二人目の妹は入学すら出来ませんでした 作:スパイラル大沼
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空港。
「うええええっ!雫、元気でね!」
「うんっ……。ほのかもね……」
と、雫のお見送り。そんな中、深雪が美雨の肩を叩いた。
「あなたは参加しなくていいの?」
「え?うん。だって二人の邪魔したら悪いじゃん」
美雨が言うと、目を丸くして驚く深雪。
「驚いた。あなたに気を使う、なんて行動ができるのね」
「どういう意味⁉︎あたしだって人だもん。それくらい出来るよ」
なんて話しながらも、雫は飛行機に乗り込んだ。その飛行機の飛び立つ様子をみんなで眺めてると、達也が声を上げた。
「おい、美雨は何処へ行った?」
「えっ?」
達也の台詞にマヌケな声を上げる美月。全員でキョロキョロするが、見当たらない。
「………まさか」
飛び立つ飛行機をよーく見ると、飛行機の下に張り付いてる人影があった。そして、達也の携帯にピコンッと連絡が入る。
『ちょっとアメリカに行ってきます☆』
『今すぐに落ちて来ないと一生家に入れない』
飛行機から何かが落ちてきた。
*
そんなこんなで三学期が始まった。と、いうのも学生にとっての三学期で、フリーターのあたしは365日長期休みみたいなものだ。で、今は教室。
「何かすっごい美少女なんだって」
エリカが興奮気味に言った。留学生の話をしている。
「キレーな金髪でさ、上級生まで見に来てるらしいよ」
「美少女⁉︎あたしの嫁入り決定だね!」
「待て、何故いる」
兄ちゃんがあたしに言ってきた。
「へ?何故って?」
「いちゃ悪い?みたいに聞くな。お前はまずこの学校の生徒ですらないだろ」
「だって暇だもん。雫ちゃんいなくて寂しいし」
「バレたらどうするんだ?」
「バレるも何も……二科生の教室には担任とかいないんでそ?だったらここにいるよ」
「まぁ、そうだが……もういいや、どーでもいっ。その代わり、この教室、生徒会室、トイレ以外は出禁だ。それと廊下を使う際には肉眼では追えない速度で移動すること、いいな?俺の責任にされたくない」
「ほーい!」
「この命令に元気よく返事出来るんだもんね……」
呆れ気味に幹比古が言った。
「じゃ、その留学生さん見てくるね!行ってきま……」
「待てハゲ」
「ハゲ⁉︎」
「話を聞いてなかったのかお前は。この教室から出るなと言ったんだ」
「むぅ……じ、じゃあその金髪美少女転校生とあたしは触れ合えないの……?」
「ああ。そうなるな」
「ひどひ!」
「いいから座ってろ。そろそろ授業だ」
おっ、魔法科高校の授業か。少し楽しみかもしれない。
*
昼休み。達也達、逆から読んでも達也達は食堂にいる。美雨は達也達が戻ってくるまで……あ、しつこい?分かった、もうやらない。達也たちが戻ってくるまでトイレにいる。すると、深雪とほのかともう一人、少女がやってきた。
「ご同席させてもらって良いかしら」
どっかで見た……つーか、神社で見た女の子だった。金髪の。美雨が見たら大騒ぎしそうだな、と思いつつも達也は返事をした。
「もちろん、どうぞ」
すると、深雪が金髪の少女に言った。
「リーナ、まずお皿を取って来ましょう」
「お皿……ああ、食べる物、という意味ね。分かったわ」
そのまま深雪とリーナ、と呼ばれた少女とほのかはカウンターへ向かった。で、戻ってきた。
「お待たせしました、お兄様」
言うと、達也の横に腰を下ろす深雪。
「達也さん、ご紹介しますね」
達也の正面に座りながらほのかが言った。
「アンジェリーナ=クドウ=シールズさん。もうお聞きのこととは思いますけど、今日からA組のクラスメイトになった留学生の方です」
「ホノカ、こちらの方だけでなく、他の皆さんにも紹介して欲しいのだけど?」
「え、あっ、ご、ごめんなさい!」
当然の突っ込みをくらい、慌てるほのか。すると、「まあ、ほのかだしね」みたいな空気になり、赤面するほのか。
「じゃあ改めて。アメリカから来たアンジェリーナ=クドウ=シールズさんよ」
「リーナと呼んで下さいね」
深雪に紹介され、頭を下げるリーナ。すると、E組の面子も答えた。
