魔法科高校の加速者【凍結】   作:稀代の凡人
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前半はネタ成分100%で書いてるので、魔法理論は割と適当です。
なので、そこに関しては理論的におかしなところがあっても修正しないかもしれません。

他の部分に関しては、この話に限らずおかしなところ等ありましたらそっとご指摘ください。
頑張って直します。

あと、今日から投稿する時間を1時間早めています。


第5話

次の日の昼は、ひたすら遊んだ。

例えば、一切手や道具を使わず、魔法だけで昼御飯を作ってみたり。

今日のメニューは海鮮パスタでした。

 

まずは具材から、と材料を切ろうとしたところで、いきなり壁にぶち当たる。

道具禁止縛りのせいで、包丁が使えないのである。

少し考えた末に、仕方なくパスタを一本抜き取って硬化魔法をかけ、それで切った。

 

次に具材を炒める。

ここで次の難関だ。

フライパンが使えないのである。

頭をひねった挙句、空気を硬化魔法により座標を固定し、それを振動系加速魔法で熱してフライパン代りにした。

そして同じ方法で麺を茹で、最後に具材と絡めて完成だ。

 

これを見た桜井さんは、すごく微妙な顔をして、

 

「なんでこんな作り方でも美味しいんですか……」

 

と呟いていた。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

後はあれだ、ピアノの演奏。

但し、総勢30名のお人形さんたちによる演奏だ。

え、分からないって?

むしろ分かってたら俺が怖い。

 

説明すると、10cmほどの人形を加速、加重、移動なんかを使って鍵盤の上を飛び跳ねさせるのだ。

本当は指の数と同じが良いのだが、滞空時間の関係上不可能なので30個でやっている。

見た目はたくさんの人形が飛び跳ねている微笑ましい光景なのに、聞こえるのはモーツァルトやショパンあたりの名曲だったりするので不思議である。

 

実は、これは俺が幼い頃に思いついて深雪と一緒にやっていた遊びの一つだ。

初期の頃は同時操作すらままならなかったのだが、小4の頃に「エリーゼのために」を弾けるようになっていたのまでは知っている。

その頃辺りからやらなくなったのでそれ以降は知らないが……。

はて、今ではどのくらい出来るのやら。

深雪の方が精密操作は得意だからなぁ。

 

因みに通りかかった桜井さんは

 

「なんでこれだけの数の同時操作なんて高等技術でこんなことを……」

 

なんて頭を抱えていた。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

そしてその夜。

俺は、兄さんの部屋を訪ねていた。

 

中はコンピュータやら訳の分からん機械やらでごちゃごしている。

一応の整頓は出来ているみたいだが。

 

「うわぁ、相変わらず魔法工学用の設備でいっぱいだなぁ」

 

「趣味を持てと言ったのも買い揃えてくれたのも和也だろう?俺もまさかここまで適性があるとは思わなかったが」

 

俺の声に苦笑いする兄さん。

そう、兄さんに魔法工学をやるように勧めたのは、何を隠そう俺なのだ。

まぁ、才能あるの知ってたし。

早くからやらせるに越したことは無いかなぁと思って、8歳ぐらいの頃に「何か趣味を持った方が……」などと言ったのが始まりだ。

 

今ではCADの調整も任せている。

 

「で、今日はどうしたんだ?CADがどれか調整が必要なのか?」

 

「いや、それは大丈夫。全部調子は良いよ」

 

今の言葉から分かるように、俺はCADを複数持っている。

それも汎用型を1つと専用のCADを幾つか、だ。

同時に使うなんて器用な真似は出来ないが。

 

俺はある理由から、特殊な魔法を幾つか使うことが出来る。

出来るのだが、機能の限界を攻めすぎて処理とかがギリギリなものも多いわけだ。

そこで、一つの魔法に対して一つのCAD、といった形で対応している。

 

普段なら汎用型一つで十分事足りるのだけどね。

 

「しかし、CADをそんな幾つもよく使い分けられるよなぁ。俺には無理だよ」

 

「俺は、それより同時に使う方が難しいと思うけどね」

 

いや、だっておかしいでしょ、と思ったりする。

まぁ汎用型両手に持つと落とす気しかしないのでやらないけど。

 

ん、待てよ?

そういえば……。

 

「兄さん、汎用型CADで拳銃型を作れると思う?」

 

確か原作で有ったような気がするんだが…。

 

「拳銃型、というと汎用型に照準機能を付けるということか?しかしそれは……いや、無理なのか?えっと……」

 

「ちょっ、待って。俺の用件を終わらせてからにして!」

 

「……え?あ、ああ、悪い」

 

そのまま思考の海に沈みそうだった兄さんを引き留める。

 

危なかった……。

ああなるとこの人、自分か深雪の身の危険を感じないと帰ってこないからな。

だからといって攻撃すると手痛いカウンターを喰らうという鬼畜仕様。

いや、本当どうしろと。

今回はセーフですが。

 

おっと、本題だったな。

 

「戦略級魔法を一つ、手札に加えたい」

 

「…ふむ、系統は?」

 

途端に真面目な顔になる兄さん。

いや、普段からあまり変わらないんだけどね?

