ペロロンチーノの冒険 作:kirishima13
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―――ナザリック地下大墳墓 玉座の間
「さあ、次のセリフよ」
『アルベドよ、愛している』
「くふー!いいわ、いいわよ!次のセリフ行きましょう」
『ただいま、アルベド』
「はい!おかえりなさいませ!モモンガ様!ご飯になさいますか?お風呂でしょうか?それともわ・た・し?」
『もちろん、お前だともアルベド』
「くふー!モモンガ様ー!」
『あの・・・・・・アルベド様。そろそろ職務に戻らせていただけないでしょうか、データクリスタルの整理が終わってないのです』
「ちょっと駄目じゃないパンドラズ・アクター。まだ全部セリフが終わってないわ」
そこへ扉を開き、スーツ姿の悪魔が現れる。他の階層守護者が後ろへ続いて入ってくる。
「何をやっているのかね。アルベド」
「あら、デミウルゴス。あなたたちが集まるまで時間があったからモモンガ様のお声を聴かせていただいていたの」
「モモンガ様の声?」
アウラが不思議そうに首を傾ける。
「そうよ。宝物殿の領域守護者パンドラズ・アクターは至高の御方への変身ができるの。それでモモンガ様に変身してもらってあーんなセリフこんなセリフもメッセージで・・・・・・くふふふ」
「なにそれー!ずるいー!あたしもぶくぶく茶釜様のお声が聴きたいー!」
「ぼ、僕も・・・・・・」
「イイ加減ニシロ。我ラノ存在理由ヲワスレタカ」
「まったくだ。コキュートス。私たちは至高の御方のお役に立つべくここに在るのだよ?」
「だって!だってしょうがないじゃない!モモンガ様に会いたいんだもの。ああ。モモンガ様に会いたい、モモンガ様に会いたい、モモンガ様に会いたい」
そう言いながらアルベドは地面を転げまわる。
「守護者統括殿はお疲れのご様子だが・・・・・・本日集まってもらったのは他でもない。今後の我らの行動指針を決めておきたいと思ったからだ」
「こ、行動指針ですか?」
「そうだとも。マーレ。現在ナザリックには至高の御方としてペロロンチーノ様がいらっしゃる。その御方のためにどうやって我らがお役に立ってゆくのかということだよ」
「そう言えばペロロンチーノ様は?シャルティアも来てないけど」
「ペロロンチーノ様は人間の町に赴かれた。おつきの者としてシャルティアがついていったよ」
「なにそれずるいー。あたしもペロロンチーノ様のお役に立ちたいのに!」
「で、でもなんで人間の町なんかに行かれたんですか?」
「それは分からない。あの御方は他の至高の御方々がおられたときから変わっておられたからね」
「それよ。至高の御方のことを悪く言う気はないけど、ペロロンチーノ様にこのナザリックを管理してゆけるのかしら」
転がりながら戻ってきたアルベドが立ちあがる。
「アルベド。至高ノ御方ヲ疑ウナド不敬ダゾ」
「いや、アルベドの言うことももっともだとは思う。だがそれのどこに問題があるのかね?」
「ナンダト?」
「いやね、確かにモモンガ様は偉大な御方だ。だが、それ故に一人で何でもなされてしまわれる。現にナザリックの管理も我らに頼ることなくお一人でなされていた。だがペロロンチーノ様なら?ペロロンチーノ様の手となり足となりお役に立てる機会に恵まれることだろう」
「なるほどねー。あたしたちの出番ってわけね」
「そこでだ。先日、ペロロンチーノ様からお聞きした話を皆に伝えておきたい」
「ホウ、ペロロンチーノ様ハ何ト」
「『フラグを立てろ、王道を行く。』そんな話をされておられた」
「フラグ?王道?どういう意味?」
「ペ、ペロロンチーノ様の言ってることってたまによくわからないよね」
「フラグとは旗のこと。つまりペロロンチーノ様はこうおっしゃっられたいのだよ。世界中の
