二人目の妹は入学すら出来ませんでした   作:スパイラル大沼
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夜。そろそろ帰ろうと思い、あたしはゲーセンを出た。さて、帰ろう。そしてエリカと仲直りの作戦を立てよう。そんな事を考えながらあたしは飛んだ。そのまま「ふははははっ!人がゴミのようだァーッ!」とムスカごっこをしてる時、なんか公園の中でギィン!ガギン!ドカーンッ!とSFの効果音のような音が聞こえた。なんだろ……行ってみよ。

 

 

 

 

「そろそろ茶番は止めてもらいたい、アンジー・シリウス」

 

公園の中。達也はそう言った。相手はリーナだ。ついさっきまで達也とリーナは戦っていたのだ。そして、周りにはリーナの部下である偽警察官が三人。

 

「君に協力している以上、本物であろうと偽物であろうと同じこと。100年前ならいざ知らず、現代のこの国の刑法において、外患誘致罪は武力行使が実現しなくても成立する。警官の扮装程度で怖気付くと思っているなら大間違いだ。我々日本の魔法師の覚悟を甘く見ないでもらおうか」

 

そう言われ、リーナは一つため息をつくと、一礼しながら言った。

 

「これは失礼を致しました。確かに見くびっていましたね。聞くと見るとでは大間違いです。同じ魔法師として、謝罪します」

 

足を揃えてピンっと背筋を伸ばして敬礼するリーナ。

 

「ワタシはUSNA軍統合参謀本部直属魔法師部隊・スターズ総隊長、アンジェリーナ・シリウス少佐。アンジー・シリウスというのは先ほどの変装時に使う名前なので、今まで通りリーナと呼んでください。さて」

 

そして、礼儀という名のオブラートに包み隠されていた殺意が剥き出しにしてリーナは言った。

 

「ワタシの素顔と正体を知った以上、タツヤ、スターズは貴方を抹殺しなければなりません。仮面のままでは幾らでも誤魔化しようはあったのに、残念です」

 

「後悔する、というのは、そういう意味か」

 

向けられる殺意の中、達也は不敵に笑って見せた。

 

「せめて騙されて捕まってくれれば、殺さずに済ますこともできたのですが」

 

「それは悪かったな。せっかくの心遣いを無にしてしまったということか」

 

「いえ、貴方を抹殺するというのはワタシたちの身勝手な都合によるものですから、謝る必要はありません。抵抗してもいいですよ」

 

言うとリーナはコンバットナイフを右手に、中型拳銃を左手に握った。周りの偽警官もそれぞれCADを構えた。達也も懐からCADを抜いた。そして、達也を取り囲むように右、左、後ろに回り込む偽警官。

 

「本当に残念ですよ、タツヤ。貴方のことは、けっこう気に入っていたんですけどね」

 

「リーナ、後悔すると言っていたな」

 

「? ええ、言いましたが?」

 

「その台詞、そのまま返してやろう」

 

「………どういう意味ですか?」

 

「俺や深雪、というかあの周りの連中に手を出すと1人、黙っちゃいないじゃじゃ馬娘がいるんだ」

 

「……………?」

 

こいつは何を言ってるんだ?みたいな顔をするリーナ。だが、「な、なんだお前は⁉︎」という達也の右にいた偽警官の声が聞こえた瞬間、言ってる意味が分かった。

 

「み、美雨⁉︎」

 

リーナに名前を呼ばれても美雨は無視して偽警官の肩を掴んでいた。指が肩にめり込むほど強く握っている。

 

「ちょっ……おまっ……痛い痛い痛い。めり込んでるよ?め、り、こ、ん、ど、る!」

 

「………てんだ」

 

「あ?」

 

「そのオモチャを誰に向けてんだって聞いてんの」

 

普段の美雨からは考えられないほどの殺意と怒気がほとばしった台詞。その瞬間、美雨は人差し指を掴んでる偽警官の頬に当てた。

 

「な、何を……」

 

黙って美雨はその人差し指に力を入れた。その瞬間、偽警官の首は360000°くらい回転してねじ切れ、その場に中心に竜巻が起こった。

 

「ちょっ……何⁉︎美雨は魔法を使えないんじゃなかったの⁉︎」

 

リーナが声を漏らすがあれは魔法じゃない。単に指で起こした竜巻だ。

 

「このっ……!」

 

達也の後ろにいた偽警察が美雨に殴り掛かる。だが、美雨が殺意を放った眼光をそっちに向けただけで、ゴフッと血を吐きながら200mくらい吹き飛んだ。

 

「! マズイな。深雪、師匠!いますよね⁉︎師匠は竜巻を消してください!深雪は美雨止めるの手伝ってくれ!」

 

達也が言うとガサッと出てくる深雪と八雲。

 

「あららっ……七割ですね……」

 

「まったく……危険な妹だね本当に……」

 

ため息をつきながら出てきた。その深雪にCADを向ける最後の偽警官。その偽警官に美雨は光速で接近し、手刀を放った。が、偽警官に外傷はない。外傷はないのに倒れた。

 

「な、何よそれ……あ、あんた!何なのよ!」

 

リーナがそう吠えた時だ。自分の身体が浮いた。気が付けば、美雨が自分の首を掴んで持ち上げている。

 

「んなっ……⁉︎」

 

急いで中型拳銃をゼロ距離で美雨に放つが傷一つ付かない。美雨は掴んでる右手に力を入れた。

 

「カハッ………!」

 

「さて、どっちだろうね?」

 

「〜〜〜〜ッ⁉︎」

 

美雨が口を歪めて言った。

 

「指が減り込んで頚動脈に突き刺さるのと、呼吸が出来なくなるの、どっちが早いかな?」

 

殺意の波動を隠すつもりもなく放ち続けている美雨。

 

「アッ…………」

 

このままじゃ両方一緒になると悟った達也は深雪に聞いた。

 

「深雪、アレはあるか?」

 

「あります、お兄様」

 

「なら貸してくれ。俺が行く」

 

達也はそう言うと、深雪から録音機を借りて、美雨の耳元に持って行った。そして、再生ボタンを押した。

 

『美雨……大好き、だよっ……?(CV.北山雫)』

 

「ゴフッ!」

 

美雨は鼻血を噴き出し、ぶっ倒れた。手の力が緩み、リーナは地面に落ちる。

 

「キャッ」

 

「大丈夫か?リーナ」

 

達也が手を差し伸べた。

 

「まったく……君も師匠使いが荒いね達也くん」

 

戻ってきたのは八雲。さっきまでの竜巻は綺麗さっぱり消えている。

 

「申し訳ありません。予想以上に美雨が怒っていたもので……」

 

「いやいや、まぁ事態が事態だったからね。仕方ないさ」

 

ちなみに美雨は「し、しず、雫ちゃあああん……にへへっ……と地面を転げ回ってる。

 

「雫が行ってしまう前に録音しておいて正解でしたね。お兄様」

 

「ああ。そうだな」

 

で、達也はリーナを見た。

 

「で、リーナ………あれ?」

 

リーナは土下座していた。

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…………」

 

トラウマ刻んでしまった。

 

 





単行本のストックが切れたので少しお休みします。次の更新は早くて10日です。





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