二人目の妹は入学すら出来ませんでした   作:スパイラル大沼
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翌日。授業中。あたしはゲームをやっている。エクストリームバーサスアルティメットブースト。ちなみにこのゲームのシリーズ、もう何十年も続いてるらしい。
『諸君らは私にやられに来たんだよなァーッ‼︎』
ダハックなう。天才クリムくんマジ面白い。やっぱ好きなキャラで戦うからゲームは面白いんだよね。なんてことを考えながらとりあえず殲滅すると、携帯が震えた。
「お?」
メールが来た。
雫『しりとり』
「なにこれ可愛い‼︎」
この後、自分から挑んだしりとりで嵌められて泣きそうになってる雫を妄想しながら「く」でハメてると、本当に泣かれて、「もう知らないっ」とメールが来て鼻血が出た。
*
日曜日。あたしは病院にいる。理由?それは、
「なるほど……看護婦さんの服装はあんな感じか……」
雫ちゃんの薄い本で、雫ちゃんに看護服を着せるためだ。その参考として、看護婦さんの中の一人(可愛い人限定)をストーキングして、看護婦さんは普段どんなことをしてるのかとかを詳しく抑えるためだ。ちなみに前作はお巡りさん。食い逃げの犯人(あたし)を追いかけてたら雫ちゃんが追いかけてきて、路地裏であたしが雫ちゃんを食い逃げ……、
「グェッヘッヘッ………」
おおっと、よだれが……なんてやってると、声を掛けられた。
「あれ、美雨ちゃん?」
男の人の声。振り返るとエリカのお兄さんが立っていた。
「おー。修次さん、と渡辺さん!久しぶり!」
「美雨か。久しぶり」
渡辺さんも挨拶してくれる。が、心なしか不機嫌だ。あー九校戦の時に修次さん取ったからな。
「何してるんだ?こんな所で」
「看護婦さんのストーカー!」
「はっ?」
「聞き返すなシュウ、こういう子なんだ……」
呆れ顔の渡辺さん。
「ていうか、お二人こそなんでここに?病院デート?」
「どんなデートだ。この前、うちの生徒がなんかやらかしてな。その尋問だ」
「へー。その付き添いでシュウさん?」
その瞬間、またピキッと渡辺さんの眉間にシワが寄る。なるほど、他の女にシュウとすら呼ばせたくないのか。
「そ、そうだ」
ふーん、ラブラブなんですね。爆発しろ。ちょっとからかってやろ。
「じゃあシュウさんいらないですよね!あたしとデートしましょう!」
「「ブフッ!」」
噴き出す2人。
「み、美雨!お前何言って……!」
「だって取り調べしてる時に知らない人がいると向こうもしゃべりずらいでそ?だからあたしとお茶でもどうカナーって?」
「そ、そうはさせんぞ!な、なぁシュウ⁉︎」
「そういえば喉乾いたな……」
「シュウ⁉︎」
ど、どどどどーしよ〜〜〜みたいになってる摩利は少し新鮮で可愛かったです。その時だ。突然、非常ベルが鳴り響いた。
「シュウ⁉︎」
さっきと全く同じ台詞だが、全く違うイントネーションで摩利さんはシュウさんを見た。
「火事じゃない。これは暴対警報だ。場所は4階だな」
「4階⁉︎」
「もしかして、摩利の後輩が入院してるのも4階か?」
聞かれて頷く摩利さん。
「行こう。美雨ちゃんはここで……」
「二人ともしっかり掴まってて」
「は?」
間抜けた顔をするシュウさんと摩利さんの手を掴むと、あたしはジャンプして一気に4階まで飛んだ。
「………あれ?なんでここに……」
「聞くなシュウ。こういう子なんだ」
なんて話してる2人。その片方の渡辺さんに聞いた。
「渡辺さん、さっき言ってた後輩さんの病室は何処ですか?」
「あ、ああ。こっちだ」
そのまま三人で移動した。
*
「何者だ⁉︎」
修次が叫ぶと、病室の前にいた大男は振り返る。
「人喰い虎……呂剛虎!何故ここに⁉︎」
