド・カンパニーの後輩の南場智子氏は、37歳の時にDeNAを起業した。最初の頃はオフィスに寝袋を持ち込み、会社に泊まり込んで働いていたそうだ。1日24時間を会社のために捧げたのである。
だが、これは30代だから可能だったことであり、シニアの場合はそうはいかない。同じように働いたら、体を壊して入院してしまうかもしれない。自分は1日何時間働けるのか。12時間なのか、それとも8時間なのか。無理しないで働くことができる時間を自分で設定し、それを維持するようにしなければならない。
いきなり会社をゼロから立ち上げようとするのも、やめたほうがよい。可能性があるとしたら、自分自身がIT技術に精通している場合のみで、スマホやフリーミアム(基本的な機能は無料で使え、さらに高度な機能などを利用する際に課金される製品やサービス)のツールを駆使して、社長1人で何でもできるならかまわない。だが「そういうIT関係は若い人に任せて……」と思っているようならダメだ。仮にITに精通した若手がいたとしても、そんな人材がその人の会社に来てくれる可能性はゼロに等しい。
ホームページさえ立ち上げれば客が集まってくると思っているかもしれないが、何千何万というWebサイトの中から、サイバー空間の住人があなたのホームページを選んでくれるようにするためには、それ相応のIT知識が必要となる。これは「SEO(Search Engine Optimization)」という技術で、グーグルやヤフーの検索結果で自社サイトがより多く表示されるために検索エンジンを最適化するWebマーケティングの一つだ。しかし、SEOをパーフェクトに使いこなせる人間はほんの一握りで、まず無理だと思ったほうがよい。SEOの専門会社も数多くあるが、eコマースの専門家もピンキリで、高い報酬を払ったにもかかわらず効果がない、ということはザラなのだ。
最も可能性が高いのは、従来から付き合いのある会社や人と手を組み、資本金を出し合ってやる方法だ。自分自身はフルタイムの社長として責任を持ち、パートナーに人と金を出してもらうのだ。その代わり、人一倍、汗をかかねばならない。
◆「より良いもの」で勝負するな
では、何をやるか? 何をやるにせよ、「ドゥ・モア・ベター」(より良い物を作る・売る)の発想だけは、絶対にしてはならない。
日本の企業は長らく、この考えに取り憑かれている。従来の延長線上で競合他社より「もっと多く、もっと良く」と考え、そこに目標を設定してしまうのだ。
日本の家電メーカーが、こぞって業績不振に陥った理由がそこにある。冷蔵庫の容量をもっと大きく、消費電力をもっと小さく……と競ったところで、それは程度の問題でしかない。たしかに高度成長期は「ベター」になった者が勝ってきたという歴史があるが、その競争は必ず壁に突き当たる。
現に、1993年創業という比較的若いイギリスの電気機器メーカー「ダイソン」が、全く新しい発想のサイクロン掃除機やドライヤーを市場に投入したら、日本のメーカーは歯が立たなくなってしまった。
たとえば、2009年秋に発売された扇風機「エアマルチプライアー(AirMultiplier)」。羽根を持たない扇風機のスタイルに、誰もが度肝を抜かれた。「ドゥ・モア・ベター」の発想ではないところでダイソンは勝負しているのだ。創業者のジェームズ・ダイソン氏は「人と違うことをしたい」と常々口にしているが、これこそアンチ「ドゥ・モア・ベター」の発想だ。ダイソンは20億ポンド(約2900億円)を投資し、400人以上の専門チームを結成してEV(電気自動車)の開発に参入したが、これも今までの原理とは全く違うところで勝負してくるのではないか。
ダイソンのこれまでの成功が物語っているのは、「起業成功のカギはアイデアである」ということだ。
「ドゥ・モア・ベター」の考え方の弊害は、価格設定にも現れる。「他社よりも価格を安く」というのは、日本企業の悪しき考え方だ。ここでも、「ドゥ・モア・ベター」で発想してしまっている。
せっかく起業した人が「ドゥ・モア・ベター」の発想から抜け出せない場合、どうなるか。同じような商品を他社より安くするためには、経費を節減するか、自分の給料を削るしかない。経費を節減するといっても大工場を展開する大手に敵うわけがなく、結局、自分の懐を痛めるしかない。これでは損失を抱えるだけで、何のための起業か、ということにもなりかねない。それならば何もせずに虎の子の貯金を抱えて静かにしていたほうがマシ、ということになってしまう。だが、貯金を抱え込んだところで今の超低金利では目減りしていくだけだから、増えるのは将来に対する不安ばかりだ。
※大前研一・著『50代からの「稼ぐ力」』(小学館刊)より一部抜粋
【プロフィール】おおまえ・けんいち/1943年福岡県生まれ。1972年に経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社。本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、1994年退社。以後、世界の大企業やアジア・太平洋における国家レベルのアドバイザーとして幅広く活躍。現在、ビジネス・ブレークスルー(BBT)代表取締役会長、BBT大学学長などを務め、日本の将来を担う人材の育成に力を注いでいる。
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『テラスハウス』トリンドル玲奈が「トリン里化」の衝撃
