二人目の妹は入学すら出来ませんでした 作:スパイラル大沼
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我が家、あたしはゲームをしながらリビングで寛いでいた。
「で、兄ちゃん。シリウスってなんなの?」
「………何が『で、』だ。前の会話なかったろうが」
で、兄ちゃんはコーヒーを口に含むと言った。
「聞いてたのか?」
「わざと聞いたんじゃないよー。たまたま耳に入っただけ」
「ま、それなら話すよ。実は今回留学生が来たのは一高だけではないんだ。二、三、四高校にもあったみたいなんだ。この前の横浜の件で飛行魔法の軍事的有効性が飛び切りのものだって分かって、焦って探りを入れに来たんじゃないかって、エリカと幹比古が話していた」
「つまり、そのシリウスブラックだとしたら辻褄が合うってこと?」
「まぁ、な。だがかえって分からないことが多いんだ。まぁ安心しろ。お前にはなるべく何かさせるつもりはないよ」
「うん!あたしもあんな可愛い子殴りたくないしね!」
………で、結局シリウスって何?なんかすごいってことしか分からなかったんだけど。
*
翌日の放課後。「放課後」を「ほうかご」と書くと可愛くなるよね。これをさらに、「ほおかご」と書くとこれまた可愛くなる。あーちゃんさんあたりに無邪気に言わせたらこれはもう、アンパンに牛乳くらいベストマッチだろう。そんな事を考えながらも放課後である。兄ちゃんが風紀委員に行くというので、一緒に風紀委員の教室に到着。
「おはようございます」
「………夕方だよ?」
「そういう挨拶なんだここは」
へー。時間を無視しちゃうんだ。まぁどうでもいいけど。
「あっ、司波くん。……あと美雨ちゃん?なんでここに?あ、いや愚問だね。聞いちゃダメだね。司波くん」
なんか自己完結しましたよこの人。あ、花音さんね。
「よっす花音さん!あたしと結婚しよーぜ☆」
「ごめんね、先約がいるから。で、司波くん。こちらシールズさんのことは知ってるよね?」
へ?リーナちゃんいるの?
「ええ」
「リーナちゃあああああん!」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「シールズさんから風紀委員の活動を見学したいって言われてるの。日本の魔法科高校の生徒自治を見てみたいんですって。司波くん、今日登板でしょ?彼女を連れて行ってもらえないかな?」
「分かりました」
「ちょっ……ここ風紀委員でしょ⁉︎この子風紀乱しまくっ……やめてとめてやめてとめて……!あっ」
*
そんなわけで廊下。あたしとリーナは二人で歩き、その後ろを兄ちゃんがついてくる。
「それで、なんでいきなり風紀委員なんかに顔出したの?」
「へ?いや……気になっただけよ。どんなことするのか」
「リーナの通ってた学校には風紀委員とかないの?どこの学校にも風紀委員くらいあるもんだと思うけど」
「え、ええっと……」
あたしが聞くと、言葉に詰まるリーナ。あー!正体バラさないように返答に迷うリーナちゃんすごく可愛い!
「でも、風紀委員なんかに興味持つなんてクソ真面目なんだねー」
「え?え、ええ。そうなの……」
「あーでもクソ真面目だったら元の学校でも風紀委員会にくらい興味持ってるよね」
「……………」
もう何も言い返してこないリーナちゃん。やだほんとこの子可愛い。でもね、お前がスパイで来たとしたらね、そんな事であたしから雫ちゃんを奪ったんだとしたらお前、オリオン座の一部にすっからな。
*
そのまましばらく校舎を解説することしばらく……あ、あたしも解説された方ね。してたのは兄ちゃんだけ。すると、急にリーナが足を止めた。
「疲れたのか?戻ろうか?」
兄ちゃんが優しく聞いた。
「いいえ、大丈夫よ」
そこで言いにくそうに言葉を切るリーナ。そして、あたしを見た。
「ミウは、ニートなのよね?」
「グハッ!」
吐血して倒れた。廊下に崩れ落ち、口から血が流れる。
「そ、そうですけど……?」
「平日なのにこの学校の生徒でもないのにいるからミユキに聞いたら、泣きながら事情を話してくれたわ」
うわあ……何も退学した理由くらいで泣かなくても……あの子も大概シスコンだなぁ……。
「でも、さっきカノンに聞いたらそこらの魔法師より強いって」
「え?あーうんまぁ……」
すると、リーナの手が跳ね上がった。襲い来る掌底。それをあたしは躱して、リーナの顔の横スレスレを軽く殴った。あたしの拳は壁におもいっくそ突き刺さり、壁が一撃で吹き飛び、校舎の1/5くらいが崩れ落ちた。
「」
「あたしに女の子を殴らせないでくれるかな?」
にっこり微笑む。だが、リーナの様子がおかしい。
「あら?気絶してる?」
「それよりこの校舎どうすんだお前」
兄ちゃんにグサッと言われた。
「ニートのくせにどうすんだ?」
「ニートニート言うなあ!」