お助けキャラは大変・・・なのか?   作:助っ人大好きマン
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主人公に自身の〝役回り〟を仄めかす回。


第3話 急な訪問。

何故か家に、火乃森龍牙がやってきた。

鍵を開く音がしたので、てっきり一郎かと思って玄関まで見に行ったらまさかまさかの龍牙だった。

 

「……なんで龍牙君が本来一郎の持ってる筈の鍵を持っているのかな?」

そんなことする筈がないのは百も承知なのだが、万が一もある。少々威圧をこめて応対することにした。

「あぁいや!誤解しないでください!?実は一郎に鍵の隠し場所を教えて貰っていて、それで一郎に「今日はウチに来ない?」って言われたので――まさか零也さんがいるとは思わなくてですね…」

 

アイツ……別に友人を呼ぶのは構わない(寧ろ大歓迎)が、ちゃんと連絡ぐらいしといてくれよ―――ハァ。しかもちゃっかり合鍵の隠し場所教えてるし。

 

「―ゴメンね。連絡もらってなかったから、少しビックリしたよ」

「――俺も、ちゃんと一郎に「家族に連絡したのか?」っていっておけばよかったかな……」

緊張が解けたからか、一人称をいつも通りの『俺』に戻した。ったく、コレからはちゃんと連絡の1つでも寄越して貰いたいものだ。でないと俺が困ってしまう。

「待たせるのも悪いね。さぁ、上がって上がって。適当だけどなんか出すよ?」

「じゃあ―お邪魔します。」

そう言いつつ彼(実は彼女)は玄関を上がってウチのリビングへと向かって行った――ってあれ確実に「何回か来てる歩き方」だな…一郎のやつ、まさか俺がいない間に?

 

 

 

◼️小林宅リビング 火乃森龍牙

 

『普通の家』

それが(火乃森龍牙)が最初に訪れた時の一郎宅の感想だった。

でも、それが間違いだったと、今回一郎の兄である【小林零也】さんが在宅している時思い知った。隅々まで整理が整っていて、まるで家の一つ一つが新品であるかのような錯覚覚えてしまった。

……いつも一郎が招いてくれた時は散らかっていた印象があったけど、アレはただ単に一郎が突散らかしてしまった後だったみたい。

 

「弟が連絡していてくればもっといいもの出せたんだけどね。急だったからこんなものしか出せないんだ。…ゴメンね?」

そう言いつつ出て来たのは、明らかに来客用かと思うようなシュークリームだった。

「気にしないでください。完璧に悪いもはこっちなので……」

(“急な”でコレってことは、ちゃんと連絡とればもっと凄いものが出て来たのかな?)

そんな事を思い浮かべてながらも、私はシュークリームを口にする。

 

 

口にした瞬間、私の体の中から私自身の守護神である【黄竜】が、急に暴れ出した。

「くっ!?う……ぐうぅ…!!!」

なんで、このタイミングで…!目の前には自分たちの事情をしならい(零也さん)がいる!!こんな所で解放しちゃ――押さえ込まなくちゃ!?

「うん――って龍牙くん!?大丈夫!!?」

シュークリームを落としてしまった音を聞き異常を察してか、零也さんが急いでこちらに駆け寄って来る。【心配だ】という言葉をそのまま貼り付けたかのような顔で、急に苦しみだした私に困惑していた。

 

きっと零也さんは今すごく混乱しているのだろう。弟の友人が急に苦しみだしたと思ったら、その周りから黄金のオーラがかかっているのだ。

「大丈夫かい!?急に何なんだこれは……ッチ。これが【黄竜】の暴走ってやつか?

何事かを呟いた後に、零也さんは私を真っ直ぐに見つめて来た。

 

「…龍牙君。君たちの()()は既に一郎から聞いている。」

「………っえ?」

私達の事情を…知って、いる?一郎から?

あぁそっか。お兄さんだから、聴いてても、無理は、ないか――!

