二人目の妹は入学すら出来ませんでした 作:スパイラル大沼
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あたしは何をしているんだ。素直にそう思った。ここがどこだか分からない。確かついこの前までは雫ちゃんの船で旅行に出ていたはずだ。で、帰ってきて、あたしは帰り道のついでに兄ちゃんと深雪とわかれて新作ゲームを買いに行った。で、無事購入してから、ものっそい漫画的展開なことに、そのゲームの入った袋をカラスに取られた。ブチ切れて追いかけてるうちによくわからないところまで来てしまった。
「はぁ……ここ、どこ?」
涙目で辺りをキョロキョロすると、どこかで見たことある人が歩いていた。名前なんだっけ……えっと、確か柔道一直線って漫画の二段投げとかいう技を披露していた人みたいな名前の………、
「一条さぁーん!」
呼ぶと、クルッと振り返る一条さん。その瞬間、顔を若干赤く染めた。
「み、美雨さん……?」
リアクションする一条さんだが、そんなの気にせずにあたしは目の前まで寄った。
「こんにちは!……あれ?一条くん、だよね?」
「う、うん。どうしてここに……?」
「え?あ、あー……まぁ、色々あって……」
言えない……ゲームを追いかけてここまで来たなんて言えない……。
「そ、そんなことより、ここどこ?」
「どこって……三校だよ」
「三光?花札?」
「いや、違くて……。国立魔法大学付属第三高校」
「それって、どこにあるの?」
「石川県の金沢市だよ」
「ごめん聞き間違えたかも。もっかい言ってくれる?」
「石川県の金沢市だよ」
「………………」
イシ、カワ……カナ、ザワ………。
「ど、どうしよう……帰れないよ……」
「ど、どうやってここまで来たんだ?それさえわかれば……」
「走って」
「ごめん聞き間違えたかも。もう一回言ってくれるか?」
「や、だから走って」
「……………お金は?」
「ゲーム買うのに全滅した」
「ってことは、帰るのも泊まるのも無理ってことか……」
「うん………いいよ。野宿するから。兄ちゃんに連絡して明日迎えに来てもらうよ」
そのままあたしは引き返そうとした。だが、
「ま、待って!」
「?」
一条さんは顔を赤らめ、少し迷ったような仕草をしたが、すぐに言った。
「そ、その……うちに来ないか?」
「へ?」
「ほ、ほら……困ってるみたいだし……妹が2人いるけど、それでいいなら……」
「妹ちゃん……?二人……?」
頭の中にハーレムが浮かんだ。
「行く行く!ぜぇーったいに行く!」
「そ、そうか……。今、人を待ってるからもう少ししたら帰ろう」
「うん!」
やばい!俄然楽しみになってきた!
*
で、吉祥寺くんも加えて一条家。
「ただいま」
一条くんが挨拶すると、たまたま玄関にいたのか、女の子が立っていた。
「おかえりー。あ、真紅郎くんと……」
続いて吉祥寺くんに目をやり、あたしを見た瞬間、その子は持っていた本を落とした。
「に、にっ兄さんが……女の子を家に連れ込んだァッ⁉︎」
「おい待て落ち着け茜。そういうんじゃないから。……っと、美雨さん。紹介するよ。上の妹の茜。で、茜。あれは司波美雨さん」
「おー!この人が?綺麗な人だなぁ〜……」
と、感心する茜ちゃんの目の前にあたしはいた。
「って、あれ?いつの間に………」
「可愛い!」
「………はっ?」
「流石、イケメンの妹ちゃんなだけあって可愛い!結婚しよう⁉︎」
「け、結婚⁉︎な、なにを……!」
「大丈夫だよ!最悪、あたしが付けるから!男の子のビッグマグナ……」
そこで、あたしの携帯に電話が掛かってきた。兄ちゃんからだ。
「もしもし?」
『美雨、言動に気を付けろよ』
「なんでわかるの⁉︎」
「なぁ将輝、なんか容姿とは正反対な子だな……」
「尚更可愛い」
「将輝⁉︎」