お助けキャラは大変・・・なのか?   作:助っ人大好きマン
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基本的は4000〜5000ぐらいの文字数でやっていこうかと思っています。


第2話 道場にて。

俺は今。道場衣を着て、竹刀を振っていた――――明らかに小学生な子供達と共に。

「1ッ!」『いーち!』 「2ッ!」『にーい!』 「さ、3ッ!」『さーん!』

想像して見てほしい、小学生が沢山いる中でおんなじことをしている20歳の人を――よければ引率の人、悪けりゃ完全なる紳士(ロ◯コン)である。場所が場所じゃなかったら通報待った無しだ。

(まぁここの道場はただ単に好奇心で入ったから別に現状に不満があるわけじゃ無いんだけど…)

 

 

 

 

「よしっ!今週の稽古はここまで!注意して帰るように!」

ありがとうございましたー!

……子供の声って凄いよな、普通のテンションの時は元気が貰えるけど、疲れているときは鼓膜を多大に揺らす兵器となる。結構閉鎖空間である道場の中ではその威力は加速する。っていうかよく見たら道場の柱がちょっとビリビリ震えていた。

 

「子供はほんとうに元気だな…」

「―君も20歳だろう?単に弛んでいるせいじゃないか?」

「相変わらず容赦がありませんね、師匠(せんせい)

俺がそう言いつつ振り向くと、そこには長い髪を一纏めにしている(ポニーテール)、クールな雰囲気漂う如何にも大和撫子然とした女性が俺を少々呆れたような感じで見ていた。

 

彼女が(弟曰く)ヒロイン三巨頭の一人、近接担当の『斬舞の剣士』こと、蒼ヶ崎怜(あおがさきれい)である。俺はこの人が師範を務めている【蒼ヶ崎流剣術】を習っている数少ない内の一人だ。先ほどの光景からも分かるように、現在の蒼ヶ崎道場の平均年齢は推定10歳という『少子高齢化どこいった』状態で、15歳以上の門下生が俺含めて2人しかいないという有様である。今んところは学校や警察への指導による収入で何とか成り立っているようだが、これじゃあいつ潰れるか分かったもんじゃない。

 

「…そういえば、最近田中くん見てないけど、どうしているんですか?」

「あぁ、最近来ていないようでな…何故か無断欠席が多いんだ。まったくどうしたというんだ……」

あぁ多分それ裏切り工作だな。いまここで言っても意味ないし、いう気もないから言わないが。

 

「ところで――()()ウチの()が迷惑でも掛けましたか?」

「―――ッ!?なんでわかったのだ?」

「いや、俺の方見る度になんだか機嫌が悪そうでしたし、俺以外にはそんな感じじゃなかったので消去法で一郎の仕業か何かなのかな――と。」

 

「そこまで見抜かれるとは……私もまだまだのようだな。」

 

只の木刀で鉄よりも硬い使徒を叩き斬る超人がなんかいってら。―――まぁそんな軽口は置いとくとして…まぁアイツは『友人キャラ(変態キャラ)』だから、役回し(ロールプレイ)のためには仕方ないかもしれないけど、このままじゃあ今後の俺とアイツの活動が少々厄介なことになる。何とかして機嫌を直して頂きたいところだが――――剣士だしこれでいいか、

 

「じゃあ師匠。お詫びって程でも無いですが、俺と一回模擬戦しませんか?」

「え?」

「最近忙しくて中々できる機会がなかった俺は、感覚を取り戻す為。弟にイタズラを仕掛けられた貴女は兄である俺への憂さ晴らし――中々いいと思いません?」

「ふむ………そうだな。君の現在の実力を知るには丁度いい時期だ―いいだろう。」

「スゥゥ――――では。」

 

俺と蒼ヶ崎は向かい合い、互いに木刀を構える。

これは、異能力を使わない。単純なる剣技の勝負。

お互い相手の出方を見ようとすり足で徐々に近付いていく――――

 

 

「フッ!!」

「ハァァ!」

 

 

動き出したのは同時。互いの利き手を狙った木刀は、次の瞬間丸で漫画やアニメで見るかのような鍔迫り合いに移行した。彼女は『斬舞の剣士』ということで、その力を解放していない状態でもそんじょそこらの成人男性よりも腕力は遥かに強いが、そこは『お助けキャラ』としての意地を使い、一進一退の力関係にする。