こう、雰囲気的な何かが変わる。

 

「使えそうなのは多分振動系かな。アレ(・・)を除くと一番得意な系統だから」

 

「振動系、と言うと熱運動の加速か?あぁ、この件は叔母上には?」

 

「話した。あ、そうそう。その件なんだけど、俺、婚約することになるみたい」

 

「………なんだって?」

 

いつも冷静な兄さんの顔が流石に一瞬呆然とする。

おっと、いきなり過ぎたか。

珍しいものが見れたものだ。

 

「戦略級魔法師が四葉に2人もいたら他家が煩くないですか?って言ったら、だったら七草と手を組めば良いわ、と」

 

「七草……というと、かの『妖精姫』か?」

 

流石情報通な兄さん。

まぁこれぐらいは誰でも知ってるか。

 

「そう。まぁ、それは良いけど。それより戦略級魔法の方だよ」

 

「あ、ああ、そうだったな。さて、振動系か……」

 

「うん。威力を出そうとするなら何かしらの物質を気化させて爆発を起こすっていうのがポピュラーだと思うんだけど」

 

「必要威力に達するほどの演算規模が無い、と」

 

「うん。精々戦術級が良いとこだろうね。それなら、大した手札にはならないし」

 

というかその程度で良いんだったら既にいくつか持っている。

 

「しかし、演算規模の問題ならばどうしようもないんじゃないか?」

 

「えー、そこをなんとかする為に相談したんじゃない」

 

「そこは魔工士にはどうしようもないしな…待てよ?もしかしたら……」

 

最初は呆れていた兄さんは次第に思考の海に沈んで行く。

 

俺は兄さんが考え事をしている間に紅茶を淹れる。

水道はこの部屋にも通っているし、加熱などお手の物だ。

一番香りが出る淹れ方で丁寧に淹れ、そっと兄さんのデスクに置く。

 

そのまま自分の分の紅茶を飲んで批評していると、しばらくして兄さんは顔を上げた。

そして傍らの紅茶に気付く。

 

「……ああ、悪いな」

 

「いや、勝手にやったことだし。それで、何を考えてたの?」

 

「演算規模の拡大」

 

は?

 

「いや、幾ら何でもそれは……」

 

「擬似的なことなら出来る。アレ(・・)を使えばな。ただ、魔法自体は工程の少ない単純な……そうだな、実用性も考えると水の気化ぐらいになるだろうが」

 

えっと……ああ。

 

「ループ・キャストと併用して?」

 

「ああ」

 

頷いて、兄さんはパソコンに向き直り、キーボードを叩く。

 

「前回取ったデータの和也の『干渉強度』で一度にどれだけの水分子を気化出来るかを計算。さらに、アレ(・・)とループ・キャスト、フラッシュ・キャストを併用して全力でやった場合、秒間当たりに一体幾つ発動出来るかを計算する。結果から言えば、十分に戦略級の威力は出せる。残念ながら似非戦略級魔法ってことになるが」

 

この人、本当に中一かよ。

っと、そうではなくて。

 

なるほど。

確かに、アレ(・・)が俺だけに与えられた特異魔法である以上、その方法では俺以外には無理そうだ。

だがそれは言い換えると、俺ならば可能ということになる。

 

「兄さん」

 

「ん?」

 

「専用CADのソフト、頼める?叔母上にはもう許可取ってあるし、ハードも用意してくれるって言ってたから」

 

「分かった。ただ……」

 

「ただ?」

 

少し躊躇したあと、言葉を続ける。

 

「叔母上に何でもかんでも話すのはやめた方が良い。あの人は…」

 

「……うん、分かってる。ただ、俺にも考えがあるから」

 

「……そうか。なら良い」

 

む、なんか暗くなっちまったな。

 

「そうだ兄さん、もうひとつ」

 

「何だ?」

 

「実は、こういう魔法を開発したんだけど……」

 

「ん?ほう、これは……」

 

興味深そうな顔をする兄さん。

よし、掛かった。

この人の興味を引くにはCAD関連の話をすれば良い。

チョロいもんだぜ。

 

「これ、多分俺の処理速度でもギリギリなんだ。余裕を持たせるために、これの専用CADもお願いできる?こっち優先で。ああ、ハードも一緒にね」

 

「分かった、やっておこう。明後日には多分出来るよ」

 

「はやっ。夜更かししすぎないでよ?」

 

「分かってる」

 

あの顔、絶対分かってないだろ。

まぁ、いっか。

楽しんでるみたいだし。

 

楽しそうにコンピュータのディスプレイと向き合う兄さんの邪魔をしないように、俺はそっと部屋を後にした。




お読みいただき、ありがとうございました。




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