お助けキャラは大変・・・なのか? 作:助っ人大好きマン
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・小林零也
「あ〜た〜ら、し〜いあ〜さっが来た。普〜通の、あーさーだー」
某侵略対抗漫画の元締めからよく流されていた歌の替え歌を歌いながらも俺はベットを出て、窓のカーテンを開けた。
あの歌ってる場面明らかに夜なのになんで朝の代名詞みたいな歌歌ってんだろうかあの自己犠牲系球体。ちなみに俺はあの漫画のパワードスーツ大好きだ。あの自身の肉体を最大限まで強化するって言うのが俺の好みにストライク。
まぁそんな事は置いといて、
時刻は午前5時。主婦と訓練された社畜さんがそろそろ起きるかなといった時間帯だ。いつもはこんな時間には起きないのだが(といっても6時前には起きる)、今日はいつもの日課もあるので普段より早めに起きたのだ。
それは一種の自主訓練。
俺の能力『化身』だが、普段の戦いで使う機会は滅多にない。この神様謹製ボディは通常悟◯とどっこいどっこいの戦闘力を誇っていて、並みの使徒相手ではなかなか使う機会がないからだ。
言うなれば俺の化身発動はいわば『
だからこその試験運用である。
「……よし。」
周囲に誰もいないことを確認し、一呼吸つく。足を肩幅の1.5倍ほど広げ、手を握る。腕を引き絞り、バッと空に掲げ、自分の思いを、形にする。
「……【精鋭兵 ポーン】」
背後から紫色のオーラが立ち上り、中世の甲冑と現代の戦闘服が上手いこと混ざり合ったかのような化身が現れた。化身が独りでに動き出し、腕を組んだ。丁度人間だったら『フンッ』と鼻を鳴らしていそうな感じである。
「スマンな、お前が一番使い勝手がいいんだ。許してくれ」
この化身は良くも悪くもオールラウンダー。秀でたところもなければ他と比べて劣るような所もない……まぁ特殊な能力、ステータスが無いのがある意味弱点とも言えるが。
『・・・・・・・・・・』
少々不満そうだったが納得してくれたようで、腕組みと解いて普段の姿勢に戻ってくれた。
(今回の目的は化身発動状態及びアームド状態での身体能力の変化……体力の消費も結構あるかもだが、やる価値はある。)
俺はいつもの
ジャブ二発からの右ストレート、回し蹴りからの裏、頭突きからの膝蹴り、鳩尾突きからの竜巻旋風脚。前にいる仮想敵が人間と仮定しての動きだ。勿論大型相手なら戦法を変える必要性があるのは言うまでも無い。
(普段よりも少し早い程度か……いい効果ではあるけど、戦略に組み込めるかと言われたら微妙…だな。)
やっぱり化身発動状態最大の魅力はなんといっても化身の固有必殺技。
【超魔神 エヴァース】なら【モータルスマッシュ】、【音速のバリウス】なら【オーバードライブ】。化身には化身の必殺技があるのだ。どれもこれも燃費最悪浪漫威力なトンデモ切り札である。
因みの
腕を腰に添えて両腕を引き、力を溜めていく。そして拳を素早く前へ突き出し―――――
「【マシンガン…ビート】!!」
一発目を皮切りに次々と拳を打ち出す。その姿はまるで『
最後の一発を振り抜き、顔に浮かんだ汗の珠を拭い……
「―――Aアームド!!」
間髪入れずに化身と一体化した。
軽く動きやすそうな鎧を身に纏い、バイザーの部分が押し上げられた状態で、俺は動き回る。家の敷地を飛び出し、近所の屋根、電信柱の上、学校の屋上、この街随一のお屋敷を―――後が怖いので飛び越える。縦横無尽に動きまくりながら、俺はアームズ体の身体能力を確認する。
(
それはほんの些細な違いだが、普段は絶対にブレない……なんなら力士の突進でも揺るがないと自信を持って言える自慢の体幹が―――僅かにズレた。
(
朝起きていたばっかで集中していなかったのもある。この前龍牙や一郎達を助けた時のエヴァースもあったのかもしれない、あいつ燃費悪いし。でもこれは……俺の怠慢だ。ったく、何が『助っ人』だ。これじゃ揚げ足をとられちまう。
守らなくちゃいけないんだ。
脳裏に浮かぶのは前世での最後の記憶。
学校の屋上から身を乗り出した俺の唯一無二の親友
頭よりも先に体が動いた。
元から陸上部だったので足には自信があったが、生涯最高と今でも言える程の速度だった。
親友の腕をガッと掴んだ。驚いた顔のアイツがその細身からは異様な筋力を発揮する。
だが一種の火事場の馬鹿力を出していたのだろう俺は、そんな親友の力を超えて尚凌駕した。
「――――――――アッ」
気付いた時には遅く、俺の身は空へと投げ出されていた。
後悔、憤怒、憎悪。そんな負の感情よりも俺の中にあったのは
救えたと、そう思った。
呆けた顔の親友へ向けた俺の顔はきっと笑顔だったに違いない。
「もう自殺なんて考えんじゃねーぞバカヤロウ。」
落ちることに恐怖を覚えなかったのかと問われたら、嘘になる。
まだ何も成していなかった。まだ何も返せてなかった。
まだ生まれたことに意味を見出せてなんかいなかった。
でも…それでも俺は――――アイツを助けられたことに感謝しつつ、
俺の齢二十歳未満の人生は幕を閉じた。
「………ッハ。らしくもないな、俺の生きてるのはここっだってのに―――――」
感傷に浸りながらも俺は目が覚めた。思い出に浸かっている間にも体は動いていたらしく家の前についていた。俺が今住んでいて守るべき場所だ。……いつの間にか、もうこんな時間か。一郎も起きてくる時間帯だし、もうそろそろ朝飯の準備を始めないと………目玉焼きとベーコンをご飯にのっけた『小林家謹製