おおーっ、と守護者たちから感嘆の声が上がる。
「ナルホド、ソレハ確カニ至高ノ御方ラシイ考エダ」
「ぼ、ぼくも頑張ります!」
そこに、今まで黙っていたサキュバスが口を挟む。
「ちょっと待って。その世界の王者とは誰のことを指すのかしら?」
「え?ペロロンチーノ様じゃないの?」
「モモンガ様を差し置いて?」
「ではアルベド。どうしたいのかね」
「そんなの決まってるじゃない。モモンガ様を探すのよ!きっとこの世界のどこからにいらっしゃるはずだわ」
「なぜそう思うのかね?」
「だってそうじゃない。モモンガ様はペロロンチーノ様がいらっしゃる直前までいらっしゃったのよ!私たちが今やることはモモンガ様を探すことよ!」
その言葉にほかの守護者が黙り込む。それは怒りを含むものであった。
「あら、どうしたというの?」
「分からないのかい?アルベド。では聞かせてもらおう。なぜ、モモンガ様なんだい?」
「それはモモンガ様が至高の御方のまとめ役として・・・・・・」
「我々はね、なぜモモンガ様だけなのか、と聞いているんだよ」
「あ・・・・・・」
「私たちが自分の創造主に会いたいと思っていないとでも言うのかい?」
「そうだよ、あたしもぶくぶく茶釜様に会いたい!」
「ぼ、ぼくもそう思います」
「当然ダ。武人建御雷様ニ会イタイトモ」
「モモンガ様に会いたいあまりに気が付かなかったわ・・・・・・守護者統括失格ね・・・・・・」
「まぁ、君の気持ちもわかるとも。そのためにもペロロンチーノ様の提案は良いかと思うがね。世界をナザリックの旗で埋め尽くすことは至高の御方々を見つけることにもつながるだろう」
「分かったわ。その方針には賛成よ。それで、周辺の国の状況とかは調べているの?」
「もちろんだとも。まずそこから説明しよう。このナザリック地下大墳墓のある場所はリ・エスティーゼ王国という国の中にあるらしい。ペロロンチーノ様が訪れてる国だね。この国ははっきり言って魅力がない斜陽の国だ。貴族と王族が争い、そして国民は重税に苦しみ国庫は破綻寸前。隣国のバハルス帝国との戦争を毎年繰り返しているにも関わらず危機意識がまったくない。また、強者の噂もない。この国最強と言われている戦士長も最近亡くなったとのことだ。至高の御方がいる可能性は低いだろう」
「次に、バハルス帝国。鮮血帝と呼ばれるものが率いている国だ。人間にしてはなかなかの名君で国民の支持も高い。いずれ王国を飲み込むだろうね。王国に比べても強者が多いらしく、この世界では最高位の魔法詠唱者がいるとのことだ。まぁ我々の敵ではないだろうがね」
「スレイン法国。先ほどの2国とエ・ランテルを境に国境を持つ国だ。法国の名の通り神を信仰している国で、六大神というらしい。この六大神についてはその強さ、その現れ方から私の予想では至高の御方と同じくぷれいやーであると思われる」
「ぷれいやー?無謀にもナザリックに攻めてきたあの?」
「そうだよアウラ。もしくは至高の御方か、だ。六大神の一人は髑髏の顔をしてたらしいという情報もある」
「モモンガ様が!?」
「それは分からないが調べてみる価値があるだろうね。ただし、その血を引く強者や強大なアイテムを持っている可能性も見て警戒しておくべきだろう」
「次にアーグランド評議国。5匹とも7匹とも言われる竜が評議員として支配している国と言われているが真偽は不明だ。ここは様々な種族が暮らしているらしいが強さも不明。至高の御方がいる可能性も考慮する必要があるだろう」
「そして、聖王国。ここは人間の国らしいが六大神とは別の神を信仰しているらしい」
「らしいって?調べられなかったの?」
「ああそうだ。強力な探知阻害が国全体に張り巡らされていて情報の収集は困難だ。こちらが探知防御対策をしていなかったら手痛い打撃をくらっただろう。長らく鎖国状態にあるらしく周辺国家との国交も皆無。侵入させたしもべたちは帰ってこない」