「それを知った上で、君に【とある事】を頼みたい。」

ぐぅ。ダメだ!何故かいつもよりも守護神の抵抗が………クッ!!?

 

 

「この事はオフレコで頼む。」

 

 

 

◼️小林宅 小林零也

俺の中にある数多のオーラ…化身たち。

神様の特典で貰った能力のうちの一つだが、今は凄く重宝している(日常生活以外)。そんな化身たちの一つを呼び出し、化身が顕現するギリギリまで表に出す。まぁ…多分これ目から見えてると思うけど―――まぁいい。さて、持ち主を困らせてるアホ龍を叱るとしますか。

 

 

 

零也さんが私の肩を掴み、こちらの眼をしっかりと見据える。余談だが、一郎と零也さんの目はやや違う。一郎の目が相手の警戒心を無くす『丸っこい目』に比べ、零也さんの目は所謂『吊り目』だ。でも結局兄弟だから目が似ているのは変わりないので、一郎に密かな恋心を抱いている私はつい赤くなってしまう。そんな事を知ってか知らずか、零也さんはそのまま()()()()()()()()()かのように目を細め、言った。

 

「『依り代に迷惑かけるとは、随分と失礼な【守護神】だな?』」

 

――――ゾクリッ

 

その時、私の背筋は縮み上がった。

普段のホンワカとした空気とは明らかに違う雰囲気、いまにも相手を射殺す程の眼光。

そして…その目の奥から垣間見える真っ白な()

私に宿って、ついさっきまで暴走()()()()()()()()【黄龍】と同等――もしかしたらそれ以上―そう思ってしまうには十分な程に、その竜は力強かった。

 

――そして、恐かった。

 

「…どうやら大人しくしてくれたみたいだね。」

そうニコリと笑った零也さんからは、先ほどまでの空恐ろしい気配は微塵も感じられなかった。私の【黄龍】はすっかり零也さんに萎縮してしまったのか、もう既に私の中に引っ込んでいた。

 

「あ、あのっ!零也さん今のは一体―――」

「僕は“オフレコ”って言ったよ?この場所で君の守護神の暴走なんて()()()()()()()、君は()()シュークリームを落としてしまった…何か間違いがあるのかい?」

そう言いつつこちらを振り返った零也さんの目は「話したらどうなるかわかってるよね?」と言わんばかりの目をしていた。

「……分かりました。」

ここは一旦引きさがろう。私がそう思った時に―――

 

ピンポーン

 

「龍牙いるかー?」

一郎が帰って来たようだ。

「オイ一郎。そこに座れ。」

「えっ?どうしたってんだ兄貴――」

「うるせえ座れ。」

「あっハイ。」

普段誰であろうと敬語で接する零也さんが、珍しく使用したタメ口に弟である一郎は並々ならぬ〝ナニカ〟を感じ、そこに(正座で)なおる。

 

「……お前、容易に隠し合鍵の場所を教えるのは止めろ。」

「えぇ?でも龍牙だから………」

「じゃあせめて俺に教えろ。今親父たちからこの家を預かっているには()()()俺なんだ。家主にはそのぐらいは教えてもいいんじゃないか?」

確かにその通りだ。今回は零也さんと顔見知りだった私だったからよかったが、もし零也さんがとの面識がない人の場合。先日冷さんと互角の戦いを演じた(零也さんあんなに強かったんだとあの時は凄く驚いた)その身体能力をもって襲い掛かっていただろう。

「…それもそうだな、ゴメン。龍牙に教えたことは一切反省していないが、兄貴に知らせなかったことは反省している。」

「コイツ………」

もう処置無しのような顔をしながらヤレヤレとばかりに肩を竦める零也さん。一方言葉通りのように反省しているが、内心あんまり反省していなさそうな一郎。

 

なんで兄弟なのにここまで雰囲気が違うんだろうなぁと、この時の私は思った。

 




零也は、強い(小並感)。




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