俺も魔法科高校に入学する 作:フリーザ様
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帰宅時間。放課後。校門の前。達也、深雪、大輝の前では明らかに穏やかではない空気が流れていた。
「お兄様……」
「謝ったりするなよ、深雪。一厘一毛たりとも、お前のせいじゃないんだから」
「や、明らかにお前の妹のせいだろ。こうなる事なんて誰もが想像できたでしょ」
大輝がグサッと言うと、ギロリと睨む達也にシュンっとする深雪。その3人の目の前では論争が起きていた。
「いい加減に諦めたらどうなんですか?深雪さんは、お兄さんと一緒に帰ると言っているんです。他人が口を挟むことじゃないでしょう」
と、啖呵を切るのは美月だ。
「別に深雪さんはあなたたちを邪魔者扱いなんてしてないじゃないですか。一緒に帰りたかったら、ついて来ればいいんです。何の権利があって2人の仲を引き裂こうとするんですか」
「僕たちは彼女に相談することがあるんだ!」
「そうよ!司波さんには悪いけど、少し時間を貸してもらうだけなんだから!」
「や、悪いとか言っちゃってる時点でダメでしょ……」
と、深雪のクラスメイトの男子と女子の台詞にボソッと呟く大輝。大声で言わないのは、ビビってるからではなく、面倒なことになるからだ。
「ハン!そういうのは自活中にやれよ。ちゃんと時間が取ってあるだろうが」
「相談だったらあらかじめ本人の同意を取ってからにしたら?深雪の意思を無視して相談も何もあったもんじゃないの。それがルールなの。高校生にもなって、そんなことも知らないの?」
「うるさい!他のクラス、ましてやウィードごときが僕たちブルームに口出しするな!」
「や、声の音量半端ないのってむしろそっち」
また呟く大輝。
「意見があるなら堂々と言ってきたらどうだ?」
「俺は面倒ごとはごめんだ。どーせ黙ってりゃすぐ終わるんだから。ほっとくのが一番だろぃ」
「それもそうか……」
すると、美月がさらにヒートアップする。
「同じ新入生じゃないですか。あなたたちブルームが、今の時点で一体どれだけ優れているというんですかっ?」
「……どれだけ優れているのか、知りたいなら教えてやるぞ」
「ハッ、おもしれえ!是非とも教えてもらおうじゃねぇか」
美月の台詞に向こうの男子生徒が反応し、レオが挑戦的に言う。
「だったら教えてやる!」
1人の男子生徒がCADを向ける。
「お兄様!」
深雪に言われるまでもなく、達也は右手を差し出した。だが、その前にエリカがそのCADを弾いた。
「この間合いなら身体を動かした方が速いのよね」
「それは同感だがテメエ今、俺の手ごとぶっ叩くつもりだっただろ」
「あ〜らそんなことないわよぉ」
「わざとらしく笑って誤魔化すんじゃねぇ!」
「本当よ。かわせるか、かわせないかくらい、身のこなしを見てれば分かるわ。あんたってバカそうに見えるけど、腕の僕は確かそうだもの」
「……バカにしてるだろ?テメエ、俺のこと頭からバカにしてるだろ?」
「だからバカそうに見える、って言ってるじゃない」
目の前の敵も無視して2人はギャアギャアと漫才を繰り広げる。だが、向こうの敵は機能していた。他の女子生徒が汎用型CADへ指を走らせた。
組み込まれたシステムが作動し、起動式の展開が始まる。だが、女子生徒の発動した魔法は未発のまま霧散した。
「やめなさい!自衛目的以外の魔法による対人攻撃は、校則違反である以前に、犯罪行為ですよ!」
起動式がサイオンの弾丸によって撃ち砕かれた。やって来たのは生徒会長七草真由美だった。
「あなたたち、1-Aと1-Eの生徒ね。事情を聞きます。ついてきなさい」
冷たく言い放たれた。誰も抵抗せずに硬直している。当然だ、生徒会長以外にも渡辺摩利という風紀委員長、その他風紀委員も数人いる。抵抗すれば実力行使にされることは目に見えていた。そんな中、大輝は動いた。小さく手を上げて、言った。
「あの、俺関係ないんで帰っていいですか?」
『えっ』
達也、深雪、レオ、美月、エリカが声を漏らした。
「どういう事だ?」
ジロリと摩利に睨まれても涼しい顔で返す。
「や、だから俺ただ見てただけなんで。なんでこいつらが喧嘩になったかーとか、そんなん俺知らねーし関係ないんで、てか帰ります。俺このあとあれ、用事あるんで」
ちなみに用事、とはブックオフで立ち読みだ。確かに、大輝は言い争いにも喧嘩にも参加していなかった。それを大輝以外の全員が思い出し、悔しそうな顔で大輝を睨む。が、大輝はすごく嫌な笑顔で微笑み返した。
「そうですね、確かに彼は無関係です」
そこで、達也が口を挟んだ。
「それに、今回の件は悪ふざけが過ぎた結果です」
「悪ふざけ?」
「はい。森崎一門のクィックドロウは有名ですから、後学のために見せてもらうだけのつもりだったんですが、あんまり真に迫っていたもので、思わず手が出てしまいました」
「では、そのあとに1-Aの女子が攻撃性の魔法を発動しようとしていたのはどうしてだ?」
「驚いたんでしょう。条件反射で起動プロセスを実行できるとは、さすが一科生ですね」
「うわあ……白々しい……」
大輝が呟いたが、ガンッとエリカとレオに殴られた。
「君の友人は、魔法によって攻撃されそうになっていたわけだが、それでも悪ふざけだと主張するのかね?」
「攻撃といっても、彼女が発動しようと意図したのは目くらましの閃光魔法ですから。それも失明したり視力障害を起こしたりするレベルではありませんでしたし」
「ほぅ……どうやら君は、展開された起動式を読み取ることができるらしいな」
「実技は苦手ですが、分析は得意です」
「……誤魔化すのも得意のようだ」
すると、大輝が前に出た。
「そうそう。悪ふざけだからねうん。悪ふざけ。だから俺がこうして深雪のケツ触っても、」
「キャッ」
「悪ふざけだから。こんなことにわざわざ風紀委員が出るか?」
「それは悪ふざけではすまないな」
「オイ」
気が付けば、達也が大輝の肩を掴んでいる。
「何」
「少し、話いいか?拒否権はないぞ」
「いいけど?」
「まぁ待ちたまえ。今の件について話がある。2人とも名前は?」
「司波達也です」
「真田大輝です」
そんなわけで、2人は生徒会室に連行された。
○
達也と摩利にめちゃくちゃ怒られて、大輝は外に出た。
「次はないからな」
「悪かったよ。シスコン野郎が」
校門では、もう深雪以外は残っていなかった。
「だが、礼も言っておく。お前がセクハラしてくれたお陰で事件の矢はお前に向いた。結果、穏便に済んだ」
「穏便かどうかは分からんけどな」
なんて話しながら深雪と合流した。が、深雪は達也の陰に隠れる。
「じゃ、俺帰るわ。なんか怖がられたみてぇだし」
「そうか。またな大輝」
「うい」
そのまま別れた。