2019年になってから、火曜日になり『テラスハウス OPENING NEW DOORS』(Netflix)が更新されるたび、ネット上では悲鳴のような感想が広がっている。女子メンバー3人の関係が険悪で、たとえカップルが成立してもメンバーが祝福する雰囲気が感じられないからだ。ところが、心理戦によって生殺与奪の瞬間が何度もやってくるスリルとサスペンスに満ちた展開から、視聴者は目が離せなくなっている。イラストレーターでコラムニストのヨシムラヒロム氏が、テラハ内の人間関係によってトリンドル玲奈が山里亮太に感化されてしまったことについて考えた。
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“見ず知らずの男女6人が共同生活する様子をただただ記録したものです”
『テラスハウス』の前口上である。これだけを聞けば「なにが面白いの?」と思う方が大半だろう、かつて僕もそうだったので気持ちはよーく分かる。そんな『テラスハウス』、過去に放送されていたフジテレビを飛び出し、今ではNetflixで全世界に配信中。評判もすこぶる高く、米TIME誌の記者が選出した「2018年のベスト番組10」で6位にランクインしたとか。
現在『テラスハウス』は軽井沢編がクライマックス。番組内の時計では、2018年のクリスマスに共同生活解消とのこと。平成最後の聖夜に終わるというロマンティックな舞台設定とは裏腹に、軽井沢の豪邸を覆うのが淀んだ空気。史上最悪とも例えられる人間関係が繰り広げられている。
そんな血で血を洗うVTRにコメントしているのが、スタジオキャストの6名。YOU、トリンドル玲奈、徳井義実、山里亮太、馬場園梓と葉山奨之。恋愛模様を微笑ましく見守るキャストを横目に、山里は一人気を吐く。それでも言い足りないとYouTubeの『山チャンネル』で更にくさす。各話が更新されるたびにツッコミを入れている。山里対他5人といった構図が長く続いてたスタジオ。しかし、『テラスハウス』内の暗い人間関係によってか。最近はトリンドル玲奈が徐々に山里化。出演者の行動の裏を読む、鋭いコメントをするようになってきた。
話は少し逸れるが『テラスハウス』は、VTRに随時コメントするスタジオキャストの音声が聞こえる副音声で観ることをオススメしたい。
現在『テラスハウス』にいる女性メンバーは優衣(処女の大学生)、まや(専門学生)、利沙子(モデル)の3名。各人が他2名を「いけ好かない」と考えており、気を許せる関係ではない。しかし、場合によっては共闘もアリ。男子メンバーも3人いるが、このコラムで登場するのは元プロサッカー選手の愛大(あいお)オンリー。彼は女性3人の険悪な人間関係の狂言回しである。
『テラスハウス』史上最悪の殺伐さは、女子部屋で優衣が放った「まやちゃん話そう」から生まれた。そこで開講されたのが優衣と利沙子プレゼンツ、まやへの生活指導。機嫌によって態度が変わること、家事を手伝わないこと、そして優衣を「ババア」と呼ぶことへの是正が求められた。19歳の反抗期まやは、「2人の世界観 マジ強いのね」と反論。ここにて第一次『テラスハウス』戦争が開戦、優衣と利沙子VSまやという構図が生まれた。
その後、撮影の仕事で利沙子が一週間出張。鬼の居ぬ間を見計らい優衣は、まやに利沙子の二面性を密告。ここで2人は結託し、女性陣の構図が優衣とまやVS利沙子へと変わる。
このときスタジオでは「トラブルが起きるところに優衣がいる」と山里。当初は「こんなピュアな子はいない」と言っていた優衣を「人を殺したあとクラシックをかけながら飯食ってそう」とレクター博士に例えた。しかし、トリンドル玲奈は「そんなことないですよ~、素直に言っているだけだと思います!」と対極の意見を述べる。
『テラスハウス』での女子メンバー間の混沌は、優衣とまやの共闘では終わらない。事態は常に流動的だ。まやは利沙子へ優衣の暗躍を報告。その後、3人が勢ぞろいした女子部屋では言った言わないの不毛な大議論。誰も譲歩しないやりとりから完璧に壊れた信頼関係が見える。
「本当に仲悪いんだなぁ~」と副音声の山里は嬉々。
水掛け論に収拾をつけるため、優衣は利沙子とほぼ同じタイミングで『テラスハウス』に入居した愛大を呼び出す。そこで優衣は、愛大にかつて利沙子と「次は手をつなごう、次は告白しよう」といったデート演出プランを練った過去を暴露させる。利沙子は「それは冗談でのやりとりだった」と否定するが、もう後の祭り。「利沙子は番組で良い顔をしようとしている」といった優衣による印象操作がカメラの前で成し遂げられた。
恋愛模様に演出や作為があること、それは『テラスハウス』で最も犯してはならないタブーだ。視聴者が最初に観た愛大と利沙子のデート。その裏には打ち合わせという仕掛けがあり、楽しいデート風景を自己演出していた。これが事実ならば、それは番組と視聴者への冒涜だ。
全てを見せることが出来るはずはないことは分かる。『テラスハウス』内の共同生活が表なら、私的にやりとりをしている裏もあって必然だ。しかし、表と裏の大きさにはそれぞれ個人差がある。女性メンバーのそりが合わない原因はココだ。
19歳のまやは、若さゆえの強さがある。全てをさらけ出すのが『テラスハウス』だと考えているのだろう。しかし、芸能活動をする最年長の利沙子はパブリックイメージを意識するのが当たり前。明け透けには住んでいられない。ゆえに、まやを「全部ベラベラしゃべる子」と嫌悪する。では、もう一人の女子メンバー、優衣はどうか?
