在留カード偽造摘発の瞬間、急増の背景は
日本で働く外国人には就労資格などを示す在留カードの携帯が義務づけられていますが、今、このカードの偽造が急増しています。今回、JNNのカメラは、カード密造拠点の摘発の瞬間をとらえました。
中華料理店が30店舗もひしめくJR西川口の駅前。埼玉県の中で、川口市は最も中国人が多く、駅前は今や“チャイナタウン”とまで呼ばれています。外国人が増え、活気づく一方、今月11日、街の一角にあるマンションでは、不穏な動きが・・・。ここで「在留カード」が偽造されているとの情報から、東京入国管理局が強制調査にのりだしたのです。
「入国管理局の職員が部屋に入っていきます」(記者)
今回、JNNのカメラは、摘発の一部始終をとらえました。
ワンルームの狭い部屋を、入管Gメンたちがくまなく調べています。奧にいたのは中国国籍の男。
「ビザは?」(調査官)
「ビザない」(中国国籍の男)
「在留カードは?」(調査官)
「ない」(中国国籍の男)
男は不法残留をしていました。部屋の中からは、他人名義の偽造在留カードが次々と・・・。外国人がどんな資格で日本に滞在しているのかなどを示すこのカード。表面には、光の角度によって文字などが浮かびあがるホログラムも施されています。
「この“ホロ”すごい。ゆらゆらゆれる“ホロ”。 色は変わらないけどね。“ホロ”は入っているね」(調査官)
男は、中国からホログラムやデータの入っていない生カードなど、必要な材料を取り寄せていました。そして、パソコンとプリンターを駆使して、ハサミや接着剤で器用にカードを偽造していたのです。
調査官が1枚いくらの報酬で偽造しているのか聴くと・・・
「何元なの?」(調査官)
「70元」(中国国籍の男)
1枚70元、日本円にして1000円の報酬をもらっているといいます。末端流通価格は2万から3万円だといい、男の手数料との差額は背後にある組織に流れているとみられます。
「分かることがあったら言ってください」(調査官)
「頭が悪い、分からない」(中国国籍の男)
部屋の中からは、在留カード以外に偽造された年金手帳までも見つかりました。
「時刻は23時過ぎです。男を連行していきます」(記者)
その後、押収品を分析したところ、わずか2か月ほどの間に千数百枚もの在留カードが偽造されていた可能性が出てきました。
今、外国人技能実習生がこうした偽造カードを入手して失踪する事例が増えているといいます。実習生は、そもそも来日の際に、ブローカーが介在し、多額の借金を背負わされることが多いといいます。そして、来日後は、過酷な労働環境で安い給料のまま働かされ、暴力を受けるような例もあります。こうした実習生達が、実習先から逃げ出す際に偽造カードが使われ、どこでも働ける資格があると偽って就職するケースが相次いでいるのです。
東京入管によりますと、こうした違法な人材斡旋で荒稼ぎしている組織もあり、こうした組織が偽造カードに関わっている可能性があるといいます。
そしてこの問題は、4月に施行される改正入管難民法でも何ら変わらないと専門家は指摘します。
「もちろん国内における労働環境をきちんと整備する、不法なことをさせないということもありますが、大事なのは送り出し国で多額な費用をとられないように規制をかけることだと思うが、全く政府が規制をかけようとしない。ここに大きな問題がある」(指宿昭一弁護士)