世界的に海洋プラスチック問題を意識した動きが広がっている。米スターバックスなどグローバル企業が相次いで使い捨てプラスチック製品の使用制限についてコメントしたことで、日本の消費者にも認知されるようになってきた。今は火がついた段階にすぎないが、今後、欧州での法律施行、民間企業による脱プラスチック活動の増加と、動きは一段と加速していくはずだ。

北太平洋の中央、およそ西経135度から155度、北緯35度から42度の海域――。「太平洋ゴミベルト」(Great Pacific Garbage Patch)と呼ばれる、海洋ゴミが多い場所である。海流の関係で、ここには多くのゴミが集まるとされている。

そのゴミの多くの部分を占めるのが、最近話題にのぼることが多くなった海洋プラスチックである。海の真っ只中に集まるプラスチックゴミの大半は、例えばレジ袋やストローのように陸上で発生したゴミが巡り巡って海に流れ出て、海上を漂ってゴミベルトに集まってくる。

海洋プラスチックの問題は、それが小さなサイズに砕かれ、生態系に影響を及ぼしかねないこと。しかも、現在主流のプラスチックは完全に分解されることはないため、海中に蓄積されていく一方で、海はどんどん汚染されていくわけだ。しかも人口増加や経済発展に伴って、世界でのプラスチック生産量も増え続けている。分解されずに長期にわたって海に残存することから、このままゴミが増えていくと、海洋プラスチックの総重量が2050年までに魚の重量を上回るとさえ予測されている。

この海洋プラスチックが環境に与える悪影響を問題視し、さまざまな対策が動き始めている。最も目立った動きが、レジ袋や飲料用のストロー、食品トレイなどに使われるプラスチック製品の利用中止や利用料の抑制である。例えば米スターバックスは、2020年までに、全世界の店舗でのプラスチック製使い捨てストローの使用を全廃すると表明。コカ・コーラ、ユニリーバ、ウォルマートなども、2025年までに商品のパッケージに使っているプラスチックの100%リサイクルを目指している。

海外企業だけではない。日本でも、すかいらーくホールディングスのように、プラスチック製ストローを紙製に変えるなど、脱プラスチックの取り組みを見せる企業が2018年から増えてきた。ほかにも、多方面から海洋プラスチック問題を解決する策が出てきている。2019年以降は、さらに動きが拡大・加速していくはずだ。

ゴミの埋め立てが一つの元凶、中国のゴミ輸入禁止の影響も大

陸上で使っているプラスチックが、なぜ海に?と思うかもしれない。理由の一つは、これらのゴミを埋め立てに使っていることである。それが次第に海に流れ出る。ほかにも、ポイ捨てゴミなどが川から海に流れ出ることもある。日本に関しては、東日本大震災に伴う津波で、膨大な量のゴミが海に流出したとされている。

流れ出たプラスチックが、5mm以下の大きさのマイクロプラスチックと呼ばれるゴミになると、魚や動物プランクトンが食べてしまう危険もある。人間の立場からすると、最終的に人が食べる魚となって戻ってくることだって考えられる。

こうしたことから、特に欧州を中心に問題意識が高まり、2018年6月のG7(先進7カ国首脳会議)では「海洋プラスチック憲章」が採択された。そこで打ち出された方針は、「2030年までにすべてのプラスチックを再利用や回収可能なものにする」というものだ。

さらに欧州議会が2018年10月、海洋生物保護のため使い捨てプラスチック製品の使用を禁止する法案を可決した。これを受けてフランスは2020年1月から使い捨てプラスチック製のカップや皿を禁止する。ほかのEU(欧州連合)加盟国でも、近い将来、この法律が施行される。

これほど海洋プラスチック問題に対する意識が高まった背景の一つとして無視できないのが、2017年末から、中国がゴミの輸入を禁止したこと。中国では従来、原料の資源を補うなどの目的で、外国から資源ゴミを買い取り、リサイクルして使ってきた。ただ、輸入したゴミの多くは必ずしも質がよくないため、リサイクルできる割合は高くない。中国国内の環境汚染を加速させることにもなるため、輸入を禁止することにした。日本を含め、中国にゴミを輸出していた国々は、自前で処理することを余儀なくされ、環境保護に力を入れ始めたわけだ。