 

「―ッ!?グゥ……!!」

相手が驚いている隙に、一気に力を込めて弾き飛ばす。師匠相手だったらそこまで大した隙には絶対にならないが、構わない。

 

取り敢えず、()()()()()時間が稼げるのなら、それでいい。

 

右足を後ろに下げ、突きをする構えで一気に飛び込む。師匠は既に体制を整えており、この道場の基本の構えで、俺をしっかりと見据えている。

 

(流石龍牙御一行のナンバーツー――だが…)

お助けキャラ(ナンバーゼロ)』として、負ける訳にはいか…ない!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◼️〈???〉

互いの技と技の応酬、それは一種の芸術のようにも見える。が、行なっている本人たちはまったくそんな事は考えていなかった。本人たちの目を見てみてほしい。マジ(殺す気)である。殺意(さつい)マンマンである。相手の一挙一動を読み切らんとばかりに目を動かし、相手の隙を突いて来た一撃を捌く。

 

攻防の立ち位置が次々と入れ替わり、時に測ったかのようなシンクロさで同時に距離を取り、再び向かい合う。この二人の雰囲気は最早、長年のライバルそのもののようで、もしもこの場に一般人がいたら、その異様さにやられてしまい。思わず警察に連絡されてしまったかもしれない。

 

そんな風切り音と木のかち合う音が響き渡る道場は、周りから見たらちょっと(どころかかなり)引くぐらいにはヤバイ光景だった。そう――――

 

 

 

(何やってんだアニキーーー!!?)

「あれは怜さんと…一郎のお兄さん?」

龍牙に蒼ヶ崎イベントへけしかけようとしていた一郎と、正真正銘の戦いのプロである火乃森龍牙が驚いて困惑する程度には。

「な、なぁ一郎…お前のお兄さんってあんなに強かったの、か?」

「イ、イヤーサスガアオガサキサンダナー、マサカオレノアニキヲココマデツヨクシテシマウナンテナー。」

演技力には一家言ある一郎でも、目の前で起こっているイレギュラーには混乱を隠し切れず、ついつい棒読みになってしまった。

 

(なんでアニキが蒼ヶ崎さんとあんな『死合』をしているんだ!?つーか青ヶ崎さんと渡り合えるとかアニキ何者―――)

「お、おい……?」

(ヤベェ!このままじゃあ『戦闘キャラと渡り合える強さの兄を持つ弟』という変なイメージがついてしまう!そんなんぜってぇ俺の求める『友人キャラ像』じゃない!!)

どうする、そうすればこの状態を瓦解させられる!?と、一郎は思考を張り巡らせていた。

 

その結果。

 

「小林流奥義!『モブクラッシャー』ァァァァ!!!」

1つの流派とかなりダサい必殺技が1つ出来た。奥義とか言っているが実質タダのヤクザキックである。

 

「クブレラッ!?!」

見事に顔面に入ってしまった零也が、見事に二回転程して道場の支柱に激突した。

 

「りゅ、龍牙!?いつの間に?!」

「二人が『試合(死合)』している最中にね。小林がどうしても怜さんが一目見て見たいっていうから。」

「あの変態め…相変わらず余計なことを……」

 

眉間を抑えながら呻く蒼ヶ崎。

そんな蒼ヶ崎をみながら苦笑する龍牙。

ゼェゼェと息を吐きながらなんとか変なフラグをへし折った自分に内心サムズアップする一郎。

訳も分からず弟に蹴りをくらい、支柱に見事激突した自分のデコを抑えている零也。

ただのカオスである。

 

 

「…なぁ一郎。せめてそこはパンチにしてくれ……」

「「「突っ込みどころそっち!!?」」」

少々ずれたことを口にし、うめき声を上げながらも、何とか立ち上がる。

「いっつつ……やっぱお前、妙に運動神経いいよなぁ…」

弟のことを思い、敢えて『常人離れ』と言わない兄の優しさである。

「―で、師匠。これで満足してもらえました?決着ついていませんけど。」

「ん?ああいや。もう満足さ。さっき弛んでいるといったが、修正させてもらおう。」

「ありがとうございます。」

「いつも素振りや型ばかりでもうしわけないな……せめて私以外にも中高生や社会人がいてくれたらいいのだが………」

「人がいないからしょうがないですよ。師匠だってあの子たちの指導を怠っていられないですし。」

「――そうだな、その通りだ。」

少し申し訳なさげな表情から、いつも通りの凛とした顔に戻った――うん、やっぱり彼女にはこの顔が一番似合っている。――と零也は思った。

 

