二人目の妹は入学すら出来ませんでした 作:スパイラル大沼
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で、元旦。なんでも師匠の所に挨拶に行くようで、みんな朝から支度している。
「あけましておめでとうございます。お兄様」
「あけましておめでとう。美雨」
「あれ?バレた?」
「当たり前だ」
「ちぇー。つまらん」
本当につまらん。ここで間違えたら深雪が怒っただろうになぁ。なんて話してたら、今度こそ本物が登場したのか、深雪がやってきた。着物着て。
「うん、綺麗だ」
兄ちゃんがそれを見るなり微笑みながら言った。
「もう、お兄様ったら……からかわないで下さい」
顔を赤くして上目遣いで抗議する深雪。これが姉じゃなかったら全力であたしの嫁入りさせてたのになぁ……。
「からかってなどいないんだが……。で、美雨は着物着ないのか?」
「着るわけないじゃん。時間掛かる、動きずらい、寒い、メリットなさすぎ」
「だよな。知ってた。じゃあ行こうか」
兄ちゃんがそう言うと、あたし達は出発した。
*
初詣ってことでみんなと集合。小野先生とやらと、ほのかちゃん、美月、レオの三人にあたし達と師匠が集まった。
「わっ、深雪さん、キレイですねぇ!」
美月の第一声がそれだった。で、隣のほのかちゃんが兄ちゃんに向かって言った。
「明けましておめでとうございます、達也さん。よくお似合いです。少し意外ですけど」
「ほのかちゃん!可愛い!」
振袖姿のほのかちゃんに思わずあたしが口走った。そのままぺろぺろしてやろうかと思ったが、なんとか自制。
「明けましておめでとう。ほのかもよく似合っているよ」
なんのテレもなく兄ちゃんが言うと、ほのかちゃんは嬉しそうに微笑む。
「でも意外、ってことは、やっぱり少し違和感があるのだろうか?」
「そんなこたぁないんじゃねぇの?達也、良く似合っているぜ。どこの若頭って貫禄だ」
「俺はヤクザか」
レオの言い草に的確なツッコミを入れる兄ちゃん。するとレオはあたしの方を見て言った。
「ていうか、美雨は振袖とか着ねぇのか?」
「着るわけないじゃん?」
「せっかく深雪と同じ顔してんのに勿体ねぇなぁ」
ほっとけ、あたしは外見より機能性を重視するのよ。
「そうねぇ、確かに深雪さんと同じ顔なのに勿体無いわ」
「そうだよねぇ。それに僕としては実は美雨くんの振袖姿を見たかったりもするんだよ」
少し遅れて小野さんと師匠がやってくる。
「あれっ、遥ちゃん。明けましてオメデトーございます」
「明けましておめでとうございます、小野先生。……達也さん、こちらの方は?」
レオとほのかちゃんが続いて聞くと、兄ちゃんはいった。
「九重寺住職、八雲和尚。俺たちにはもしかしたら、忍術使い・九重八雲師の方が通りが良いかな?俺たちの体術の先生だ」
「じ、じゃあ美雨のバカ力の秘密も……!」
「いやそれは美雨くんの自力だよ」
レオの台詞を一発で一蹴する師匠。
「なるほど、だから日枝神社にしようって話にしようって話になったんですね」
ほのかちゃんが納得したように言った。で、全員で神社へ。長い階段を上って神門をくぐり、拝殿前の中庭に入る。瞬間、あたしは突撃した。
「金髪碧眼美少女はっけええええええんっっ‼︎‼︎」
「み、美雨ちゃん⁉︎」
ほのかちゃんの反応を無視して、そのまま抱き着……こうとしたらいなくなってて神社の木を5、6本薙ぎ倒してコンクリートの壁に減り込んで止まった。
「何をしてる。馬鹿者」
兄ちゃんに尻をチョップされた。
「ち、ちょっと!兄妹だからって変なとこ触んないでよ!」
「お前、よく気付いたな。あの子のこと」
「あたしより先に気付いたくせに何言ってんの?」
「まぁな」
なんだったんだろう。あの子。