二人目の妹は入学すら出来ませんでした   作:スパイラル大沼
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ヤキモチ

 

 

 

「美雨。浮き輪動かして」

 

「はいはーい」

 

「あ、綺麗なヒトデ。取って」

 

「りょーかい」

 

「お腹減った。魚狩ってきて」

 

「うい」

 

言われるがまま、あたしは雫ちゃんに従う。そして、とりあえず少し離れてマグロ狩りに潜水した。一匹捕らえて帰り道にデッカい貝を持って雫ちゃんの元へ。

 

「はい」

 

「ほ、本当に捕まえたの……?あとその貝は?」

 

「まぁ見ててよ」

 

言いながらあたしは素手でマグロを解体した。少し前に興味出て調べておいて正解だった。

 

「」

 

で、最後に貝に盛り付ける。

 

「はい、醤油がないのは我慢してね」

 

「い、いただきます……」

 

そのまま海の上で二人でマグロをいただいた。

 

「んー!美味しいね、雫ちゃん!」

 

「うん。美味しいけどなんか釈然としない感じ……」

 

「? なにが?」

 

「美雨には一生分からないと思うな……」

 

なんだろ……。変な雫ちゃん。この後、マグロ丸一匹を雫ちゃんが食べ切れるはずもなく、ほとんどあたしが食べた。

 

「……よく食べるね美雨」

 

「あたしはいつもこんなもんだよ?サイゼのステーキとかいつも10枚は食べるし」

 

「よく太らないね」

 

「あたし、いくら食べても太らないんだー」

 

「そんなわけないっ‼︎」

 

「いきなり⁉︎」

 

なんてやりとりはともかく、そのまま二人はずっと一緒にいた。

 

 

 

 

その日の夜。バーベキュー。

 

「美味ぇな!」

 

と、豪快に言い放つレオ。

 

「しかし幹比古。お前もっと食わなくていいのか?全部俺が食っちまうぜ」

 

「むっ。じゃあ今度は大食い勝負でもする?」

 

「上等だよ!」

 

と、面白そうな空気になってきた。

 

「あ、ならあたしも入れてよ」

 

「いいぜ!おーい達也。試合開始の合図を頼む」

 

と、レオは兄ちゃんを呼ぶ。が、兄ちゃんは呆れたようにため息をついた。

 

「お前らなぁ……」

 

「駄目よ」

 

口を挟んだのはエリカ。

 

「育ち盛りの男子二人で大食い競争なんてやったら私達の食べる分なくなっちゃうでしょ?」

 

「なんだお前!男の戦いに水を差す気か⁉︎」

 

「1人は女の子でしょうが!」

 

「そ、それに……美雨ちゃんはやめておいたほうがいいんじゃないですか?いくらなんでも、大食いで男の子に挑むのは……」

 

ミッキー(女)も言った。が、それを深雪が一蹴する。

 

「いいえ美月。美雨に大食いは例え男の子であっても勝てないわ」

 

「? どういうこと?」

 

「食没でも出来るの?ってレベルで美雨は食べるのよ」

 

「ほお!そりゃやり甲斐があるな!」

 

「だからやらせないわよ!」

 

「ていうか、深雪。食没って、トリコの?」

 

「そうよ、ほのか」

 

「なんか、すっごく意外……」

 

「この前、あたしが単行本全巻貸したらハマっちゃってさー。あっ、せっかくだから今からフグ鯨でも探しに行く?」

 

「ぼ、僕も行きたい!」

 

「み、幹比古もトリコ好きなのか?考えてみれば名前も少し似てるな……」

 

「僕の名前は幹比古だ!達也!」

 

と、まぁこんな感じで楽しい時間を過ごせたと思う。一人を除いて。

 

 

 

 

食事が終わり、みんな後片付けをしてる時だ。

 

「美雨」

 

雫ちゃんの声が聞こえた。

 

「? どしたの?」

 

「ちょっと、散歩でもと思って」

 

「散歩⁉︎雫ちゃんと⁉︎夜の⁉︎いいよ!そのまま朝帰りでもしちゃう⁉︎」

 

「いいから、来て」

 

言われるがままついていった。

 

「どしたの?」

 

「ごめんね。私のただの我儘だし、変なこと言ってるなって、自分でも思うんだけど……」

 

雫ちゃんは少し恥ずかしそうに身をよじると、言った。

 

「その……美雨が、私以外の子達の仲良くしてるの見ると……なんとなく、嫌なんだ」

 

「は?」

 

思わず間抜けな声が出てしまった。

 

「どゆこと?」

 

「ううん。別に私は美雨以外にも仲良い子いるから、私を一人にしないで的な意味じゃなくてね。その……気がついたら、友達じゃなくなってる、とかさ……友達の友達、みたいな関係は、嫌なんだ」

 

「? 誰と誰が?」

 

「私と、美雨だよ」

 

なんだろう……雫ちゃんが何を言わんとしてるのか分からない。あっ、いや分かった。

 

「つまり、ヤキモチやいてるの?」

 

「た、端的に言えば……」

 

何この子可愛い。でも、ここは甘やかしちゃダメだ。

 

「ごめんね雫ちゃん。いくらなんでも言うこと聞く、とか……いや、そうじゃなくてもそれは無理かな。あたしは、みんなと仲良くしたいもん。それにね、」

 

そこで言葉を切ってあたしは微笑んだ。

 

「あたしは雫ちゃんのこと嫌いになったり、雫ちゃんと離れたりは絶対しないから、大丈夫だよ」

 

「…………そっか。ごめん。ありがと」

 

「ううん。全然」

 

「じゃあ、これからもよろしくね」

 

「うん!」

 

てなわけで、なんとなく仲良くなれた。

 

 

 

 





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