「なんかむかつく、滅ぼしちゃおうか」
「私ガ先鋒ヲ努メヨウ」
「まぁ待ちたまえ。まずは情報収集だ。敵対的交渉のみが我々の手段ではないのだからね」
「それで、どの国にモモンガ様がいるの!?」
「アルベド、また先ほどの繰り返しをするつもりかい」
「そ、そうね。至高の御方々をね」
「デハ順番ニ潰シテ行クカ」
「まずは情報収集だといっただろう。それに隠れた強者がいないとも限らない。目立つような殺傷行為は最低限にしておこう」
目立たないように殺す分には構わないとはあえて言わないでおく。
「えー、めんどくさいなー。さくっと皆殺しにしちゃえばいいのに」
「シャルティアみたいなことを言わないでくれアウラ」
「そういえばあの子は大丈夫かしら」
「まぁペロロンチーノ様がいらっしゃるのだし、大丈夫だろう」
「本当に?」
◆
エ・ランテル。3重の壁に囲まれたリ・エスティーゼ王国城塞都市である。隣国のバハルス帝国と国境を接する年であり、国境であるカッツェ平原では毎年のように王国と帝国の戦争が行われていた。その都市の中をペロロンチーノとシャルティアは歩いていた。ペロロンチーノは種族スキルである擬態により人間に、シャルティアは赤い瞳をコンタクトで隠し、牙を研いで人間に扮していた。試行錯誤の結果、黒髪の美男子へと変態を遂げた変態と、大人になりかけた絶対の美少女の組み合わせは周囲の目を釘付けに・・・・・・しなかった。
なぜなら彼らは不可視化により周囲に認識されていないからである。
「不可視化を見破る能力者はいないみたいだな」
「まったく、この程度も見破れないとは人間とは本当に劣った生き物でありんすねぇ」
「こうしてばれないということは・・・・・・いけるな」
「はい、ペロロンチーノ様」
そう言って二人は笑う。不可視化でバレなければやることなど決まっている。透明化はエロゲの定番の一つである。透明化していたずら、お触り、×××。時間停止ものとともにエロゲ界の定番となっているシチュエーションである。そして最初に行くとしたらそれは風呂だろう。つまりNO・ZO・KIである。
「行くぞシャルティア。行動を開始せよ!」
◆
ペロロンチーノは公衆浴場へと侵入し、後悔していた。エロゲでは可愛い子しか出てこない。いや、可愛くない子が出てきたとしても攻略対象ではないことがほとんどだ。だが、侵入した公衆浴場には年齢も体形も対象外のおばさまたちが集まり井戸端会議の真っ最中であった。
「俺のグロ耐性がどんどん上がっている気がする・・・・・・」
「それはいいことなんでありんすか?」
「ああ・・・・・・とてもいいことだよ・・・・・・とても・・・・・・ううっ・・・・・・」
精神的に萎え切り真っ白になったペロロンチーノは、不可視化の目的をエロから情報収集へと切り替えた。町の人々の何気ない会話から思わぬ情報を得ることもあるだろう。そして、この世界での常識を知らないペロロンチーノには常識を得るチャンスでもある。つまり、不可視化による覗きに失敗した結果の現実逃避である。
しかし、その中から思わぬ情報を得る。なんとこの街には冒険者組合というものがあり、登録することで冒険者になれるという。冒険者、どのような仕事か分からないがこれにはユグドラシルで冒険を繰り返したペロロンチーノの心が揺さぶられる。
冒険をしてみたい。ただし、今ペロロンチーノは装備も初期装備たる布の服のみの状態である。そこで最低限の装備だけでも揃えようと考える。長距離爆撃を得意とするペロロンチーノのメイン武器はもちろん弓である。しかし、彼の装備はおそらく宝物殿にあり、取り出すことは不可能だ。そのため、街で見かけた道具屋で狩猟用の木の弓を買うことにした。ユグドラシル金貨を代価として出すと店主は驚いた様子を見せたが、お釣りをよこす。金としての価値があり特別に使わせてくれるとのことだった。
