二人目の妹は入学すら出来ませんでした   作:スパイラル大沼
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手回し

 

 

 

 

翌日。朝、珍しく兄ちゃんに叩き起こされた。

 

「…………なに」

 

「一応、一大事だ」

 

「いぃちだいじぃ?なに、モンハン3rdXGの発売延期とか?」

 

「違う。いやそれもそうなんだが……」

 

「嘘っ。いつに?」

 

「一ヶ月だ」

 

「そんなぁー!」

 

「てかそんな事じゃなくて。エリカから連絡が入った。レオが入院した」

 

「…………レオが?誰に?何処の命知らず?」

 

「落ち着け。交通事故だそうだ。お前は心配するな」

 

「………ふーん。なんであたしに言ったの?」

 

「知らない中ではないだろう。一応言っておいただけだ。下手に隠したってお前にはバレるだろうしな。むしろ隠しててバレたほうが後が怖い」

 

「ふーん。本当に何も隠してないんだ?」

 

「ああ。隠してないよ」

 

そのまま兄ちゃんは部屋から出て行った。

 

 

 

 

達也の登校中。

 

「いいのですか?兄様」

 

「何がだ?」

 

「美雨にあんなこと言って。本当は……」

 

「ああ。だが、あいつが退学した理由は俺たちに手を貸してた事だろう。これ以上、あいつに厄介ごと押し付けるわけにはいかないよ」

 

「それは、そうですが……」

 

「だから、深雪にも頼みがある」

 

「えっ?」

 

 

 

 

あたしは家を出て、まずはレオのところへ向かった。

 

「おーい!だいじょぶかいレオー⁉︎」

 

「お、おー。美雨か」

 

「はいこれ!お見舞いのカップ麺!コンビニで一番高いの買ってきたんだ!」

 

「お、おう。病人にカップ麺買って来ちゃったかー……しかもコンビニってお前……」

 

「で、何で入院したの⁉︎」

 

「あちゃー……核心突いてきたかー……達也にも聞いてるだろうけど交通事故だよ」

 

「ふーん、その割には身体のどこにも打ち身っぽい湿布ないよ?」

 

「え?あっいや……」

 

「それに交通事故でもレオなら平気だよね?硬いし」

 

「うっ……」

 

「ねぇ、おーしえて?」

 

「ほ、ほんとに交通事故だから。あれ、ダンプカーに……」

 

「あら?美雨さん?」

 

後ろから声がかかった。いるのは真由美さんとゴリ文字さん。

 

「………達也くんの言った通りね。十文字くん!」

 

「やぁー真由美さん!お話が……」

 

「すまんな美雨」

 

「へ?ちょっ……ゴリラ?」

 

「せめて文字は付けろ」

 

つまみ出された。

 

 

 

 

うーむ兄ちゃんめぇ……。すでにここまで手が回っていたか。となると生徒会組みはダメだし、1年組みは論外。となると……そういえばエリカの兄貴って刑事だったよね。この件のこと知ってる可能性はあるよね。小さ過ぎる可能性だけど、兄ちゃんの顔の広さは尋常じゃないからなぁ……もはや学校外に手を伸ばさないと無理だよね。

あたしは学校に飛んだ。

 

 

 

 

風紀委員の部屋。あたしは窓ガラスをぶち割って突入した。

 

「摩利さぁぁぁぁぁぁぁぁんッッッ‼︎‼︎‼︎」

 

「うおっほぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ‼︎‼︎‼︎」

 

中にいたのは花音さん。

 

「あれ?花音さん?ねぇねぇ摩利知らない?………死んでる」

 

ま、いいや。摩利探しに行こーっと。あ、いた。

 

「摩利さん!」

 

「むっ⁉︎なっななななんだ美雨⁉︎西城のことなら……」

 

「シュウさんに連絡できない⁉︎」

 

「………は?なんでシュウ?」

 

「ちょっと、用があるんだよねぇ。電話でいいからさぁ」

 

「でも、シュウは割と忙しい立場だから……」

 

「もしもしシュウさん?」

 

「あっ!いつの間に私の携帯⁉︎」

 

「あーシュウさん?……うん、あたし美雨。結婚しよ?」

 

「オイ美雨」

 

「じ、じょーだんじょーだん。……で、シュウさん。お兄さんのさ……そう、なんだっけ?カズ……なんとかさん。あの人の連絡先教えて?………え?理由?いーじゃん、友達になりたいの。え?あーさんきゅ。080の……了解。ありがとね、今度あたしの処女あげる。……ぷはっ、何慌ててんの⁉︎シュウさん可愛……」

 

殴られた。摩利さんに。まぁいいや、当初の目的は果たした。何にせよ、兄ちゃんの手回しは越えたな。

 

 





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