二人目の妹は入学すら出来ませんでした   作:スパイラル大沼
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追憶編
三年前


 

 

時には昔の話をしようか。てなわけで、三年前なう。いやそれなうじゃないじゃん。あたしは飛行機に乗っていた。母さんや深雪と一緒に。

 

「美雨」

 

「んー?」

 

「ゲームやめなさい。もうすぐ着陸よ」

 

そう言う深雪はさっきまで読んでいた「読本・現代史」の教材ファイルを閉じていた。

 

「えー。でも、もう少しでタマツカミ……じゃない、ヤマツカミが倒せるんだよ」

 

「だめ。マナーよそれが」

 

「ケチ、アホ、ウンコ」

 

「最後の、あなたももう中学生なんだからやめなさい」

 

「人生を楽しむコツは童心を忘れないことだよ。銀さんが言ってた」

 

「漫画に影響されるのもやめなさい」

 

で、呆れたようにため息をつく深雪。まぁいいか。タマツカミくらいナメプよゆーだし。あたしはおとなしくPSPをしまった。

 

 

 

 

到着ロビーの会員制ティーラウンジを出ると、預かり手荷物を取りに行っていた兄ちゃんが待っていた。

 

「よーっす!兄ちゃん!」

 

「こんにちは」

 

「そんな畏まらなくていいってばー!それよりあとでゲームやろうゼ☆」

 

「美雨」

 

鋭い声で深雪に呼ばれた。うーん……なぜか知らんけど、深雪はあたしと兄ちゃんを余り関わらせたくないようだ。その兄ちゃんはまるで監視カメラのようにあたしと深雪のことを見ていた。

 

「……なんですか?」

 

深雪が聞いた。

 

「何でもありません」

 

「でしたらジロジロ見ないでください、不愉快です!」

 

「失礼しました」

 

深雪の理不尽な怒声に素直に謝る兄ちゃん。

 

「気にしないで兄ちゃん!これツンデレみたいなものだから!」

 

「美雨、怒るわよ」

 

言われてあたしは黙った。なんでか知らんが、いや大抵なんでか見当ついてるけど、うちの姉は使用人扱いされてる兄を嫌っている。

 

 

 

 

恩納瀬良垣の別荘。あたしはそこで早速部屋にこもりゲーム。

 

「ほっ、よっと……そぉい」

 

「美雨」

 

深雪に呼ばれた。

 

「ちょっと、外歩かない?」

 

「えー?なんでー?」

 

「なんでもいいじゃない。ほら、行きましょう?」

 

今いいとこだったのになぁ……まぁいっか。

 

「いいよ。行こう」

 

あたしは深雪について行った。兄ちゃんも一緒に行くのか、深雪とあたしに付いてきた。で、準備だけして外に出た。

 

「部屋では何をしていたの?」

 

「モンハン。最近、ようやく1人でヤマツカミ倒せるようになってきたんだ」

 

「そうなの。帰ったら一緒にやる?」

 

「やる!」

 

即答した。そんな会話をしながら2人で歩いてると、ドンッと深雪がぶつかった。歩いてた人に。そのまま後ろに倒れそうになる深雪。あたしは反射的に深雪の背中を抱き抱えた。

 

「大丈夫?深雪」

 

「え、ええ……」

 

で、キッと前を睨みつけると、軍服をだらしなく着た男が3人ほど立っていた。ニヤニヤ笑いながらこっちを見下ろしている。

 

「ふぅん?あたしに喧嘩売るんだ?」

 

言いながら指をゴキゴキ鳴らしながら前に出ようとした。だが、そのあたしの肩を後ろから兄ちゃんが掴んだ。

 

「えっ?」

 

無言で兄ちゃんは首を横に振ると、あたしの前に出た。

 

「あぁ?ガキに用はないぜ?」

 

言われても何も答えない兄ちゃん。

 

「ビビって声も出せねぇのか?」

 

「ハッ、チキン野郎が。カッコつけてんじゃねぇよ!」

 

うわあ、殺してぇ……。でも、兄ちゃんに「手を出すな」と無言で言われちゃったし……。すると、兄ちゃんが言った。

 

「わびを求めるつもりはないから来た道を引き返せ。それがお互いの為だ」

 

「……なんだと?」

 

「聞こえていたはずだが?」

 

「地面に頭をこすりつけて許しを乞いな。今ならまだ青痣くらいで許してやる」

 

「それ許してるって言わなくね?」

 

あたしが小声で言うと、聞こえていたのかあたしに殴りかかってきた。上等……!と、あたしは応戦しようとしたが、その拳を兄ちゃんが掴んだ。そして、ボディに兄ちゃんは一発入れて倒した。うずくまるそいつ。

 

「おー!やるじゃん、兄ちゃん!」

 

「帰りましょう」

 

あたしの言ったことをまるで無視して兄ちゃんは言った。言われるがまま、あたしと深雪と兄ちゃんは別荘に引き返した。

 

 





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