俺も魔法科高校に入学する   作:フリーザ様
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突入

 

 

 

一週間後の放課後。生徒会室。摩利は疲れた顔で机にダルーンとダラけていた。

 

「どうしたの摩利?随分疲れてるみたいだけど……」

 

真由美が割と本気で心配そうに聞く。

 

「いや……とんでもない奴を風紀委員に入れてしまったと思ってな……」

 

「達也くんのこと?確かに二科生なのに優秀だけど……」

 

「違う。真田の方だ」

 

「…………あー」

 

「たまたま聞いた話だが、あいつ委員長の座を狙ってるようでな……。部活勧誘期間の時は大暴れして責任を押し付けて辞職させるつもりだったみたいなんだが……それが失敗したと見るや否や、最近は直接攻撃して来てな……」

 

「へ?そ、そうなの?」

 

「ああ。今こうしてる間にも……」

 

と、言いかけたところで生徒会室のドアが吹き飛んだ。大輝が木刀で斬り込んで来たのだ。いち早く察知した摩利はなんとか躱したが、服部が巻き添えを喰らい、気絶した。

 

「すいません渡辺先輩。生徒会室のドアにゴキブリが見えたんでぇ」

 

「………こんな具合だ」

 

「風紀委員なんだからしょっ引けばいいじゃない」

 

「魔法を使ってないから我々の対象にならないんだ。それがまたタチが悪い……」

 

「摩利が魔法を使うのは?」

 

「向こうが魔法を使ってないのにこっちが魔法を使えば、『風紀委員として粛清する』となるだろう」

 

「……大変ね」

 

「まったくだ」

 

で、摩利は大輝に怒鳴った。

 

「ゴキブリでどこまで馬鹿力出してるんだお前は!完全に私を狩りに来ていただろう!」

 

「自意識過剰な人だな。俺は虫が苦手なんでね、ちょっと力入っちゃっただけですよ」

 

「火事場のクソ力どころの騒ぎじゃないだろこれ!」

 

などとギャーギャー騒ぐ中、真由美はおデコに手を当ててため息をついた。

 

「はぁ……ドアの修理費……」

 

と、つぶやいたときだ。

 

『全校生徒の皆さん!』

 

大音量がスピーカーから飛び出した。

 

「? なんだ?」

 

「さぁ……」

 

摩利の呟きに、真由美が答えた。

 

『……失礼しました。全校生徒の皆さん!』

 

「音量調整をミスったみたいだな」

 

『僕たちは、学内の差別撤廃を目指す有志同盟です』

 

「? なんだ、本当に何事だ?」

 

「放送室の利用申請は来てないし……摩利、お願い」

 

「分かった」

 

真由美が言うと、摩利は放送室に向かおうとした。だが、そのケツに木刀が刺さった。

 

「やっと、隙を見せましたね」

 

「き、貴様……」

 

「やってる場合じゃないでしょ!」

 

真由美のツッコミで、三人はとりあえず放送室に向かった。

 

 

 

 

放送室前。すでに数人の風紀委員がいた。

 

「どういう状況だ?」

 

「いや、その前に姐さんこそどういう状況なんですか?お尻に刺さってますけど……」

 

「抜けないんだ。いいから状況を教えろ」

 

と、言ったところで達也と深雪が遅れてやってきた。

 

「遅いぞ」

 

「すみません」

 

で、達也は状況確認に移った。放送が止まっているのは、電源をカットしたからだろう。まだ中に踏み込んでいないのは、扉が閉鎖されているから、立て篭り犯人は、何らかの手段でマスターキーごと鍵を手に入れたと見える。

 

「……明らかな犯罪行為じゃないか」

 

「その通りです。だから私たちも、これ以上彼らを暴発させないように、慎重に対応すべきでしょう」

 

達也の台詞に鈴音が言った。

 

「こちらが慎重になったからといって、それで向こうの聞き分けがよくなるかどうかは期待薄だな。多少強引でも、短時間の解決を図るべきだ」

 

「十文字会頭はどうお考えなんですか?」

 

「俺は彼らの要求する交渉に応じても良いと考えている。元より言いがかりに過ぎないのだ。しっかりと反論しておくことが、後顧の憂いを断つことになろう」

 

「ではこの場はこのまま待機しておくべき、と?」

 

「それについては決断しかねている。不法行為を放置すべきではないが、学校の施設を破壊してまで性急な解決を要するほどの犯罪性があるのは思われない。学校側に警備管理システムから鍵を開けられないかどうか問合せてみたが、回答を拒否された」

 

と、全員で会議をしてる時だ。ゴガシャアアアァァァァッッ‼︎‼︎と爆発音が聞こえた。大輝が木刀でドアごと吹き飛ばした音だ。

 

「「「「何も聞いてなかったのかお前は‼︎」」」」

 

と、達也、摩利、十文字、鈴音のツッコミが炸裂する。すると、真顔で大輝は答えた。

 

「いや、渡辺先輩が『多少強引でも、短時間の解決を図るべき』って言ってたんで。俺は渡辺先輩の部下なんで」

 

「うッ………!」

 

全員の視線が摩利に突き刺さる。どうやら、ここでも大輝は委員長の座を狙っているようだった。摩利が自分の失言に後悔してる間に、大輝は単独で放送室に乗り込んだ。それに少し遅れて達也を含めた他の風紀委員も乗り込み、見事に制圧した。

その様子を見ながら、十文字は摩利に言った。

 

「渡辺………」

 

「なんだ?」

 

「苦労してるようだな……」

 

「ああ………」

 

 





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