二人目の妹は入学すら出来ませんでした   作:スパイラル大沼
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喧嘩

 

 

 

 

翌日。さて、いつ行こうか。どこにって、レオの借りを返しに。兄ちゃんに怒られたばっかだし、昨日の今日はマズイよね。うーん……どうしたものか……。うん、明日でいいや。考えんのめんどくせっ。さーて今日はなるべく兄ちゃんに怪しまれないようにいつも通りの日常を過ごそう。そう決めるとあたしはパソコン6台の電源を入れた。最近、全然オンラインゲームやってなかったからね。久々に本気だそう。

 

 

 

 

翌日の夜。さて、行動開始しようかな。あたしが玄関に向かった時だ。深雪が待ち構えていた。

 

「どこへ行くの?」

 

「ち、ちょっとコンビニ……」

 

「ダメよ。女子高生がこんな時間にウロつくのは」

 

「えー。ケチンボ。いいじゃん別に」

 

「とにかく、家の中にいなさい。じゃないと怒るから」

 

うーむ……兄ちゃんがここまで手を回していたとは……。ならば仕方ないね。別の入り口を使おう。そう決めるとあたしは洗面所へ向かった。確か……この辺りにっと、あった。夏休みにあたしの作った地下ゲーム部屋。電気代とかなんとかでここから撤退はさせられたが穴は塞いでない。ここをあたしは開けて、とりあえず全力で穴を掘った。

 

「ゴーヤ、潜りまーす!」

 

潜る場所が違うけど。

 

 

 

 

家の近くの空き地に出た。さて、渋谷か。少し遠いけどもう何回か行ってるし、ゲーセンもあるし、行こう。で、飛ぶ。

 

「えーっと、渋谷渋谷ーっと」

 

本当に頭良くて良かったよ。地理感が無かったら飛べても空中で迷子になるのがオチだったよね。お、見っけ。あたしは直ぐに降下する。

 

「あとは自分の足で探すしかないわけだが……」

 

うーん……まぁテキトーに歩いてればエンカウントくらいするでしょ。それまでは嵐の中で輝いて、でも歌いながらのんびり歩いてよう。

 

 

 

 

どっか。エリカ、幹比古、仮面の魔法師、コートの変なのが交戦中だった。

 

「ミキはコートの方を。あたしは仮面を抑える!」

 

エリカは言うと仮面を着けた敵に襲い掛かった。そのまま刀とナイフがぶつかり合うと共に魔法も使用される。一瞬の隙も逃せない戦いだった。

ちょうどその頃、幹比古も戦闘中だった。

 

(簡単に行かないのはコッチも同じだ)

 

向かい合う相手はおそらくレオがやられた相手だろう。と、幹比古は冷静に分析する。こちらもこちらで、一瞬も隙を見せてはならない戦いだった。

 

 

 

 

その頃、ゲーセン。

 

「『これが人の夢!人の望み!人の業!』」

 

あたしガンダムなう。クルーゼさん頭おかしくて面白い。あっふぁっふぁっふぁっふぁっ。笑い疲れた。さて、今日は調子も良いし、もう20回くらいやろうかな!………アレ、あたしここに何しに来たんだっけ?まぁいいや。

 

 

 

 

気が付けば、夜10:00だった。いい加減帰らないと……。そう判断したあたしはゲーセンを出て飛んだ。すると、たまたま駅に向かってトボトボと歩いてる幹比古をみっけた。どうしたんだろう。降りてみよう。

 

「おーい!幹比古ー!」

 

「クッソ……達也めぇ……ん?美雨!どしたのこんな所で?」

 

「こっちの台詞だよ。幹比古が渋谷にいるなんて意外だなー」

 

「僕はエリカに半強制的にレオの敵討ちをしに来て……」

 

「あー!忘れてた!」

 

「な、なにどうしたの?」

 

「あたしも敵討ちに来たんだった!」

 

「いや忘れるなよそれ」

 

しまったー!クッソォッ!ガンダムめぇ!

 

「で、エリカは?」

 

「エリカは先に達也と帰ったよ。僕だけ置いてかれた」

 

「…………へ?兄ちゃん来てたの?」

 

「? うん?」

 

「い、いつ帰った?」

 

「うーん……30分くらい前かな」

 

まだ間に合う!

 

「急いで帰らないと!」

 

「まって美雨!僕も連れてって!」

 

「一高まででいいなら送るよ?」

 

「ありがと美雨!」

 

で、あたしは幹比古をお姫様抱っこして帰宅。なんか顔真っ赤にしてたんだけど風邪引いたのかな幹比古……。

 

 

 

 

一高に送った後、あたしは家に帰った。さっき掘った穴から侵入しようとしたときだ。

 

「オイ」

 

ビクッと肩が震えた。後ろから兄ちゃんの声がした。

 

「に、兄ちゃん……」

 

「言ったよな。首を突っ込むなって」

 

うっ……あの目は割とマジで怒ってるかも……。いつの間にか深雪まで後ろにいるし……。

 

「い、言いました……」

 

「どういうつもりだ」

 

「うぅっ………」

 

「何度も言わせるな。お前は俺たちの所為で退学してるんだ。だからまた同じ事を繰り返すな。今はニートだが、これから先バイトしようがまたどこか別の高校に再入学しようが、また同じように傷付いて辞めるハメになるぞ」

 

「……………」

 

「だからお前は手を出すな。いいな?」

 

「やだ」

 

あたしの言い方にカチンと来たのか兄ちゃん眉にシワが寄った。死ぬほど怖いけどなんとか言い返した。

 

「だって、レオはあたしの友達だもん。友達の仇を討って何が悪いの?」

 

「悪いとは言わん。だが、その結果でお前が良い思いをしたことがあったか?」

 

「あったよ!兄ちゃんから報酬もらえたし!」

 

そう言い返すと、兄ちゃんは「アレが不味かったのか……」と頭に手を当てる。

 

「それに、今回はあたしが個人的にイラついてるの。友達がやられたんだから。報酬なんてなくてもあたしはレオの仇を討つよ」

 

「…………」

 

すると、兄ちゃんはため息をついた。そして、目付きを一層変えて、あたしに言った。

 

「言い方を変えよう。これは魔法師の問題だ。魔法が使えないお前は引っ込んでろ」

 

「……………」

 

思わず言葉を失った。兄ちゃんにそんな事言われると思わなかった。いや過去に何回か言われてたとは思うけど、今回はクソ真面目に正面から言われた。

 

「なに、それ……」

 

思わず涙腺が緩む。そして、涙を流しながらあたしは吠えた。

 

「うるさいうるさいうるさい!兄ちゃんの仏頂面劣等生アンバランス無表情チンカスゴミカスバカアホドジ間抜け醤油に溺れて死ねェェェェッッ‼︎‼︎」

 

そのままあたしは泣きながら逃げた。

 

 





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