二人目の妹は入学すら出来ませんでした   作:スパイラル大沼
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姉妹2

 

 

そのまましばらく飛んでいると、美月が「あっ」と声を漏らした。

 

「美月、どうしたの?」

 

深雪が聞く。

 

「えっと、ベイヒルズタワーの辺りで、野獣のようなオーラが見えた気がして……」

 

「野獣?美女は?」

 

私が聞いた。

 

「いやそんないい野獣じゃなくて……クッパ的な野獣」

 

おぉうわかるんだからわからないんだか……という例えだったが、幹比古が突然声を上げた。

 

「敵襲⁉︎」

 

「確かなの?」

 

「でも敵は義勇軍が押し返しているはずよ」

 

エリカと花音さんが続けざまに問い掛ける。だが、幹比古は首を横に振った。

 

「少人数による背後からの奇襲です。恐ろしい呪力を感じます。戻りましょう、協会が危ない」

 

最後の言葉は元会長さんに向けた言葉。だが、真由美さんは迷いの瞳を浮かべて摩利さんと顔を見合わせた。見れば、周りも少しながら辛そうな表情をしている。そりゃそうだ。もう助かると思っていたのだから。再び戦場に行きたがるバカはいないだろう。あ、あたしがいるか。

 

「………あたししかいないか」

 

「? 美雨?」

 

雫ちゃんが心配そうに声をかけてきた。あたしはあえて笑顔で答えた。

 

「雫ちゃんはみんなと先に逃げてて。ちょっと、行ってくるから」

 

「ど、どういう意味?」

 

聞かれるが、あたしは無視して立ち上がった。

 

「雫ちゃん」

 

「な、何?」

 

無言であたしは雫ちゃんのおデコにキスをした。

 

『ッッッ⁉︎』

 

全員が全員、顔を真っ赤にした。それを無視してあたしはヘリコプターの出口の前に立った。

 

「み、美雨さん?どうするつもり?てかどういうつもり?」

 

真由美さんに聞かれる前にあたしはドアを開けた。

 

「じゃ、みんな無事に逃げてね」

 

それだけ言うとあたしはヘリコプターから飛び降りた。

 

「み、美雨ー!」

 

雫ちゃんの叫びも虚しく、あたしは飛び立った。

 

 

 

 

「さて、やりますか……」

 

「何が、やりますか、よ」

 

「ふえっ⁉︎」

 

背中から声がして振り返ると深雪が背中にいた。

 

「な、なんでいるの⁉︎」

 

「妹一人に行かせるほど、私は薄情じゃないのよ」

 

「いやいやいや!いなくていいって!深雪のこと守りきれなかったら兄ちゃんに何て言えば……!」

 

「何を言ってるの?」

 

そこで言葉を切って深雪はあたしを見た。

 

「私があなたを守る方よ」

 

「………へぇ、言ってくれるじゃん。あたしに勝てる気でいるの?」

 

「ふうん?私が全力を出したところを見たことあるの?」

 

「上等だよ。足引っ張らないでよね」

 

「そっちこそ」

 

そう言うとあたしと深雪は敵の元へ降りた。

 

 

 

 

ズゥゥゥンッ!と美雨と深雪が落下すると、人数は多くはないが、少なくとも2人よりは多い数の敵がいた。その時、美雨は視界に真っ先に入った人物を見て、思わずため息をついた。

 

「あんたもしつこいなぁ……人食いゴリラ」

 

視線の先には呂剛虎が兜とか鎧を装備して立っている。

 

「アレは……人食い虎?」

 

「そっ、深雪。あいつの相手はあたしがするから、他の周りの雑魚は任せるよ」

 

「ええ。無理はしないでね」

 

「そっちこそ」

 

二人はそう言って微笑み合うと、敵の大群に向かっていった。

 

 





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