二人目の妹は入学すら出来ませんでした 作:スパイラル大沼
<< 前の話 次の話 >>
翌日。雫が目を覚ますと、隣に全裸の美雨が寝ていた。
「へあっ⁉︎」
クールな雫から出たとは思えない声。ていうか自分も全裸だった。
(な、なんで美雨が⁉︎ていうかなんで全裸⁉︎も、もしかして私………襲われた⁉︎)
そう思考が巡ると、雫は美雨を蹴り起こそうとした。だが、まったく効いてない。
「わ、私の蹴りなんて蚊に刺された程度だって言うの……⁉︎」
逆ギレした雫はフォノンメーザーをぶち込んだ。
「ぎゃっ⁉︎………あ、し、雫ちゃん……」
目を覚ました美雨は顔を赤くして目を背けた。
「み、美雨!何したの私に⁉︎」
「そ、その……、昨日は、激しかったね……」
「んなっ……⁉︎」
「雫ちゃんから襲ってきたんだよ……?」
「えっ………」
全く覚えてない雫だったが、美雨の真っ直ぐとした瞳を見ては頷くしかなかった。また顔が真っ赤になる。
「でも、あたしは雫ちゃんと、その……して、嬉しかったよ?」
顔を赤くしながらも美雨は笑顔で言った。すると、雫は尚更顔を赤らめた。
「ねぇ、美雨……」
「ん?」
「今日、暇?」
「うん。ニートだからね」
「なら、一緒にいようよ!」
「……うん、本当はそうしたいんだけど、さ。ぶっちゃけここに不法入国してるし、兄ちゃん達には早く帰って来いって言われてるし、早く帰らないと行けないんだ」
「そんな……」
俯く雫。それを見て美雨は心底襲いたいと思いつつも抑えて、言った。
「大丈夫だよ。また会いに来て欲しければ会いに行くから。ね?」
「うん………」
でも、雫は元気が出てない様子。すると、美雨はため息をついて名前を呼んだ。
「雫」
「えっ?」
呼び捨てされ、反射的に顔を上げた時だ。
今度は、美雨からキスをした。
押し付けること10秒くらい、美雨はぷはっと口を離すと、笑顔で言った。
「じゃ、またね」
すると、美雨は笑顔で部屋を出て、空を歩いて帰国した。
*
あたしが帰国した時は夜中だった。
「た、ただいま〜……」
足音を消して息を殺し、そぉーっと家の中に入る。もう兄ちゃんも深雪も寝てる時間だろうし、起こしちゃマズイからね。そぉーっと、そぉーっとっと……。
「美雨っ」
「ひゃあああああああっっ‼︎‼︎」
血涙を流した深雪が目の前に現れた。
「えっ⁉︎何っ⁉︎どしたの⁉︎」
「アメリカでぇ、雫とぉ、何があったのかしらぁ?」
ふ、普段のは別の怖さだ……。
「と、特に何もないよ……?」
「嘘おっしゃい!見てたんだからね⁉︎」
「ええっ⁉︎なんで……」
「雫と通話中にあなたが飛んできたのよ!答えなさい……!雫と何をしたの……?」
「何って………」
あたしはベッドの上でのことを思い出した。思わず顔を赤くしてそっぽを向く。
「ナニ、だよ……」
次の瞬間、深雪が発狂して兄ちゃんに怒られた。
*
翌日。目を覚ました。兄ちゃんも深雪もみんな学校。でもまだ朝7時過ぎか。結構早く起きたな。
あたしがニートを始めてもう一ヶ月経とうとしてる……いやもう経ってるのか。そろそろフリーター始めないとな。そんなわけで今日は面接に行こうと思う。とりあえず頭も良くて運動神経抜群のあたしなら何しても出来るだろうし、テキトーに夜勤以外で時給高いの選ぼう。
で、電話した。
*
第一高校前という駅がある。そこの駅前のコンビニでバイトすることにした。そんな事言ってもしばらくは研修中なんだけどね。今は面接終わったところ。あたしがコンビニから出ると、ちょうどリーナとバッタリ会った。
「あ、リーナ!なんか久し振りだね……」
「いやぁ!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい………」
「ええ⁉︎ど、どうしたのリーナ?」
「どうした美雨?」
後ろから声をかけてきたのは兄ちゃん。
「な、なんかリーナが急に土下座して……」
「ああ。お前が悪い」
「ええっ⁉︎なんで⁉︎あたしリーナに何かしたっけ⁉︎」
「あなたが悪いわね美雨」
「うう……釈然としない……」
なんでこんなに怖がられてるんだろう……。
「ね、ねえリーナ。あたしが何したか分からないけど謝るからさ……また仲良く出来ない、かな?」
「は、はいぃ!み、美雨がそう言うなら喜んでそうさせていただく所存でございますことよ!」
「色んな日本語が混ざってるよ!あたしはそんな恐怖支配は望んでないから!ね?」
「うう………」
「に、兄ちゃん……なんでぇ………」
「帰ったら話す。というかお前はここで何してたんだ?」
「バイトの面接!明日からここでバイト!」
「ぴぃ!もうこここれないじゃない!」
「リーナなんでよぉー!」
うわあーんとあたしは泣くしかなかった。