ロクでなし魔術講師と黒の剣士 作:ラーメン食べたい
<< 前の話 次の話 >>
キリトside
皆さんは目を血走らせ、修羅のような表情をして、口にパンをくわえた男が叫びながら全力疾走して自分達の方に向かってきたらどうするだろうか?
「うおぉぉぉぉ!!! どけぇ!!! ガキ共ォォォォォ!!!!!!!!!!!!」
「えぇっ!? 」
「……は? 」
「きゃあっ!? 」
俺たち3人の答えは唖然とするか、悲鳴をあげるだった。
その間にも俺たちと全力疾走しているグレンとの距離は縮まっていく。
さすがにまずいと思った俺は咄嗟にシスティーナとルミアの前に出て2人を守ろうとした。
だがその時、
「お、《大いなる風よ》────っ! 」
システィーナが咄嗟に腕を上げグレンに向かい黒魔【ゲイル・ブロウ】の呪文をを一節詠唱で唱えた。
さて、ここで考えてほしい。
俺は2人を守るために2人の前、つまりグレンの進行方向の真正面に出ていた。そしてシスティーナは目を瞑っていたためそれを見ていない。
その状態で真正面に【ゲイル・ブロウ】を撃ったらどうなるだろうか。
答えは簡単。
「あれッ!? 俺、空飛んでるよッ!!? 」
「な、なんで俺もーーーッ!!?」
システィーナの手から猛烈な突風が巻き起こりグレンと一緒に俺も天高く飛ばされる、だ。
システィーナside
「あれッ!? 俺、空飛んでるよッ!!? 」
「な、なんで俺もーーーッ!!? 」
私は黒魔【ゲイル・ブロウ】を放ったあと聞き覚えのない声と物凄く聞き覚えがある声が聞こえたことに困惑した。
あれ?今キリトの声がした気が……
嫌な予感が止まらない私は恐る恐る瞑っていた目を開き状況を確認する。
するとそこには、
「痛ってぇ!? テメェ、キリト! 俺の上に乗るな!」
「仕方ないだろ!? これは完全に事故だ!? 」
少し離れたところにある噴水池に着水した服をだらしなく着崩した青年とその上に乗っている私の友達だった。
「わ、わぁぁぁぁ!? 大変! システィ!? やりすぎだよ! しかもキリト君まで巻き込んでるし!!? 」
「そ、そうね。やりすぎたわ、まさかキリトまで巻き込むなんて……なんて謝ろう……」
「と、とにかく2人のところまで行こう! 」
そう言うルミアは私の手をとり噴水池に向かって歩き出していった。
キリトside
「し、死ぬかと思った……」
「あぁ、全くだ……ゲホッ「ゲコッ」」
俺とグレンは池から上がりげんなりしていた。
朝からびしょ濡れになれば誰だってげんなりするだろ……
ん?今のゲコッは何かって?
噴水池に落ちた時に水と一緒に入っていたカエルがグレンが咳き込んだ勢いで口から外に出ていっただけだ。
「キリト君! 大丈夫!? 」
「あぁ、びしょ濡れになったこと以外は大丈夫だ。」
「あ、あはは……」
「ご、ごめんなさいキリト。まさか巻き込むなんて思ってなくて……そっちの人もごめんなさい! 」
「あぁ、いや大丈夫だよ。システィーナのせいじゃないし、俺は気にしてないから。」
「俺も特に怪我はないから大丈夫だ。俺の方も悪かったな、いきなり飛び出してきたりして。」
あれ?グレンの事だからてっきりなんか難癖つけるのかと思ってたんだけど、珍しいこともあるもんだ。
「ん?」
グレンは何かに気づいた様に眉根を寄せルミアに近づいていく。
「あ、あの私の顔になにか付いてますか?」
戸惑うルミアに構わずグレンはずいずいと顔を近づけていく。
「え、えーっと……」
あぁ、なるほどグレンも気づいたのかルミアが何年か前に女王陛下に頼まれて助けた子にそっくりだってことに。いや、あれはなんか見たことあるなぁって感じかな。
そんなことを考えていたらグレンはあろうことかルミアの肩や腰を撫で回し、額を指でつつき、前髪を持ち上げ目を覗き込んでいる……
「って、何やってんだぁあああああ!!!!!!!!!!!!」
「アンタ、何やっとるかぁあああああああああああッ!!?」
その瞬間、硬直から回復したシスティーナと俺の怒りの回し蹴りがグレンの左右の脇腹にヒットした。
こいつ、なに堂々とセクハラしてんだ!
俺とシスティーナの蹴りを受けたグレンはその場で蹲っている。
だが数秒後に立ち上がりルミアに頭を下げた。
「いや〜悪かったな、ちょっと知り合いに似てたもんで」
「これが謝る人の態度かしら……」
「ま、まぁシスティ反省してるみたいだから許してあげよう?」
「むぅ、ルミアが言うなら……」
「ホント、ルミアってお人好しだな。」
俺はそう言った瞬間3つの視線を感じた。
ん?なんで3人とも俺の方を見てるんだ?
「キリト君には言われたくないかなぁ……」
「えぇ、キリトは人のこと言えないわよ。」
「あぁそうだ、こいつは超がつくほどのお人好しだからな。」
えぇ?俺そんなにお人好しじゃないと思うんだけど……
「あぁそうだ、キリトもお前らもアルザーノ帝国魔術学園の生徒だろ? 早く行かないと遅刻すんぞ? 今何時だと思ってんだ……あれ? 今俺、超教師っぽくね? 」
ん?今はまだ8時のはずだし今日の授業開始時間は8時40分だったはずだけど……
あ、もしかして……
「グレン、ちょっと時計見せてくれ。」
「ん?あぁいいぞ。ほら」
グレンが懐から懐中時計を取り出し俺に渡してくれる。
そして俺は懐中時計の時間を確認し自分の予想が間違っていないことを確信する。セリカのやつがグレンが遅刻しないようにわざと針を進めてたんだろうな。なんだかんだ言って過保護だな、ホント。
「グレン、この時計針が進んでるぞ。」
「……は? 」
「ルミア、お前の時計見せてもらっていいか?」
グレンに今の時間を教えるためにルミアにも時計を貸してもらいグレンの目の前に出す。俺、懐中時計とか持ってないからな。
「ほら、今はちょうど8時だぞ? 」
「………………」
あ、グレンがフリーズした。
「……撤収! 」
「あ、おい! グレン!? 」
俺の呼び止める声も無視してグレンは「チクショーッ!? あの女、時計ズラしやがったなぁ!? 」と叫びながら走って俺達の視界から消えていった。
「な、なんだったの?一体……」
「あ、あはは……」
「まぁ、とりあえず学園行こうぜ……」
〜学園に向かう途中の会話〜
「あ、そういえばキリト君あの人と知り合いだったの?」
「確かに、名前はグレン、だっけ?」
「あぁグレン=レーダス。俺の兄だよ(義理だけど……)」
「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!」」
まだ学園に行けてない、だと!?
あ〜早くキリトを戦わせたい〜
あ、ちなみにここでのキリトの名前はキリト=レーダスになってます。その他諸々の情報はストーリーが進むにつれて段々と明らかにしていきたいと思います。
誤字脱字等がありましたら教えてください!