二人目の妹は入学すら出来ませんでした 作:スパイラル大沼
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翌日。朝、珍しく兄ちゃんに叩き起こされた。
「…………なに」
「一応、一大事だ」
「いぃちだいじぃ?なに、モンハン3rdXGの発売延期とか?」
「違う。いやそれもそうなんだが……」
「嘘っ。いつに?」
「一ヶ月だ」
「そんなぁー!」
「てかそんな事じゃなくて。エリカから連絡が入った。レオが入院した」
「…………レオが?誰に?何処の命知らず?」
「落ち着け。交通事故だそうだ。お前は心配するな」
「………ふーん。なんであたしに言ったの?」
「知らない中ではないだろう。一応言っておいただけだ。下手に隠したってお前にはバレるだろうしな。むしろ隠しててバレたほうが後が怖い」
「ふーん。本当に何も隠してないんだ?」
「ああ。隠してないよ」
そのまま兄ちゃんは部屋から出て行った。
*
達也の登校中。
「いいのですか?兄様」
「何がだ?」
「美雨にあんなこと言って。本当は……」
「ああ。だが、あいつが退学した理由は俺たちに手を貸してた事だろう。これ以上、あいつに厄介ごと押し付けるわけにはいかないよ」
「それは、そうですが……」
「だから、深雪にも頼みがある」
「えっ?」
*
あたしは家を出て、まずはレオのところへ向かった。
「おーい!だいじょぶかいレオー⁉︎」
「お、おー。美雨か」
「はいこれ!お見舞いのカップ麺!コンビニで一番高いの買ってきたんだ!」
「お、おう。病人にカップ麺買って来ちゃったかー……しかもコンビニってお前……」
「で、何で入院したの⁉︎」
「あちゃー……核心突いてきたかー……達也にも聞いてるだろうけど交通事故だよ」
「ふーん、その割には身体のどこにも打ち身っぽい湿布ないよ?」
「え?あっいや……」
「それに交通事故でもレオなら平気だよね?硬いし」
「うっ……」
「ねぇ、おーしえて?」
「ほ、ほんとに交通事故だから。あれ、ダンプカーに……」
「あら?美雨さん?」
後ろから声がかかった。いるのは真由美さんとゴリ文字さん。
「………達也くんの言った通りね。十文字くん!」
「やぁー真由美さん!お話が……」
「すまんな美雨」
「へ?ちょっ……ゴリラ?」
「せめて文字は付けろ」
つまみ出された。
*
うーむ兄ちゃんめぇ……。すでにここまで手が回っていたか。となると生徒会組みはダメだし、1年組みは論外。となると……そういえばエリカの兄貴って刑事だったよね。この件のこと知ってる可能性はあるよね。小さ過ぎる可能性だけど、兄ちゃんの顔の広さは尋常じゃないからなぁ……もはや学校外に手を伸ばさないと無理だよね。
あたしは学校に飛んだ。
*
風紀委員の部屋。あたしは窓ガラスをぶち割って突入した。
「摩利さぁぁぁぁぁぁぁぁんッッッ‼︎‼︎‼︎」
「うおっほぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ‼︎‼︎‼︎」
中にいたのは花音さん。
「あれ?花音さん?ねぇねぇ摩利知らない?………死んでる」
ま、いいや。摩利探しに行こーっと。あ、いた。
「摩利さん!」
「むっ⁉︎なっななななんだ美雨⁉︎西城のことなら……」
「シュウさんに連絡できない⁉︎」
「………は?なんでシュウ?」
「ちょっと、用があるんだよねぇ。電話でいいからさぁ」
「でも、シュウは割と忙しい立場だから……」
「もしもしシュウさん?」
「あっ!いつの間に私の携帯⁉︎」
「あーシュウさん?……うん、あたし美雨。結婚しよ?」
「オイ美雨」
「じ、じょーだんじょーだん。……で、シュウさん。お兄さんのさ……そう、なんだっけ?カズ……なんとかさん。あの人の連絡先教えて?………え?理由?いーじゃん、友達になりたいの。え?あーさんきゅ。080の……了解。ありがとね、今度あたしの処女あげる。……ぷはっ、何慌ててんの⁉︎シュウさん可愛……」
殴られた。摩利さんに。まぁいいや、当初の目的は果たした。何にせよ、兄ちゃんの手回しは越えたな。