魔法科高校の変わり者 作:四葉夜々
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その山に古より住まう龍はグルルと喉を鳴らし侵入者を睨む。
ここは嘗て、この龍を崇める聖地だった。何時しか人は龍を敬うことを忘れ、龍も人より餌が貰えぬと知ると人里を襲い始めた。
そんな龍を討ちに来たのは3人の冒険者。シープと言う剣を携えた男、ネオ・ナイトと言う魔法を極めし美女、リーフ・マウンテンと言う老兵。
「ふ、なかなかの威圧感だな。さすがは土地神」
「あら、今更怖じ気づいたの?」
「まさか、こいつから得られる素材と経験値、楽しみで仕方ない」
「やれやれ若い者はこれだから。取らぬ狸の皮算用、倒した後ではなく倒すことを考えろ」
僅か3人でこの世界、セブンスワールドで知らぬ者のいない最強チーム《フォース・リーフ》その戦いを一目観ようと山の下で多くの冒険者が集まっていた。
「行くぞエンシェント・レッド・ドドラゴン!魔力の貯蔵は十分か!?」
「グウ!?」
先手を取ったのはリーフ。弓を引き絞り放つ、狙いはあらゆるモンスターの弱点である眼球。とっさに首をそらし交わしたがその隙を逃す残り2人ではない。頭上から滝のように水が降り龍を濡らす。水圧によるダメージも受けすぐさま魔法を放ったネオを狙うがネオが投げたアイテムが水に当たると凍りつき動きを封じる。
「ゴオォォォォ!」
しかしそれはほんの一瞬。氷に響が入ってゆき、拘束が解ける。しかし2人は慌てない。何故なら、一瞬もあれば十分だからだ……。
「おらぁぁぁぁ!」
シープが振り抜くはエクスカリバーン。彼がこの世界に誰よりも貢献した証ともいえる聖剣。聖剣から放たれた光は龍を包み込み、消し飛ばした。
「しゃあ!イベントボス倒したぞ!」
「さすがマップを書き換える程の力を持つと言われるエクスカリバーン。いやはや、課金した甲斐がありましたな」
「そうね。あの程度、もはや私たちの敵では無いわ」
と、200インチはある大画面を眺めながらガッツポーズをとる少年と戦果を満足げに主と話す老執事、そしてふふん、と豊満な胸を張る若く見えるだけで実際ババアの女性。
何を隠そう彼らは世間が恐れる四葉家の当主四葉真夜と、その執事葉山、そして自称四十代後半、まだ五十じゃないからな!の斎藤
ついでに今やネットゲーマーでは知らぬ者のいないチーム《フォース・リーフ》でもある。
「今日は気分が良いわね。葉山さん、ついでにどっか適当に世界壊してきて」
「………無茶を言いますね」
ついでにもう一つクエストやろうぜ、とでも言うような気軽さで葉山に世界の破壊を命じる真夜。否定されたのが嫌だったのかムッとしたような表情になる。
「時にまーちゃん」
「ん?なぁによーちゃん?」
「世界壊したらもうネトゲできないんじゃ」
「ッ!?」
羊の言葉に真夜は雷でも落ちたかのような衝撃を受けた顔をする。
「だ、大丈夫よサバーを残しとけば」
「そのサバー誰が管理すんの?誰がイベント考えて新装備やモンスターのイラスト描くの?」
「えっと………葉山さん?」
「…………え?」
真夜の言葉に葉山は思わずコントローラを落としてしまう。明らかに動揺している真夜に羊はジトーとした視線を送る。
「もういっそ世界壊すのやめたら?」
「そんな!?
「ぶっちゃけ四葉の人間殆どやる気ないよ?この前も『奥様は何時まで中二病を患っているのか………はぁ、その内眼帯とかつけたりしないだろうか………てか魔王て、ワロスwww草不可避wwwww』ってハヤマンが」
「!!」
「──!!」
ギロリと真夜が葉山を睨みつけるが今はそれより羊だ。葉山には後でお仕置きするとして、羊に自分の覚悟を伝えなければ、そう、この世界全てを敵に回してもこの世界に復讐すると誓った事を…………。
「だいたい良い年した大人が何言ってんの?そもそも世間は何の非もないだろ……」
「う、いや………私だって三年前ぐらいであれ?そもそも私の復讐って既に家族がやってない?とは思ったのよ……?でもほら、甥の感情奪ったりして今更冗談でしたテヘペロ☆なんて出来ないじゃない!私にもキャラと言う者があるの!」
「うんその年でテヘペロは中々出来ないわ」
「………………」
「はぁ……まーちゃん、ネトゲと自分のキャラ、どっちが大事?」
「ネトゲ!」