魔法科高校の変わり者   作:四葉夜々
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新たな出会い

 九島烈と四葉真夜。

 嘗て最高にして最功の魔法師に夜の魔王、そんな2人が同じ部屋にいるのだ。葉山はもちろん他の護衛も緊張しきっている。

 そんな中………

 

「ねーそこの君、ポップコーン買ってきて、イチゴミルク味」

「は、え?」

「………離れて良い?」

「………そうね、烈先生とも話したいことがあるし、今日は自由にして良いわ。後、余計な鼠に捕まらないように変装は解いて良いわよ」

「うぃ」

 

 自由行動の許可が出た羊は嬉しそうに笑うと部屋から出て行った。唯一この場でノリが軽い羊が居なくなり周囲の人間はホッとため息を吐いた。

 

「……私の血筋は余所に流れていないと思ったのだがね?」

「ええ、ですから彼はあなたがたとは何の血の繋がりもありません。あったらあったで面白そうですが」

「ほう?何故かね……」

「本当は大好きな人達の側にいたい。でも、自身に流れる血がそれを許さない!そんな思いに苦悩する設定なんて最高に萌えます!」

「「「?」」」

「………奥様」

 

 烈の護衛は首を傾げ葉山はふぅ、と頭痛がするように頭を押さえる。烈も反応に困るだろうと見てみるが……。

 

「ふむ、確かにな。悪魔の王の息子でありながら祓魔師になった燐を思い出す」

「あ、ごめんなさい私雪男派です。血を引きながらその力を使えず嫉妬するのが可愛くて」

「何、あんなブラコン嫉妬野郎の何処が良いと言うのだ!?悪魔と知られ一時的に避けられこそすれ受け入れられる信頼度!」

「解っていませんね!嫉妬して、それでも兄を嫌うことが出来ない家族愛が良いんじゃないですか!アニメ版の最終回を観てないんですか!?」

「「「………?」」」

「………何の話をしているのですか」

「いや、待ってくれ葉山殿。彼の十師族だぞ?我々には理解できない高度な暗号で会話しているのかもしれない……」

 

 いえただの漫画の話しですよ、と言いたいが言える雰囲気ではない。この護衛達、真面目なんだ。本人達が真面目に2人の話を暗号だと思い込み必死に解読しようと無駄な努力をしているのに水を差すほど野暮ではない。

 

 

 

 

 

 

「さーて、久し振りの四葉家の外だ」

 

 世界一周以降外出を制限され、四葉の私有地の外を出たのは本当に久し振りだ。

 

「すいませーん、ポップコーン屋台の中に入ってるの全部ください」

「え!?」

「あ、カード使えます?」

「あ……は、はい………」

記録(インストール)

 

 カードを渡し会計をすませると羊は自作のカード型CADを取り出す。すると、屋台の中にあった全てのポップコーンが消えた。

 羊が受け取った容器の底にカードを置くとポップコーンが器いっぱい溢れた。

 羊のオリジナル魔法。分解した情報を保存して好きな時に再生させる魔法だ。

 

 

 

 

 

「お、七草出てんじゃん」

 

 ポップコーンを頬張りながら一般席に来ると空いている席を探す。ちょうどあった。

 美少女達が左右にいて、普通の感性の持ち主なら気後れするだろう。普通なら………

 

「ここ良いかい?」

「え?あ、どうぞ………」

「どうぞ……」

「ありがと。あ、食べる?」

「……ん」

「そっちの子も」

「ありがとうございます」

 

 羊は隣を座らせてくれた2人にポップコーンを渡す。羊はポップコーンは飲み物ですとでも言うように器を傾け飲み干していく。

 

「ボクの見間違いかな?ポップコーンが減ってないように見えるんだけど」

 

 左の少女の隣に座る少女──顔が似てるから姉妹なのだろう──が減っていないポップコーンを見て首を傾げる。

 

「あ!お姉さまの試合が始まるわ!」

 

 お姉さま、と言うことはこの少女達は七草かその対戦相手の妹なのだろう。見た目的に七草だろうか?

 

「十師族が何で一般席に?」

「十師族だから、と見られるのが嫌で………」

「そんな事よりほら!お姉ちゃん早速クレーを破壊したよ!」

 

 見ると七草選手はドライアイスを作り放っていく。死角にあるクレーも銃座を作り出している魔法の前では無意味だ。

 

「戦争に使ったら大虐殺が出来る魔法だな」

「「!」」

「大虐殺?」

 

 羊が何気なく呟いた言葉に、姉がそんな事をするはずがないとでも言いたいのか姉妹が睨んできた。右隣の眠そうな少女はよく解らないというように首を傾げている。

 

「魔法師が一般人に嫌われる理由は、一部の魔法師による平均収入の上昇だけでなく、怖いからだ。その力が自分達に向くのが………殺傷能力が無くとも戦場で無力化されれば死に体、簡単な魔法でも人を殺すなんて容易に出来る。お前等も自覚した方が良いぜ?その力は使い方によっては多くの命を奪うって事を………それを理解して魔法を使ってこそ一流の魔法師だと俺は思うね」

「「「……………」」」

 

 記録(メモリー)したポップコーンがなくなり最後の一つを噛み潰す羊。睨んでいた2人も、右隣の少女も何時の間にか自分の手を見つめていた。

 

「ま、あれだ……魔法で人を殺す日が来ないことを祈るんだな。人を殺すなんて、いい気分じゃない」

「……………か」

「か?」

「感動しました!」

 

 羊が試合も終わったしそろそろ去ろうとした時、左隣の少女が短く呟いたので振り向くと両手を掴まれた。

 

「わたくし、魔法とは便利な力と考えておりました!確かに人を殺せる魔法は存在する、でもわたくし達には関係ないとずっと思ってました!なのに、アナタは魔法と真摯に向き合い危険性を考える!感動しました!」

「あ、うん……解ったから手、離せ………」

 

 マルチスコープでステージを確認すれば七草選手が妹と手を繋ぐ謎の男子を見ているのが解る。ついでにマルチスコープを使っているのに気づかれたのか驚いたような顔をしていた。




葉山「ん?財布の中に入れておいたカードが消えている?」




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