『テラスハウス』で、優衣は男性に触れた経験がない生娘キャラとして存在している。しかし、近々では愛大と親密な関係を築いてく姿も映し出されている。
そこにトリンドルのメスが入った。愛大とイチャつく優衣を観て、「映像的にやっているんじゃないかなぁと思う」と鋭い批評を披露。
少し前まで「素直なだけ」と優衣の作為に疑問を感じなかったトリンドルから驚きの言葉が出てきた。それを受けた山里亮太は「ピュアな恋をしている自分を見せて撮れ高を確保してるんだ! トリちゃんそれは盲点だったよ……」と絶賛。徳井義実は、純粋路線から離れたトリンドルを山里の悪影響を受けた「トリン里」と評した。
その後、明るみに出たのが優衣と愛大は既に男女の仲にあったという衝撃的な事実。「カメラの外でコソコソやるな」と利沙子を牽制した優衣。彼女も処女キャラを演出していたことが分かる。「キスなんて知らないもーん」といった純情ぶりをカメラの前で演じていた。
トリン里の慧眼は真実を見抜いていた。ブラウンの澄んだ瞳で、スタジオのキャストの誰よりも優衣の心根に迫っていたのである。一見穏やかなトリンドル、実は師匠の山里よりも狂気が強いかもしれない。
その後、番組は優衣の処女性が保たれているのか否かの検証に焦点が当てられる。その回のタイトル「Still a Virgin(まだ処女)」。
ここまで書けば分かると思うが、『テラスハウス』はまぁ異常な番組である。しかし、演出、カメラワーク、デザイン等でオシャレ番組にパッケージング。“異常さ”を上手に薄めている。根底にある昼ドラマ的な愛憎劇を巧みに隠蔽する。
今後、女性3人の人間関係が完全に改善することはないだろう。クライマックスの聖夜、軽井沢の豪邸ではどんな珍事が起きるのか。今から楽しみで仕方がない。そこでトリン里はどんなコメントを発すのだろうか。山里は3人の女性陣をどう見立てるのか。2人の天才コメンテーターを擁する『テラスハウス』、その面白さは今ピークを迎えている。
●ヨシムラヒロム/1986年生まれ、東京出身。武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業。イラストレーター、コラムニスト、中野区観光大使。五反田のコワーキングスペースpaoで週1度開かれるイベント「微学校」の校長としても活動中。テレビっ子として育ち、ネットテレビっ子に成長した。著書に『美大生図鑑』(飛鳥新社)。
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「自白」と「自供」の違い 「自供」は法律用語ではない
会社法違反(特別背任)などの罪で追起訴され、東京拘置所に収容(1月22日時点)されている日産自動車の前会長、カルロス・ゴーン被告(64才)。ゴーン被告が現在、収容されているのは「拘置所」だが、「留置所」や「刑務所」はそれぞれどう違う? 山下汐里弁護士が解説する。
「『拘置所』は、送検され、裁判で刑が確定するまでの場所で、逮捕されると、留置所→拘置所→刑務所の順で収容されます。
逮捕されたものの刑事裁判にかけられるか確定していない人が『留置所』に入り、検察官に送致されて刑事裁判を起こされる予定の人が『拘置所』に入ります。『刑務所』は刑の執行を受ける人が収容される場所です。
しかし実際は、拘置所の数が限られているため、逮捕されて裁判で刑が確定するまで留置所で身柄を拘束される人も少なくありません」
◆「自白」と「自供」
拘置所で過ごすゴーン被告に対し、検察は自白を引き出そうとしている、というニュースが流れていたが、「自白」と「自供」の違いは?
「『自白』は法律用語ですが、『自供』は法律用語ではありません。刑事事件の『自白』とは自己の犯罪事実を認める犯人の供述を指し、『自供』は警察や検察の取調べにおいて被疑者が犯罪事実を話すことを指します。ただ、『自供』は法律用語ではないものの、巷間、『自白』とほぼ同義で使われているといえるでしょう」(山下さん)
※女性セブン2019年2月7日号