かつての仲間たちと世界中を旅をした思い出。それが蘇りペロロンチーノは冒険者組合へと向わ・・・・・・なかった。
情報収集の結果、この街には複数の娼館があることが分かったのだ。これは行ってみるしかないとシャルティアと連れ立って建物の扉をくぐるのであった。
◆
ペロロンチーノは鉄格子の中にいた。
「あのねぇ、あんた。お金払えば何でもしていいってわけじゃないんだよ?」
「はい」
正座である。それを見たシャルティアが相手を睨めつけようとするがペロロンチーノの手がその頭を撫でる。途端にシャルティアの頬が緩み目を細めてペロロンチーノの手に頭をこすりつける。
「ふにゃーん」
「女の子連れなのに、その子も含めて3人でとか。おかしな衣装着せようとしたりとか。それに
「ちょっと上級者すぎましたか?」
「しっぽも折角用意したでありんすのに」
「そういうことじゃなくてね。お店から苦情も出てるんだよ。おかしなことをさせようとする人がいるって」
「結局やらせてくれませんでした」
「当たり前だ!」
「エロゲでは普通です。もちろんノーマルはいい。いいんですが、それだけじゃ物足りなくなる時もあるでしょう!いいんですか娼館がそんなありきたりで!」
衛兵の目が生暖かいものに変わる。
「あー、はいはい分かった分かった。分かったからもう名前書いて帰っていいよ。ただし、もうあの店に近づかないこと。いいね」
◆
「出入り禁止になってしまったな」
「ペロロンチーノ様。なんで人間なんかの言いなりになってたんでありんすか?力づくで言うことを聞かせればいいでありんせんか?」
「前も言ったけど、それをやったら今後フラグが全部折れてしまうじゃないか。ということで、一般人への暴力は禁止だ」
「一般人でなければいいんでありんすか?」
「まぁ、悪人になら・・・・・・いいかなぁ。うん、悪人にならいいことにしよう」
「かしこまりんした。ふふふ、悪人を捕まえるのが楽しみでありんす」
◆
冒険者組合の扉を開いで入ってきたのは背中に弓を背負った黒髪の美男子、そしてボールガウンを着た美少女の二人組であった。冒険者組合におよそ似つかわしくない二人組。依頼者か、と周りの者が観察する中、黒髪の男が受付に声をかける。
「あの、冒険者になりたいのですが」
「え、あの、お二人・・・・・・ですか?」
「はい、私とこの子の二人です」
「かしこまりました。では手数料をいただいたのち手続きとなります。最初は
受付がスラスラと説明を続けている中でふと気になることを言った。騎乗魔獣等を町に入れるには登録が必要であり、その絵を魔法で描くというのだ。もし連れているのであれば料金がいるらしい。
「あの、それはどのくらいの精度の絵が出来る魔法なのですか?」
「ほぼ実物と変わりません」
その言葉を聞き、ペロロンチーノの背中に稲妻が走り、天啓が降りる。
「あの!っていうことは裸のお姉さんにその魔法をかけるとそれが絵になって出来上がるんですか?」
「え?あの・・・・・・」
「もしかしてそれを使うとエロ本が作れるんじゃないですか!?もしかしてそういった本がすでに売ってたりしますか?技術の進歩はエロと戦争からって言いますからね!どうなんですか?お姉さん!」
グイグイ近づいてくる男に受付は完全に引いている。顔はいいがこの男は完全に駄目な人だ、逆に顔がいいせいでその駄目っぷりに拍車がかかる。その場の誰もがそう思う中、受付に救いの手が伸びる。
「おいおい、にーちゃん、人に迷惑かけてんじゃねえよ。新米冒険者の分際でよ」
ぐいっと肩に手が置かれる。
「まだ新米冒険者でさえないけどな」
「女連れでおぼっちゃんが冒険ですかー?」
ぎゃははははは、と仲間たちが囃し立てる。それを聞いてペロロンチーノは確信する。
(これは、冒険の最初でごろつきが絡んでくるイベントに違いない)
