二人目の妹は入学すら出来ませんでした 作:スパイラル大沼
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退学
高校。あたしの高校ね。教室に入ると、全員があたしの方を見た。そして、非難の視線。
「……………」
フィールドワークが終わってから、ずっとこの調子だ。理由は、あたしが暴れ回ってるところをクラスの子が目撃してしまい、扱いは完全に腫れ物扱いだ。
「はぁ……」
思わずため息をついた。いずらいなんてものじゃない。まぁ人のことバンバンぶっ殺してたから仕方ないんだけどさぁ……誰のために戦ってたと思ってんだっつの。半分はあたしのストレス発散だけど。
そんなことを考えながらあたしが席に着こうとした時だ。机の上に落書きがあった。
「…………」
『人殺し、怪力馬鹿、化物、暴れん坊将軍、下痢気味、ペチャパイ』
などが油性ペンで書かれている。とうとうここまで来たかぁー……。が、奴らがここまでの暴挙に出たのは、これ見てイラついたあたしを暴れさせて退学にさせるためだろう。いいよ、あんたらの思い通りになってあげる。そう決めるとあたしは職員室に向かった。
*
「じゃあ、また明日な」
達也はそう言うと、普段のメンバーと別れ、深雪と自分達だけの帰り道へ。そのまま自宅に入った。
「ただいま」
達也がそう言うと、深雪が反応した。
「あら、美雨が帰ってるのですか?」
「ああ。普段ならゲーセンか古本屋かにいるはずなんだがな」
なんて話しながら二人はリビングへ。だが、美雨はいない。
「? いないな……部屋でゲームか?」
「呼んで来ましょうか?」
「いや、いい。ゲーム中なら何を言っても無駄だ」
「そうですね」
と、いつも通りの日常。だが、夜の8:00になってもリビングに降りてこなかった。もう深雪の作った飯が食卓には並んでいる。
「………呼んでくるか」
「いえ、私が行きます」
「そうか。すまない」
深雪は席を立って美雨の部屋の前は。コンコンとノックした。
「美雨、ご飯よ」
しかし、返事はない。
「入るわよ?」
返事を待たずに部屋に入った。部屋の中は真っ暗でテレビの灯だけがついている。美雨が布団の中に包まって、ピコピコとコントローラーを握って、虚ろな目でゲームをしていた。
「美雨?」
「深雪……」
「………どうしたの?」
「退学した」
「ごめん聞き間違えたかも、もう一回言ってくれる?」
「退学した」
「………………」
そう答える美雨は少し寂しそうな顔をしていた。
*
てなわけで、家族会議。あたしは兄ちゃんと向かい合うように座った。
「で、どういうことだ美雨?」
あいも変わらず怒ってるのか怒ってないのか分からない無表情であたしを睨む兄ちゃん。
「なぜ辞めた?」
「うーん……まー理由は虐め、かな」
「虐め?お前を虐める勇気のある人間がこの世にいるのか?」
「うん」
あたしはあっさりと答える。
「それならせめて辞める前に俺や深雪に相談するとか、教師側に言うとか……」
「そういう手も考えなかったわけじゃないよ?でも、多分あたしをクラスから追い出したいと思ってるのはクラス全員の意思だし、そんな所にいつまでもいても空気悪くするだけじゃん?こっちも向こうも気分悪いし、お互いのためにならないでしょ」
「クラスから追い出したい?なんでだ」
「この前の横浜ん時さー。あたしが暴れてたところ見られてたらしくてね。人殺し呼びわりだよ」
「……………」
「あー兄ちゃんのせいじゃないよ。あたしが暴れたかったから暴れただけだし。テロリストとかムカつくじゃん?だから兄ちゃんが気にやむ必要全く無し。まぁしばらくはバイトして暮らすから許して」
なんでだろーね。大して考えてもないのに口から言葉がポンポン出るよ。
「だから、ほんと気にしないで……? あっ、あた、あたしは頭良いし、運動もで、出来るから……その将来は東大なりなんなり、入ろうと思えば、入れるし……なんとか、なんとかするからさ……だから……」
おかしいな……涙が出て来る。なんでだろ……別に、学校の奴にどんな風に思われたって……平気なはずなのに……。
「美雨………」
深雪が心配そうな声を出す。兄ちゃんもあたしをジッと見つめている。
「………ごめん。ご飯いらないや。食欲ないし。もう寝るね」
なんとかそう言うと、あたしは自室に籠もった。