「ブァッハッハッハッ‼︎人喰い虎って何⁉︎どう見ても人間……つーかゴリラじゃん‼︎」
緊張感なく爆笑してる美雨を無視して呂は呟いた。
「幻刀鬼……千葉修次」
そう呟くと、三人に向かって突っ込んでくる呂。
「来るぞ!」
と、言った修次の前に美雨が立つ。そして、片手で呂の鋼気功を止める。
「み、美雨ちゃんっ⁉︎」
「ゴリラ、あたしと遊ぼう?」
「上等」
反対の手で殴りかかってくる呂。その前に腹を蹴り飛ばして、壁に叩きつける。
「シュウさん、あたしが引き付けるから奴をお願い。あたしの攻撃力じゃ病院が滅んじゃうよ」
「分かった。摩利、すまないが後輩さんを頼む」
「分かった」
と、その瞬間、殴りかかってくる呂。それを後ろに躱す美雨。その後ろから修次は刃渡り15センチの刃を出して追撃。
「思ったより喧嘩慣れしてるなぁ……」
攻撃を躱しながら美雨は呟いた。そのまま右手フックを繰り出す。もちろん、威力は殺している。それを左手でガードする呂。その瞬間、後ろから修次が斬りかかった。その斬撃を右手でガードした。
「!」
そのまま修次に蹴りを入れる呂だが、後ろに下がり躱される。そのまま修次にラッシュ。それを躱しながらズルズル下がっていく修次。そして、窓まで追い込まれた。
呂はそのまま修次にトドメを刺そうと鋼気功を放つ。それを待っていたかのように修次は躱し、呂の後ろを取った。が、呂は反応し、すぐに相対する。そして、再び修次に殴りかかる呂だったが、修次はニヤッと笑ってしゃがんだ。その後ろから美雨が突撃してきた。
「ッ‼︎」
美雨の拳と呂の拳がぶつかり合い、その衝撃波で呂の後ろの壁が吹き飛んだ。そのまま拳を弾かれ、後ろによろめく呂。その隙を逃さず、修次は追撃した。圧斬りを放つ。それを中途半端に呂は弾かれた反対の手でガードしたが、ガードし切れずに、破壊された壁から落下していった。
*
「ふぅ……疲れたぁ……」
息を吐くあたし。結構強かったかもなー。まぁ病院じゃなければワンパンで終わってたけど。
「美雨ちゃん、すごいな。魔法無しで奴の攻撃を全部捌くなんて」
「余裕」
「二人とも無事か⁉︎」
走って来たのは摩利さん。
「だいじょーぶだよ摩利さん。あたしを誰だと思ってるの?」
「それも、そうだな……。シュウは大丈夫か?」
「大丈夫だよ。それより、美雨ちゃんは何者なんだ?攻撃力といい只者じゃないだろう」
「曲者です☆」
目の横にピースしてウインクするあたし。
「それが、よくわからん。ただ恐ろしく強い」
と、代わりに答えたのは摩利さんだ。
「そっか……にしても、あの威力でまだ力を抑えてたんだろう?恐れ入るよ」
「まぁ結局壁は壊しちゃったんだけどね……。あー……また弁償かなぁ……」
「とにかく、助かったよ。ありがとう」
ニッコリ微笑むシュウさん。ヤバイこの人イケメン。そのシュウさんにあたしは聞いた。
「………で、シュウさん。死んだと思う?」
「………いや、死んでないだろうな。奴は外見通りタフそうだ。それに、仲間が外にいたかもしれない」
で、シュウさんは摩利さんを見た。
「摩利。僕は明日、発たなければならない。こんな時、傍にいてやれはいのはとても気懸りだけど……」
「わかっているよ、シュウ。それで、何が言いたい?」
「呂剛虎はおそらく君を見ている。摩利を敵対者と認識したはずだ」
それにしっかり頷く摩利さん。
「相手は『人喰い虎』の異名を持つ凶暴な魔法師だ。力量の方も今見たとおり。だからしばらくの間、決して一人にならないようにして欲しい」
そう言われ、摩利さんは深く頷いた。
「大丈夫だよシュウさん。あたしがいるもん」
「………そうだね。美雨ちゃんも油断しないようにね」
「分かってるよ」
イケメンだ……。爆発しろ。