二人目の妹は入学すら出来ませんでした 作:スパイラル大沼
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二人で並んでレジをやっていると、ウィーンと自動ドアが開いた。
「あ、いらっしゃいま……」
「悪い!服部、遅くなった!って、あ……」
桐原さんだった。
「………………」
「………………」
「………………」
三人で沈黙。
「き、着替えてくるわ……」
「お、おう……」
「は、はい……」
で、服部さんと二人で客を待つ。
「………あ、あの服部さん」
「? な、なに?」
お互い慣れていないせいか、カタコトな感じになってしまったが、なんとか聞きたいことを絞り出した。
「そ、その……なんでアルバイトを?それも桐原さんと?」
「お、俺……僕は付き添いだよ。桐原がバレンタインに壬生に何か渡すためにお金貯めたいらしくて……」
「あの、ヴァレンタインって天使……女性から男性に渡す日ですよね?あ、もしかしてあの2人、性別逆転でもしたんですか?」
「いや違うから……。まぁ、僕からこんなこと言うのもアレだけど……こういうのって気持ち、なんじゃないかな?」
「な、なるほど……じ、じゃああたしが服部さんに本命チョコ渡すのも気持ちですか?」
「ふぁっ⁉︎えっ⁉︎い、いやでもおおお俺には心に決めた方がい、いらっしゃって……」
「冗談です」
やだこの人可愛い。
「でも友達の付き添いで自分もバイトなんて、服部さん良い人なんですね」
「え、ええ⁉︎そ、そんなことないぞ!」
顔を真っ赤にして照れる服部さん。やだほんと可愛い。すると、従業員専用の扉から桐原さんが出てきた。
「よっ、司波妹二人目。これからよろしくな」
「は、はい!」
「じゃ、さっそくで悪いんだが品出し頼めるか?」
「任せてください!」
あたしは元気良く返事をすると、品出しへ向かった。
*
「よかったな服部。あいつがいれば100人力だ」
「なぁ桐原」
「あ?」
「あの子、彼氏いるのかな」
「彼女ならいるって噂だ。今は遠距離らしいが」
*
帰宅した。
「ただいまー」
「おかえりなさい。バイト?」
深雪に聞かれた。
「うん」
「お疲れ様。ご飯は?」
「食べる!」
その日の晩ご飯はいつもより美味しく感じた。なるほど、これが労働か。
*
翌日。バイトは午前中で終わり。暇になったので一高に向かった。
「っと、今は授業時間中だったか……」
仕方ないのであたしは生徒会室に向かった。中に入ると、真由美さんがいた。
「あら、美雨ちゃん」
「あーそっか。三年生はもう授業ないんだ」
「ええ。あなたはどうしたの?バイトは?」
「今日はバイト午前中までなんだ〜」
「そうなの」
「でさ、暇だからあたしここで寝ててもいいかな?」
「いいんじゃないかしら?なんなら膝枕してあげるわよ」
「本当に⁉︎是非お願いします!」
「ふふふ、どうぞ」
そのまま寝た。この人の膝柔らかい。天使だ。