二人目の妹は入学すら出来ませんでした   作:スパイラル大沼
<< 前の話 次の話 >>

61 / 91
再生2

 

 

 

 

ヘリの中。沿岸部から内陸へ脱出するヘリの中は沈黙に包まれていたが、あたしは陽気に雫ちゃんに話しかけた。

 

「いやー楽しかったね雫ちゃん!煙乱闘編!」

 

「そんな名前、初めて聞いたし、空気読んで欲しいし、趣味悪いよ。殺し合って楽しかった、なんて」

 

「いやーそう言われるとそうなんだけどさぁ……。ほら、なんかアニメとかであんな風に無双するシーンって中々ないじゃん?」

 

「それはそうだけど……」

 

「美雨、黙りなさい」

 

ジロリと深雪に睨まれてあたしは黙った。な、なんでみんなそんなに暗いの……?

 

「……自分の身に起こったことだというのに……まだ信じられないよ」

 

五十里さんがポツリと呟いた。

 

「一体、何が起こったんだ?何をどうすりゃ、こんなことが可能なんだ?」

 

続いて、桐原さんも。

 

「いっそ、全部幻覚だったって言われた方がまだ納得できるぜ」

 

「でも、幻覚じゃない。僕が死にかけたのも、君の足が千切れたのも、紛れも無い事実だ」

 

再び沈黙が流れた。うーん……暗い雰囲気は得意じゃないんだけどな……。雫ちゃんも黙り込んじゃってるし……。

 

「歌を歌おう!羞恥心!」

 

「美雨、本当に黙りなさい。それはあなたが今一番知るべきものよ」

 

うぅ……なんでよぉ……。もういいや、ゲームやろ。あたしはフィールドワークのリュックの中から4DSを取り出した。

 

「……司波、これだけは教えといてくれ」

 

桐原さんが重々しく口を開いた。

 

「ん?」

 

「何でしょうか?」

 

「ああ、えっと姉の方な」

 

言われてあたしは再びゲームに戻る。スマブラ〜鬼怒川温泉湯けむり殺人事件〜を起動した。

 

「達也くんの魔法は、どの程度効果が持続するんだ?」

 

「永続的なものです」

 

『天、空ッ‼︎』

 

深雪は即答した。それに驚く面々。

 

「運動の制限もありません。完全に、いつも通りの生活が可能です」

 

「………そんなことが可能なのか?」

 

桐原さんが再び尋ねた。

 

『ピカチュウッ‼︎』

 

「気になさるのは当然だと思います。皆さんに打ち明けるだけなら、お兄様も許してくださるでしょう」

 

『イッホーウッ‼︎』

 

「美雨、音消すかイヤホンくらいしなさい」

 

怒られたので音を消した。

 

「てか深雪、いーの話しちゃって?」

 

「大丈夫よ。ここにいる方達なら」

 

「ふーん、あたしは関係ないからね」

 

そのまま再びゲームに戻る。深雪は口を開いた。

 

「お兄様が使った魔法は、治癒魔法ではありません。魔法の名称は再生。エイドスの変更履歴を最大で24時間遡り、外的な要因により傷を受ける前のエイドステをフルコピーし、それを魔法式として現在のエイドスを上書きする魔法です。上書きされた対象は上書きされた情報に従い損傷を受ける前の状態に復元されます」

 

そのまま延々と説明する深雪。あたしにとっては何を話してるのかさっぱりだったが、早い話が過去データをロードするようなものだろうと勝手に解釈している。が、一つだけあたしにも分かってるのは、なんか、こう……再生させる時に兄ちゃんの精神には再生させた人の150倍のダメージが行くというとこだ。そのことが分かっててあたしは兄ちゃんに再生をさせてしまった。

 

「…………はぁ」

 

思わず、ため息が漏れた。

 

 

 





感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。