 

 

「火乃森くんも、お久しぶりだね。いや〜こんな三度のメシより下ネタ好きな弟の相手をさせちゃってゴメンね?」

先程までの剣呑な気配からは一転、どこにでもいそうな親切なお兄さんのような雰囲気になった零也。当然の如く龍牙たち(一郎を除く)はビックリするが、そこはこれまで散々異常事態(使徒との戦い)にその身を費やしているのですぐに復帰した。

「いえいえ大丈夫です、むしろ一郎には世話になってるからね」

後ろで軽くガッツポーズをした(一郎)を見なかったことにして、零也は再び言葉を紡いだ。

「そう?多分コイツ(一郎)の事だから、師匠(蒼ヶ崎さん)の生着替えでも覗きに来たと思ってたんだけど―――あってるか、一郎?」

少々呆れたような声を()()ながら、零也は弟にそう問いかけた。

 

「ふっ。流石我が兄貴だぜ。そう、俺が態々(わざわざ)ここに来た理由は、蒼ヶ崎さんの大きな二つの果実(おっ◯い)を見るために決まって――――

 

 

次の瞬間、鉄槌が二つ落ちた。

 

 

一人は言わずもがな、言われた張本人である蒼ヶ崎だ。羞恥なのか怒りなのかは分からないが、しっかりと顔を赤く染めていた。――少し可愛いなと零也は思った。

もう一人は意外なことに、これまで完全に呆れた顔だった火乃森龍牙だった。こちらも怒りと羞恥が入り混じったような顔をしている。――原作を読んだ零也は『やっぱりか』と内心で苦笑した――度を越した親友の行為に彼の並外れた正義感が発揮されたのか。蒼ヶ崎と同時にその鉄拳を叩き落とした。

 

 

 

 

 

◼️小林零也

「……死んだか?別に構わないが。」

「普通に生きてるよ、手加減はしたしね―怜さんも同じだろう?」

「…まぁな。」

やはり根は優しいのかな?どうやら無意識かに手加減をしてくれたようだ。

「ふぅ。やっぱ迷惑掛けてんのかなぁ…ゴメンね二人共、こんなのに付き合わせて。」

「アハハ…まぁ一郎のこうゆうことはもう慣れたからね。」

「なんでコイツはこんなに模範的な腕前と人格なのにその弟はなんでこんななんだ…」

ものすっごい呆れ顔と苦笑いを混ぜ混ぜしたような顔で龍牙がいい、疲れたかのようにこめかみを抑え、慣れたような仕草で揉んでいた。

 

……さて、どうしたもんか。

このまま一郎担いでサヨナラバイバイまた明日でいいのだが、この子達にもうちょい俺の印象を植え付けておいて良いのかもしれないな。

 

「お詫びとしてはなんだけど、ウチで飯食っていかない?コイツを少し叱っとかないといけないからね。2人がいた方がこいつ(一郎)も反省するだろうし。」

「えっ?でもそれはちょっと申し訳が……」

「確かに私達がいたほうがそこのバカも反省はするかもしれんが…私達にそこまでしてもらうわけには…」

「別に良いよ気にしなくても…2人分増えるくらいわけないから。」

「うん……わかりました、お邪魔します。」

龍牙自体が家に来るのはこれが初めてというわけじゃない。この前だって一郎が(結構強引に)つれてきてたし。さて、問題は蒼ヶ崎さんだが………

「師匠は?どうしますか?」

「…まぁ別にいいか。ちょっと待っててくれ、今父上に許可を貰ってくる。」

そういうなり身を翻した彼女は、自宅と連結している通路に向かって歩いて行った。

 

 

その後俺たちはとくに何事もなく帰路につき、今夜のご飯(ハムカツ)を一緒に食べた。

(だが食事中に一郎の目が醒めることはなかったと言っておこう。)

 




次回はキャラ紹介にでもしようかな……




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