お助けキャラは大変・・・なのか? 作:助っ人大好きマン
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◼️合流後 小林零也
「あ〜うん……何というか――――」
俺は今、非常に気不味い状況にいた。目の前には未だに唖然としている(エルミーラは低血圧なためか寝ていたが)龍牙達、まぁ無理もない。これまで〝守られる側〟だった存在が急に自分たちを〝守る側〟と化し、自分達が敵わなかった
〝起こした側〟である俺ですらこんな調子である。〝起こされた側〟のこの子達は今頃混乱の渦に呑まれていることだろう。
………取り敢えず“謝罪”かな。
「すまなかった――いつでも言えたんだが…これまで黙っていた。」
…いつか言おうと思っていたらこのザマだ。ったく、情けないったらありゃしない。
俺の謝罪によって我に返ったのが一番早かったのは、やはりというか流石というべきか、主人公である火乃森龍牙だった。
「――いや、あのままだったらきっと俺達は死んでいた。確かに一郎のお兄さんがこんなに強かったのは凄く驚いたけど――――逆に言えば、
成る程、確かにこの子は主人公だ。器が広い、とっても広い。
「それで、今助けてもらった恩を仇で返すようで悪いけど――――――」
そこで龍牙が言ったのは、ある意味では当然の質問――警戒を持った――疑問だった。
「
…成程ね。そう来たか―――――余談だがこの世界で俺や龍牙達のような異能力や人智を超えた身体能力の持ち主は(極々異例な例を除いて)、大抵は特殊な血筋だとかの
話を本筋に戻すが、そのなるべくしてなった血筋の代表例が、その身に強大な力を持つ守護神【龍神】を宿している火乃森一家だ。彼ら彼女らはその守護神の継承や異能力の研鑽の他にも、別の異能力や守護神を宿した血筋やその一族を統率、管理する役目もあるらしい(ソースは一郎)。
なので、今回異常な力を披露した俺……つまりは『これまでマークされてこなかった
一つ目は、その一族の力が門外不出とされており、その性質故にこれまで感知することが出来なかった。
二つ目は、持っているにはいるが、その出力が低く、感知されなかった。
三つ目は―――守護神は守護神でも、宿っているのは【
使途については数百年戦われ続けられているが、その詳細についてはその一切合切が不明だとかなんだとか、まぁそれだったら仲間狩りをする奴がいてもなんにもおかしくはないということで。
俺が使徒ではないということを表すには………あ、簡単だわ。
「――――俺から使徒特有の邪気(?)なものは滲み出てるか?」
「「「「・・・・・・・・・・・・・」」」」
「一応言っとくけど、これが俺の
「…すみません。失念してました・・・」
人間態になれる使徒はその類のオーラを消せることができるらしいが、俺は(身体や能力はともかくとして)正真正銘の人間である。満月を見たら狼になるわけではないし、目的意識をもって自傷をしたら十数メートルの巨人になるわけでもない。
「うん。えーっと・・・一応納得してもらえたか?」
「ごめんなさい。助けてもらったのに、無駄な詰問をしてしまって…」
「いいさ。警戒しなさすぎるよりかはよっぽどマシさ。」
無条件に信じてきた場合は軽く叱る心構えでいたし。
「師匠も、すみません。もっと早くに明かしていれば良かったんですけど…そうには行かなくて。」
俺は自身の師匠でもある蒼ヶ崎さんに話しかけた。あぁそうそう。この人に敬称や尊敬語を使っているのは、ただ単にこの人が俺の剣の師匠だからってだけだ。特別な感情はなんにも抱いてなんかいない。
「あぁ、それと龍牙
一郎は後々【魔神の器】となる人間だが、今の所は正真正銘の一般人だ。まぁきっとアイツもこう言っといた方がいいだろうしな。
…………グッ。
半ば予想通り(龍牙達に見えないように)こちらにサムズアップしてきた一郎に対して(これまた龍牙達に見えないように)手を振った…………正直、こんな状態でサムズアップしてくる一郎に苦笑いが生じざるのをえなかったが、なんとか自分の表情筋を抑え込んだ。
まぁそれはそれとして…さて、どうやって誤魔化すものか。
「で、俺がこれまでこの力を黙ってきた理由だが……まぁ、家族を守るためだ。」
「家族を?」