チラリと受付嬢を見る。この世界は男も女も外見の平均レベルが非常に高い。受付もペロロンチーノのストライクゾーンであった。そして、無造作に男の胸倉を片手でつかみ持ち上げる。それを見て周りの人間の目が変わった。片手で大の男を持ち上げる膂力を見て驚いたのだ。そしてそのまま放り投げた。
「おっきゃああああああああああああああああああああああああ」
絶叫は冒険者組合にこだまする。投げられた男の悲鳴ではない。男は気を失い倒れている。投げた先のテーブルに座っていた女だ。女と言っても戦士のようであり、つくところにはしっかり筋肉がついている。赤茶色の髪をしており、
「ちょっとちょっとちょっと、あんたねぇ、なんでそんなデカぶつ投げてくんのよ!ポーションが割れちゃったじゃない!」
「ポーション?たかがポーション・・・・・・」
「たかが?あたしが酒を控え冒険を繰り返し、やっと、やっと買ったポーションを!これがあればもしもの時命が助かるかもしれない、そう思って今日!今日買ったばかりのポーションを壊したのよ!弁償しなさいよ!」
「それならそっちの男たちに・・・・・・」
「いや、今のはどうみてもあんたが悪いでしょ」
周りの人間もうんうんと頷いている。
「なるほど、これは・・・・・・」
(お金で払ってもいいがそれでは話が終わってしまう。彼女と会うことはもうないかもしれない。ここは嫌われてでも会う機会を残すべき)
「は?なにぶつぶついってんの?」
「分かった、弁償しよう」
「あら、素直じゃない。じゃ、お金出して」
「金はない。体で払おうじゃないか」
そう言って服を脱ぎだすペロロンチーノの顔に拳がめり込んだ。
◆
盗賊団のアジトの調査。それが今回ポーションを壊された女、ブリタたちの冒険者パーティの受けた依頼であった。そしてそのパーティに二人の
「おう、あんたこれも持ってくれ」
「分かりました」
ズシっと重いリュックが持たされる。
「これも持ちな」
「おう、これとこれもな」
「体で返すとか偉そうなこと言って持てないとか言わねえよなぁ」
「そりゃそうだ、あんだけでかい口叩いたんだからよ、ぎゃはははは」
あり得ないほどの大量の荷物が次から次へと目の前の置かれる。彼らも冒険者組合での様子を見ておりペロロンチーノ達にいい印象を持っておらず、嫌がらせをしようというのだろう。しかしそれは悪いこととは言えない。態度の悪い新人を教育するのは先輩冒険者の務めだ。
しかし、それを当の新米冒険者はいとも簡単に持ち上げた。
「ペロロンチーノ様。わらわが持ちんす。至高の御方が荷物持ちなど」
「このくらい荷物にもならないからいいさ。それに新米冒険者らしく冒険を楽しもうじゃないか」
かつての仲間たちの冒険を思い出し、ペロロンチーノは実際楽しんでいる。
そう言ってニコリと笑う男に周りが黙り込む。これだけの重量を軽く持ち上げるだけで相当の膂力だ。大口を叩くだけはある。もしかしたら自分たちの上をたやすく超えていくほど存在なのではないかと。
◆
《死を撒く剣団》
普段は傭兵団を名乗っているが戦争などがないときは盗賊として人々から金品を巻き上げ生活の糧としている。人数だけは多く、対処に困った人々が冒険者組合に討伐の依頼をだしたのだ。
アジトらしき洞窟を発見し、注意しつつ冒険者たちが取り囲む。
「わらわたちは何もしなくていいんでありんすか?」
「荷物持ちとしてきたからな。こういう討伐クエストっていうのを見るのも楽しいかもしれない。見物させてもらおう」
伝令係として待機しているペロロンチーノ達に何かしろと言うものはいない。ペロロンチーノ達の役目はピンチの時に助けを呼びに走る役だ。逆に前衛に出たほうが周りに迷惑をかけるだろう。それにペロロンチーノはこの世界の人々の能力にも興味があるし、戦い方はチームワークにも興味がある。ワクワクしながら離れたところで様子を見ていたのだが。
