二人目の妹は入学すら出来ませんでした   作:スパイラル大沼
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バレンタインの夜

 

 

 

夜。自宅。あたしは早速チョコを食べた。………気のせいかな。血の味がするよ。だめだ……ダメだよ雫ちゃん。これはダメだ。まさか遠距離になってここまで病むとは……これあたしの3倍くらい愛されてるよこれ。

別に「美雨を殺して私も死ぬー」とかなっても世界中の誰にもあたしは殺せないからそういう意味では問題ないんだけど……雫ちゃんには死なれたくないし……。

 

「困ったなぁ……」

 

ため息をついてしまった。すると、ガチャッと玄関のドアが開く音がした。

 

「ただいまー」

 

兄ちゃんの声だ。玄関まで見に行くと深雪がでっかい布の袋を抱えていた。

 

「おかえり。何その袋」

 

「ち、ちょっとね……。というか、何かあったの?なんか見ちゃいけないものを見た顔をしてるけれど」

 

「ああ……ちょっとね……」

 

で、二人でため息をついた。と、思ったら深雪が思い出したように「あっ」と声を漏らす。

 

「そうだ。ちょっと手伝いなさい」

 

「はぁ?なにを?」

 

「いいから。お兄様、すぐに夕食の準備に取り掛かりますのでしばらくお部屋でお寛ぎください」

 

うわあ……呼ばれるまで来るなってか?まぁこれはブラコンの妹を持った兄の宿命だよなぁ……。頑張って、兄ちゃん。

 

 

 

 

料理の準備(食器とか)の準備をさせられ、約一時間後にはチャーリーもビックリなチョコずくめの料理がテーブルに並んでいた。

 

「さっ、美雨。お兄様を呼んできて」

 

そう言う美雪の格好はチロリアンドレス。あたしも同じものを着せられてる。

 

「はいはい……」

 

言われるがまま、兄ちゃんをLINEで呼び出した。数十秒後に部屋に入ってきて、「そう来たか……」と声を漏らす兄ちゃんを見て思わず同情してしまった。

 

「どうなさいました?」

 

悪戯っぽい笑顔で聞く美雪。

 

「……その衣装は何処で手に入れたのかと思ってな」

 

「衣装、ですか?これは単なる給仕用の服ですが」

 

「どーお?兄ちゃん」

 

あたしはクルリと回って見せた。

 

「うん。美羽の割には似合ってるよ」

 

「それ褒めてるの?」

 

「ああ。とても可愛い」

 

まぁ嬉しくないわけじゃないけどさ。ていうか逆にちょっと引くわ。なんて思ってると深雪があたしの前に出た。

 

「お、お兄様……その、私は……深雪は……どうですか?」

 

「いや、美雨と同じ顔なんだから、美雨が似合っていれば深雪も似合ってるものだろう」

 

その瞬間、ピシッと音がした。あーあ……どうして鈍感系主人公みたいなこと言うかなこのマダオ(まるでダメなお兄様)は……。

案の定、機嫌を完全に損ねた深雪は頬を膨らませながら言った。

 

「どうぞお召し上がりください」

 

「………深雪、怒ってるのか?」

 

「怒ってません」

 

「いやでも」

 

「怒ってません」

 

あーあ……まぁ仕方ないか。

 

「ま、まぁまぁ二人とも。とにかく、ご飯食べよ?あたし、お腹空いちゃった。深雪のバレンタインチョコ、早く食べたいなぁ」

 

あえて甘えた声で言った。すると、深雪は頬を赤くしながら「それもそうね」と席に着く。よかった、ちょろい姉で。

で、みんなで食事。さっそくメインの牛フィレ肉のチョコレートソースがけをいただいた。うええ……甘ぇ……気持ち悪くなってきた……。てかなんか血の味がした気もするし……。でも深雪があたしのためじゃないとはいえ、一生懸命作ってくれたものだし……食べなきゃ(使命感)。

そんなことを考えながら食べてる時だ。

 

「美雨、鼻血出てるぞ」

 

「えっ、マジ?」

 

鼻に手を当てると赤い液体が手に付着した。うーわガチじゃん。

 

「ほんっとだ……最悪……」

 

「ほらティッシュ」

 

ティッシュ箱を渡されて、鼻に詰める。

 

「うう……血が……」

 

「ごめんなさい美雨。少しチョコ多すぎたわね」

 

「いいよ別に……今度、ゲーム奢ってね」

 

やっぱ食わなきゃよかった。今年のバレンタイン最悪。

 

 





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