「あぁ。俺は見ての通りこんな力だ。ぶっちゃけ、単騎で魔神に勝てる……ここで問題だが、そんな相手を封じ込める手段ってなんだと思う?」
「一人で魔神にかてる力を持った人を封じ込める手段…………?」
「より詳しく言うと、『人間としての感受性を持った』生物がつくな。」
「―――――――――!?」
…どうやら気付いたようだ。
「解ったらしいけど、一応答えを言っておこう……いろんな手段があるけど、一番効果的かつ簡単なのは“人質をとる”ってことかな。」
「・・・成程、ね。」
「――俺は、家族が大事だ。一郎は勿論だけど、今海外にいる両親もな。」
だからこそ一郎のキャラを崩さないためにこれまで隠れて戦ってきた。
「危害を加えられるとかだったら、激昂して奪い返しに行くが……さすがに人質に取られた場合は、な?」
殺された場合、きっと俺は俺自身を許せなくなる。
「…うん。わかった。そうゆう理由なら納得するよ。」
「ありがとう。」
…ひとまずは、納得してもらえた様だ。
ハッキリ言おう、今言ったのは完全(とはいかないが)な嘘っぱちだ。まぁこの場合は「噓も方便」というのだろが。
その後、俺達は龍牙達を別れ、俺達の帰路へとついた。
◼️帰り道にて
「…一郎もゴメンな、今まで黙ってて。」
「………………」
「俺があんなに強かったら、お前の「キャラ位置」がスッゴイブレると思ってな。今までずっと黙ってたんだが…こうしてバレちまったら意味がないな。」
ったく、我ながら何やってんだか。
「……うん。確かにこんなに強い兄がいたら俺のキャラもすっごいブレッブレになるだろうし、これからの『身の振り方』が難しくなると思う―――――だけど」
「?」
なんだろうか。
「それ以上に―――――兄貴が『この物語』の
「登場人物になった?」
「兄貴って、昔から俺の『サブキャラ的行動』の手伝いをしてくれたじゃないか。」
「確かにな。」
懐かしい。一郎が不良の子のサブキャラになった時に、一郎(と不良の子)がぶっ潰した不良グループがとある暴力団の下部組織で、少々ヤバい状況になったために俺がその組織を
練って(組長諸共叩きのめし)、焼いて(犯罪の証拠という証拠を見つけ)、出した(警察に身柄ごと提出した)ことがある。
一郎には「お話で決着つけた」と言っておいたが、どうやらバレバレだったらしい。やっぱアレか、警察からの感謝状が直接家に届いたのがいけなかったか?
「兄貴は色々助けてくれたが、これまで『話の本筋』には決して絡もうとしなかった。」
「まぁそれ等は『主人公とその
「…確かにその気遣いはとても嬉しかったし、実際助かった―――だけど……悲しくもあった。」
「か、悲しかった?」
どうしようウチの弟がなんだが凄まじくシリアル(無理やりにでもボケないと)なこと言っとる……普段ボケの筈なのに。
「俺がこうして『親友業』に専念できているのは―確かに俺自身の力もあるかもしれないけど、結構な大部分は兄貴のお陰だ。」
言い過ぎだと思うが……
「コミュニケーションの練習相手になってくれたし、下準備や根回しだってしてもらった。」
…うん、確かにしたな。
「でも、兄貴は…小林零也は『キャラ名鑑』に載っていないんだ……!」
………………………。
「だからさ…嬉しいんだよ!兄貴が『お助けキャラ』という名目で『火乃森龍牙の異能系バトル』の『キャラ名鑑』の乗ったことが……!それこそ、今回のことで俺のキャラがブレたこと以上にさぁ…!!」
あー……うん…。
成る程、分かりたくはないが分かった。
「だからさ………」
「一郎、落ち着け。」
多分アレだ。イマイチ現実を直視できないからそれでちょっと混乱してんだ。
ウンキットソウニチガイナインダウン。
「家に帰ろう。それであったかいご飯を食べよう。そんでもって熱めのお風呂に浸かろう。そして最後にフカフカの布団に入ろう。その話は、明日にしようぜ―――な?」
その言葉通りに俺は暖かな食事と風呂とベットを準備し、一郎を存分にねぎらい、労わった
本来が俺が労わられる立場の筈だが……まぁいいか
作者「なんか一郎がおかしなテンションになってたな。」
零也「なにか言い訳はないか?」
作者「…特に無s………」
零也「【超魔神 エヴァース】!」
作者「あっちょぉっと待って反省すっから………………