二人目の妹は入学すら出来ませんでした 作:スパイラル大沼
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別荘のあたしの部屋。パソコンでネトゲをやっていた。そんな中、ガチャッと扉が開いた。
「美雨さん、そろそろパーティの準備を……」
穂波さんの声が聞こえた瞬間、あたしはほとんど瞬間移動並みの速さでベッドの下に隠れた。ネトゲはちょうど戦闘の準備をしてる最中だから大丈夫。
「あれ?いないんですかー?」
あたしは絶対にパーティは嫌だ。ツマンネーもん。部屋でゲームやってた方が100億倍マシ。だからサボる。ベッドの下だから視覚情報で判断するのは不可能だ。そう判断すると、息を殺して耳を澄ませた。あたしは菊地原だ、そう自分に暗示をかける。気のせいか、本当によく耳が良くなった気がする。
「おかしいわね……パソコンの電源は入ってるのに……」
アレだよ。美雨さんトイレにいるんだよ。だからそれ以上探さないで。
「仕方ないわね。このゲームのアイテム、全部売っちゃいましょう」
「わー!タンマタンマ!」
「みーつけた」
「あっ……。ず、ズルいよ穂波さん!」
「ズルいのは美雨さんですよ。なんですかあのチート防具。また奥様に内緒で課金しましたね?」
いやそっち?と、ツッコミそうになったが堪えた。むしろ、ここで課金の方に話を誘導し、パーティの話をうむやむにしてやらうと考えた。
「い、いいんだよバレなきゃ!だってあたしの入ったギルドの人、ほとんど廃課金者しかいないんだもん!あたしだって少しは……!」
「ダメです。そういうところのお金は勿体無いといつも奥様からも達也くんからも深雪さんからも言われてるでしょう?」
今更思ったけど家族全員に袋叩きにされてんじゃんそれ。
「じ、じゃあ責めて誰にも言わないで!お願い!」
「……………」
「土下座するから!」
「いやそれはやめてください。私が殺されます」
で、穂波さんはため息をつくと苦笑いで言った。
「分かりました。今回だけですからね」
「っしゃオラ!あっ、そーだ!せっかくだから久々に一緒にゲームやろうよ!」
「申し訳ありませんが、この後奥様に呼ばれてますので。では失礼します」
計画通り!
「あ、それとパーティの準備しておいて下さいね。逃げたら冷やすと深雪さんが仰ってましたよ」
全然計画通りじゃ無かった。
*
パーティ会場のホテル。深雪や兄ちゃんは黒羽親子とお話してる。あたしは会場の隅っこで1人でボンヤリしていた。深雪と一緒にいても、あたしはどうせ「司波娘のダメな方」と比べられるだけだ。だから来たくなかった。
早く母さんとか来ないかな〜、そうすりゃずーっと穂波さんのスカートの中に隠れられる。あの人のパンツをゼロ距離で見ながら隠れられるとか本当に最高じゃん。
そんな事を考えながらあたしはただパーティの間、穂波さんを頭の中でムチャクチャにしていた。
*
夜中。ようやく帰って来た。暗い顔であたしは部屋のベッドに倒れ込む。………気まずかった。精神的に疲れてるあたしはベッドの上でゴロゴロしながら4DSの電源をつけた。
「モンハンやろ……」
そう呟くと、あたしはゲーム開始。すると、また穂波さんが部屋に入ってきた。
「穂波しゃん……どしたの?」
「いえ。大分疲れていたみたいですから」
「いやそりゃそうだよ……パーティなんて胃に穴開けるためにあるようなもんだから」
「今日も隅っこで私をムチャクチャにしてたのですか?」
「うん」
で、ため息をつく穂波さん。
「だってさ……あたし、魔法使えないじゃん?」
「ええ」
「だから、嫌なんだよ。深雪と一緒にいて、比べられるのが」
「…………」
「そっくりなのは顔だけだからね。仕方ないとは思うんだけどさぁー。こっちからしたら冗談じゃないっての」
思わず愚痴ると、穂波さんがあたしのゲームやってる手を握った。
「そんなの、気にしなければいいんじゃないですか?」
「へっ?」
「だって、深雪さんは深雪さん、美雨さんは美雨さんでしょう?それに、美雨さんには少なからず、深雪さんに勝っている部分もあります。ですから、周りの人の言うことなんて気にしちゃダメですよ」
「でも、さ……やっぱり、気になるんだよ……。ヒソヒソ言われるのは、自分がダメな子みたいで……」
「そんなことないですよ。いつも試験とか、深雪さんどころかあの達也くんを抜いて一位じゃないですか」
「うん……」
「だから、周りの意見なんか気にしないで、次からはキチンとパーティに参加すること、ね?」
「………わかったよ」
「さて、それではゲームやりましょうか」
「え?いいの?」
「はい。えーっと、モンハンですね?」
「うん!やろう!」
2人でゲームした。