しばらくして冒険者に気づいたらしき盗賊たちと戦闘がはじまる。練度は冒険者たちのほうが高いが、人数は盗賊団のほうが圧倒的に多かった。人数の多さに苦戦をしているのを見てペロロンチーノはシャルティアに指示を出す。助けは求められていないし、救援も要請に行くようにも指示はない。だが、一時でもチームを組んだ以上このまま見過ごすのは心が痛む。
「シャルティア。ちょっと手伝ってやれ」
「かしこまりんした!お任せください!」
創造主からの命令だ。シャルティアは気合の入りまくった声をあげる。ここはいいところを見せねばなるまい。何しろペロロンチーノ様が現れて初めてお役に立てる機会をいただいたのだ。
そして、シャルティアが魔法が発動する。この世界では存在さえほとんどの者が知らないほどの強大な魔法を。第10位階魔法。
《
周りに盗賊が血の雨となって降り注ぐ。冒険者たちはそれを呆然と見ていた。何が起こったというのか。ありえない。突然目の前の人間達が爆発したのだ。そして何より感じる恐怖。
そこに笑い声が響き渡る。
「あは、あははははははははは。花火ぃ・・・・・・綺麗ぃいいいいいい」
後ろを振り向くとボールガウンを着た少女が目が真っ赤に染めて笑い声をあげている。その口は耳まで裂け、注射器のような歯が口の中から除く。
「ちょ、シャルティア!?血の狂乱か!?しまった忘れていた!」
彼女の相棒の男が慌てている。そして少女があり得ないほどの跳躍を見せ前に躍り出る。
「血ぃいいいい吸ってもいいよねえええええ」
血生臭い息を吐きながら
「や、やめろシャルティアあああああ」
◆
血の海が出来上がっていた。敵も味方もなかった。肉片が飛び散り血の中に浮いている。盗賊団のアジトからはその後も増援の男たちが出てきていた。自信満々で刀を持ったブレ何某とかいう男が出てきたりしていたが、今はビクンビクンと痙攣し干からびたレッサーバンパイアのなりそこないとなっている。ペロロンチーノは必死にシャルティアを止め冒険者たちを守ろうとした。しかし・・・・・・
「くぅ・・・・・・無理だった・・・・・・せめて一人だけでもと思ったのに・・・・・・」
頭や腕に噛みつかれた痕が残っているペロロンチーノは項垂れる。さすがに自身もレベル100とはいえ、同じレベル100のシャルティアからの攻撃に身を挺していたのだ。無傷で済むわけがない。その目の前に元の姿に戻ったシャルティアが土下座していた。
「わ、私はとんでもないことを・・・・・・至高の御方に手を挙げるなど・・・・・・この命を持って償います!」
そう言ってスポイトランスを自分に向けるシャルティアを慌てて止める。
「ま、待て待て。シャルティアお前が悪いわけじゃない。これは血の狂乱を忘れていた俺のミスだ」
「ペロロンチーノ様・・・・・・」
「でもまぁ今後のために言っておくけど殺すのはなるべくなしにしような」
「かしこまりんした」
「それをなるべく血を浴びないようにするんだぞ。そのスキルはお前の切り札なんだからな」
「切り札でありんすか?」
「そうだ。お前がスキルも魔法も使い切った時、それでも倒せない相手がいるときこそ、血の狂乱を使うべき時だ。その時は頼りにしている。だから普段は抑えるんだぞ」
「ペ、ペロロンチーノ様ぁ」
頼りにしている、その言葉がシャルティアの頭の中を木霊する。
「シャルティア、お前のすべてを許そう」
シャルティアがペロロンチーノを見上げ、涙が頬を伝って落ちる。
「ほらほら、泣くんじゃない。美人が台無しだぞ」
そう言ってハンカチでシャルティアの涙をぬぐうが、周りが血の海の中ペロロンチーノは気を失いそうになっていた。
(しかし、盛大にやってしまった・・・・・・やばい・・・・・・どうやって冒険者組合をごまかそう・・・・・・)