二人目の妹は入学すら出来ませんでした 作:スパイラル大沼
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リーナをどうしようか迷ったものの、あたしはその場で叩き起こすことにした。そんなわけで、まずは制服とパンツを脱がせて……、
「美雨。やめろ」
「え?舐めろ?」
「言ってない。やめろ。起こすなら普通に起こせ」
「普通にって言っても、もうブラジャーにしちゃったよ?」
「あ、本当だ。じゃあ起きたら携帯で呼んでくれ。俺は何処かで時間潰してるよ」
「ここにいればいいじゃん」
「周りから見たら兄妹二人で留学生を襲ってるように見えるだろう」
「そっかー。じゃ、後で呼ぶね」
そのまま兄ちゃんは去った。さて、引き続き起こすか。と、思った時だ。
「な、何やってるの司波さん⁉︎」
声のする方を見ると、誰だか知らない女の子が数人、立っていた。あっやべっ。
「た、大変!司波さんが女の子を襲ってるわ!」
「あれ、留学生の子じゃない?」
「風紀委員を呼びましょう!」
ごめん……深雪。南無三。
*
とりあえず、リーナを連れて屋上に一秒で逃げた。
「おーい。起きてーリーナー。起きないと殴るよ……」
「お、起きます起きます!起きますから殴るのやめて下さい!」
ガバッと起き上がるリーナ。どうやら「殴る」というトラウマを刻んでしまったようだ。
「って、あっああああんたは!筋肉お化け!」
「ち、ちょっと!ピチピチの女子高生に筋肉お化けはないんじゃないの⁉︎」
「あんな校舎を一撃でぶち壊す女子高生の何処がピチピチよ!」
「うぅ〜………ひどいよリーナぁ〜……あたしだって好きでこんな力手に入れたんじゃないのにぃ〜………」
「あっ……別にそんなつもりで言ったんじゃ……」
「ちょっと毎日筋トレと師匠の修行を受けてただけだよ!」
「バリバリ強くなる気あったんじゃない!」
で、フゥーッフゥーッとお互い息を落ち着かせる。
「大体、さっきまでの大人しくて上品で清楚キャラはどこに行ったのよ!」
「あたしが上品で清楚じゃないっていうの⁉︎あたしはね、こう見えても大統領のお茶会に招かれたことだってあるんだから!」
「はっ、『こう見えても』って言ってる時点で手遅れだねー!清楚じゃないことバラしてるねー!」
「うるさいうるさいうるさーい!」
「シャナかあんたは!」
「ほう、大統領の、なぁ」
急に男の声が聞こえて、横を見ると兄ちゃんが立っていた。
「あっ。は、はめたわね……!」
「はいでましたー。自分が勝手に自爆した癖に人のせいにする奴。やだねーそういうの」
「あ、あんたは黙ってなさいよミウ!」
「黙りませぇーん」
「美雨黙れ」
兄ちゃんに言われたので黙った。
「それで、何故あんな事をしたのか、事情は説明してもらえないのか?」
あんな事、とは恐らくあたしに殴りかかってきた時の事だろう。
「美雨の腕を知りたかっただけよ」
すると、あたしは袖を捲って、腕をリーナの目の前に見せ付けた。
「ほら、これがあたしの腕よ!」
「そういう意味じゃないわよ!あんたはもっと日本語を勉強しなさい!」
「美雨、話が進まん。大人しくしてろ」
言われて体育座りした。
「で、なぜ美雨の腕を?」
「こっちに来た時にたまたま知ったのよ。都市伝説でとんでも怪力お化けがいるって」
「それがなんで美雨だと?」
「この前の神社の時で一発で分かったのよ。あ、こいつだって」
「………なるほどな。そういう事にしておこう。でもこういう事はこれっきりにしてくれよ」
「え?う、うん……わかった」
「ていうか、これっきりにしないと美雨の三割のパンチが当たったお前弾け飛ぶからな」
「はぁ?何言って……」
と、言い掛けてリーナは壊れた校舎を見た。
「………そうかもね」
*
そんなこんなで、翌日。今日はあたしはゲーセンにいる。こんな平日の真昼間からゲーセンにいるのはあたしだけだ。だから、少しばかりハイテンションになっても問題ない。
「『このターンXすごいよおおおおおっっ‼︎‼︎』『月光蝶であるッッ‼︎‼︎』『つまらんなァッ!つまらんなァッ!つまらんなァッ!』」
いやっほぉいっ!たぁのしいぜいっ!やっぱこういうのいいわ。パイロットは声出してやればストレスも発散出来るし楽しい。
「あっふぁっふぁっふぁっふぁっ‼︎」
「何やってんのよあんた」
後ろから声が掛かって、振り返るとリーナがいた。
「んなっ⁉︎な、なんでここに⁉︎学校は⁉︎」
「家の用事で休んだのよ。で、今はお昼休憩」
「お昼休憩でなんでゲーセンにいるの⁉︎」
「外からあんたが見えたからきたのよ。あんた昼間っからゲーセンでガンダムなんて、まるでニートね」
「ゲッファ!」
「しかもそこの大量に両替してある100円玉は何?まだやるつもり?」
「ゴファッ!」
「こんの、クソニートが」
「ゲッフォアッ!……ご、ごふっゴフッ……」
ひどい……あたしのこと嫌いなのかなこの子……。
「ふんっ。これで懲りたかしら?分かったら私にはもう生意気な口聞かないことね」
勝気な笑みを残してリーナは店から出て行こうとした。だがその途中、クレーンゲームが目に付いた。
「何よこれ……超可愛い!」
中にあったのはリラ○クマのぬいぐるみ。早速、金を投入。だが取れない。
「んなっ⁉︎も、もう一回よ!」
だが取れない。
「もっかい!」
だが取れない。てか、あれじゃ一生取れない。
「ヘッタクソだなぁ」
「な、なんですって⁉︎」
「そんなんじゃ8億回やっても取れないよ」
「んなっ……!そ、そこまで言うからにはあんたは取れるんでしょうね⁉︎」
「当然」
「じ、じゃあ、やってみなさいよ!」
「ほう?で、あたしが手に入れたらそれを強奪し、手に入らなかったらバカにして楽しむという作戦かな?いやーどっちに転んでもリーナの得になるいい賭けだね」
「んぐっ……!」
「あたしは別にこれいらないし、あたしの腕が見たいなら他のクレーンゲームでもいいよね?もし、これをリーナが取ってほしいなら、あたしの言うことを明日なんでも一つ聞きなさい!」
「むぐっ……!し、仕方ないわね。その代わり、取れなかったらあんたがあたしの言うこと聞くのよ?」
「いいよ?じゃ、やろっか」
結果、取った。
「はいこれ」
「んなっ……⁉︎」
「明日、楽しみにしてるから。やすんだら顎に廻し蹴り決めるからね?」
膝を着くリーナを捨て置いてあたしは再びゲームに戻った。