名護市辺野古の新基地建設に向け、沖縄防衛局は、新たな護岸の造成に着手した。

 工事が始まったのは、辺野古崎の先端から南東に延びる全長135メートルの「N4」護岸。

 「N4」整備後に、「N4」護岸との接合部から沖合に向かって延びる「K8」護岸工事に着手する。

 全長515メートルの「K8」護岸のうち約250メートル分は今春までに実施する方針だという。途中までの整備計画になっているのは、「K8」付近に移植が必要なサンゴ群が確認されているからだ。

 22日に開かれた防衛省の環境監視等委員会は、250メートルまでなら移植しなくても工事が可能、との判断を示していた。

 だが、新たな護岸工事にはあまりにも問題が多い。

 政府は、外部の有識者でつくる環境監視等委員会から工事のお墨付きを得たとしているが、問題は、委員会が監視機能を十分に果たしているかどうかである。

 元副委員長の故東清二琉大名誉教授は、監視機能を果たせない委員会運営に疑問を持ち、昨年4月に辞任した。

 「工事ありきで他の意見は聞かない」という東さんの指摘は重い。

 毎月勤労統計の不正問題では、特別監察委員会による聞き取り調査の中立性が問題となり、厚労省は聞き取りの全面的なやり直しに追い込まれた。

 環境監視等委員会も沖縄防衛局が用意した結論を追認するだけの機関になってはいないか。検証が必要だ。

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 専門家が口をそろえて指摘するように、大浦湾の生態系は世界的に見ても貴重である。

 サンゴ礁や藻場が広がり、ジュゴンなど絶滅危惧種262種を含む5800種以上の生物が生息する。

 環境監視等委員会は、仲井真弘多元知事が埋め立てを承認する際、条件の一つとして設置を求めていたものだ。埋め立て海域の貴重な環境を保全する役割が与えられている。

 だが、県と政府の考え方の違いだけが目立ち、共通認識に立った保全対策が進められているとは言い難い。

 工事の前提となる県との事前協議が整っていないにもかかわらず、土砂投入を強行し続けているのが現実だ。

 その際、政府の解釈にお墨付きを与えているのが環境監視等委員会である。

 委員会の役割に疑念が生じている以上、国会で運営実態を追及すべきである。

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 新基地建設計画は至る所に、ほころびや、いびつさが目立つ。ほころびを取り繕うため、法令解釈を一方的に変更し、奇策を繰り出して知事権限をかいくぐり、強権的対応を重ねる。

 その強引さはあまりにも異常である。

 すべてそうだったというわけではないが、戦後保守は概して権力を抑制的に行使し、話し合いを通して合意形成をめざす懐の深さがあった。  安倍政権の姿勢は、それとは正反対である。こんなやり方が認められれば、民主主義も地方自治も成り立たない。