二人目の妹は入学すら出来ませんでした   作:スパイラル大沼
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開戦

 

 

一条くんと別れ、兄ちゃん達も出番が迫ったようで準備に向かった。あたしはといえば、出て行くフリして雫ちゃんと二人で席に着いた。だってフィールドワークなんかより雫ちゃんと一緒にいた方が充実するでしょ?

そのままリンちゃんさんのプレゼンを見ながら雫ちゃんのスカートをこっそりめくろうとして殴られたりしてた。だってなんの話ししてるか全然わかんないんだもん。その時だ。爆音が響いた。

 

「!」

 

騒然とする会場内。その中で聞き覚えのある声が響いた。

 

「深雪!」

 

「お兄様!これは一体……」

 

「正面出入り口付近でグレネードが爆発したのだろう」

 

兄ちゃんと深雪が話してる中、あたしは最も守るべき雫ちゃんを見た。

 

「思ったより落ちいてるね。雫ちゃん?」

 

「だって、美雨がいるもの……」

 

ああ……天使や……なんて考えてると、バタンッ‼︎とステージ後方の扉が開いた。

 

「大人しくしろ!」

 

ハイネックのセーターにジャンパーとカーゴパンツっぽい余裕のあるズボン。そしてハイパワーライフルを持っていた。

 

「デバイスを外して床に置け」

 

全員が従う中、あたしはぼんやり天井を見ていた。だってデバイス持ってないもん。それが悪目立ちしたのだろう。

 

「おい、そこの女。オマエもだ」

 

「……………」

 

「おい!お前だ!」

 

「……………」

 

「お前だっつーの!黒髪!そこの可愛いの!」

 

「えっ?なに、あたしに話しかけてる?」

 

「可愛いに反応するな!デバイスを置け!」

 

丁寧に突っ込んでからそいつはあたしの目の前まで来てライフルを突き付けてきた。

 

「美雨さん!」

 

奥で一条くんが動き、それを兄ちゃんが止めてるのが見えた。

 

「ごめんね、あたしデバイス持ってないんだ」

 

「ならなんでここに……てかなんで私服?」

 

「それより、気をつけたほうがいいよ」

 

「な、なんだと?」

 

「あたしに銃を向けると、黙ってないのが最低でも二人はいるから」

 

その瞬間、ステージの前で悲鳴が響いた。兄ちゃんが近くのテロリストAの腕を手刀で斬り落としたのだ。

 

「んなっ……⁉︎」

 

「それと、あたしもやられっぱなしじゃ終わらないタイプだから」

 

思いっきりそいつの顔面に拳を叩き込んだ。メゴッと謎の効果音と共に壁を突き抜けてテロリストは破裂した。汚ねえ花火だ。

 

「雫ちゃん、ちょっと待っててね。全員殺すから」

 

「いってらっしゃい」

 

数秒後、会場に入ってきた奴は全滅した。

 

 

 

 

「で、何故まだここにいる」

 

いつものメンバーが美雨の周りに寄ってきた。達也は不機嫌そうに美雨に聞いた。

 

「あーいや……その、なに?トイレ行ってたら巻き込まれた、的な?」

 

「お前な……」

 

「言ってる場合じゃないでしょ兄ちゃん。むしろあたしがここにいて助かったんじゃないの?」

 

「それは、そうだが……今日は学校行事だったんじゃないのか?」

 

「やだなー行事なんかよりお兄ちゃんの命の方が大切だよ☆」

 

と、横ピース。

 

「可愛くない」

 

「ひどい」

 

で、エリカが聞いた。

 

「それにしても随分と大事になってるけど……これからどうするの?」

 

「逃げ出すにしても追い返すにしても、まずは正面入り口の敵を片付けないとな」

 

「待ってろ、なんて言わないよね?」

 

「別行動して突撃されるよりマシか」

 

そして、達也は真由美に言った。

 

「七草先輩。中条先輩も、この場を早く離れたほうが良いですよ。そいつらの最終的な目的が何であれ、第一の目的には優れた魔法技能を持つ生徒の殺傷またら拉致でしょうから」

 

それだけ言うと、達也はその場を後にした。

 

 

 

 

正面出入り口前。

 

「止まれ!対魔法師用の高速弾だ!」

 

レオの襟首を掴んで引きずり戻す達也。

 

「ぐぇっ!」

 

「……達也、容赦ないね」

 

「でも、おかげで命拾い」

 

幹比古がしみじみと言って、雫が淡々と言った。

 

「美雨。先行頼む」

 

「はーい」

 

美雨が堂々と歩き出した。その瞬間、武器を向けるテロリスト。その銃弾を全部躱し、それと共に敵の場所を把握した。

 

「殺しちゃうぞ?」

 

どこぞの夜兎族の台詞と共に超スピードによって25人に増えた美雨はあっという間に全員を倒した。パッカァンと気持ちのいい楽器のような音で正面入り口のテロリストの頭はカチ割られ、血がブシャッと吹き出した。

 

「う〜深雪〜。血ィ拭いてぇ〜……」

 

「はいはい……」

 

そのまま深雪の魔法によって美雨の手に着いた返り血はすべて綺麗に消えていった。

 

「なんか、出る幕なかったな……」

 

美雨の暴れっぷりを見てレオが声を漏らした。

 

「それで、これからどうするんだ?」

 

幹比古が聞いた。

 

「情報が欲しい。エリカも言ってたが、予想外に大規模で深刻な事態が進行しているようだ。行き当たりばったりでは泥沼にはまり込むかもしれない」

 

「VIP会議室を使ったら?」

 

「雫ちゃん可愛い!」

 

「美雨黙れ埋めるぞ。それで雫、VIP会議室とは?」

 

「う、埋める……?」

 

「うん。あそこは閣僚級の政治家や経済団体トップレベルの会合に使われる部屋だから、大抵の情報にアクセスできるはず」

 

「そんな部屋が?」

 

「一般には解放されてない会議室だから」

 

「……良く知ってるね、そんなこと」

 

「暗証キーもアクセスコードも知ってるよ」

 

「凄いんですね……」

 

「小父様、雫を溺愛してるから」

 

「よし、その小父様のところに連れてって。縁談の話を……」

 

「雫、案内してくれ」

 

そんなわけで、VIP会議室へ向かった。

 

 

 





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