「E組の司波達也です。深雪と区別がつかないでしょうから達也でいいですよ」
「あたしは千葉エリカ。エリカで良いよ、リーナ」
「私は柴田美月です。美月と呼んでください」
「オレは西条レオンハルト。レオで良いぜ」
「吉田幹比古です。僕のことも幹比古で良いよ」
それぞれ紹介していく。すると、目をパチパチさせるリーナ。
「シバ、ミウさんはいないの?」
その瞬間、ほんの一瞬達也の目が鋭くなる、がいつもの表情に戻って聞いた。
「何故、美雨のことを?」
「あっ、ごめんなさいお兄様」
その問いには深雪が答えた。
「私には妹がいると言ったのです。申し訳ありません」
「そういうことか、構わないよ深雪」
で、リーナに向き直る達也。
「美雨はこの学校にはいないよ。別の高校だ。というか、今は高校にすら通っていない。ニートだ」
「NEET……本当に存在するのね、日本には」
「それ、本人の前では言ってやるなよ……多分、泣くから」
達也が言うと、周りは苦笑いする。
「まぁとにかく、エリカ、ミヅキ、レオ、ミキヒコね。よろしく」
リーナが改めて言うと、全員は微笑んだ。だが、ミキヒコ、の発音がミキ・ヒコに聞こえた気がしたので、エリカが言った。
「言いにくいでしょ?ミキヒコじゃなくても、ミキで良いんじゃない」
「あら、そう?じゃあお言葉に甘えて、ミキ、で良いかしら?」
そう言い、互いの自己紹介を終えた。
*
放課後。深雪とリーナとほのかが校舎から出てきた時だ。何かの気配に気づいて深雪は上を向いた。瞬間、自分と全く同じ顔をした女の子が降ってきた。
「リーナ!逃げっ……!」
声をかけた時には遅かった。美雨はリーナを抱き締めて再び空中に舞い上がった。
「うわあ……カワセミみたい……」
ほのかの呟きはともかく、美雨は空中でリーナを抱き締める。
「うっはぁーあ!どっかで見た金髪碧眼美少女ちゃんじゃん!なに、留学生ってこの子⁉︎可愛い可愛い可愛い!オッパイも雫ちゃんより柔らかくて……クンカクンカスーハースーハー」
「イヤァァァァァァァッッッ‼︎‼︎な、何⁉︎誰⁉︎って、深雪⁉︎」
「洋服剥いでいい?」
「いいわけないでしょ⁉︎」
「答えは聞いてない!」
「何よそれ!」
「ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ…………」
「いやァァァァァァァァッッッ‼︎‼︎‼︎」
その瞬間、美雨が凍って殴られて斬られた。深雪、達也に続いて、エリカが参加した。地面に落下する美雨と、エリカに抱えられて着地するリーナ。
「大丈夫?リーナ」
「え、ええ……ありがとう」
「エリカ、協力ありがとう」
深雪がお礼を言う。
「ううん。これからはこういう時はあたしも加わるから。よろしくね」
「本当に感謝する。いやマジで」
達也もお礼を言った。すると、地面に減り込んだ美雨が、ケロっと頭を上げた。
「いったいなー!なにすんのさ‼︎」
「こっちの台詞よ!」
大声を出したのはリーナだ。
「な、なんなのあんた……⁉︎もう一人の深雪⁉︎」
「は?何を言ってるのかサァッパリ分からなぁい」
腹立つトーンで美雨が言うと、ビキッとこめかみにシワを寄せるリーナ。そのリーナに深雪が言った。
「ごめんなさい。あれが私の妹、司波美雨よ」
「へ?あ、アレが……?」
「そだよー。金髪碧眼美少女さん、お名前は?」
「………あ、アンジェリーナ=クドウ=シールズよ」
「そっか!じゃあ、アンジーって呼ぶね!」
美雨がそう言った瞬間、リーナの目付きは鋭くなったが、すぐに戻すと、言った。
「いいえ、リーナって呼んで?」
「ほえ?なんで?」
「なんでって……」
「美雨」
口を挟んだのは達也だ。
「本人がその方がいいと言っているんだ。従え」
「はーい。じゃ、少し変えてジュドーとかどうかな⁉︎」
「何処をどう変えたらそうなるのよ!」
「お兄ちゃんにしてみた感じ」
「は、はぁ?」
「………あー、通じないかー……じゃあリーナでいいや。厳密にはリィナだった気もするし。とにかくよろしくね!」
美雨が笑顔で言うと、リーナもぎこちない笑顔で「よ、よろしく……」と言った。