約100万円で市販されている望遠鏡(口径28センチ)を利用し、地球から約50億キロ離れた半径わずか1.3キロの「太陽系外縁天体」を観測することに成功したと、国立天文台などの研究グループが、28日付の英科学誌ネイチャー・アストロノミーに発表した。太陽系誕生の解明など、低予算で最先端の研究が可能となる手法を開発したという。
グループによると、関連装置などを含めた今回の費用は約350万円で、同様の国際プロジェクトの約300分の1。「工夫して最先端の成果を得た。『小よく大を制す』だ」と強調している。
太陽系外縁天体は、太陽から最も遠い惑星の海王星より外側に分布する。冥王星など比較的大きなものもあるが、非常に暗いため半径1~10キロ程度の天体は、大型望遠鏡でも観測されていない。小さなものは約46億年前に太陽系が誕生した際、地球などの惑星を作る材料になった天体と同じと考えられる。その軌道や密度を調べれば、太陽系誕生の謎に迫れる。
グループは沖縄・宮古島に2台の市販望遠鏡を設置し、約2000個の光る恒星を断続的に60時間観測。その一つが0・2秒間暗くなったのをとらえた。手前を小天体が横切ったのが理由で、小天体は地球から約50億キロ離れ、半径は1.3キロと解析。距離50キロ先の0.013ミリに当たる。
研究の中心となった有松亘(ありまつこう)京都大付属天文台研究員は「アマチュアの参加など、研究の間口を広げることができる手法だ」と話した。【柳楽未来】