二人目の妹は入学すら出来ませんでした 作:スパイラル大沼
<< 前の話 次の話 >>
そんなわけで、集合して船で出発。だが、あたしは持ってきた毛布に包まっている。
「美雨?どうしたの?」
「ひ、陽の光が……」
雫ちゃんに聞かれ、思わず死にかけ状態で返してしまった。頭に「?」マークが浮かんでる雫ちゃん。
「雫、そこのバカは放っといていいわ。ほとんど一週間くらい地下にいたからそうなってるだけよ」
深雪が代わりに解説してくれた。
「地下?なんで?どこの?」
「自宅のよ。自分で穴掘って地下室作ったのよ」
「えっ」
「だからほっときなさい」
そう、今回ばかりはほっといてくれると助かる。なんて思ってると、あたしの体は宙に浮いた。エリカが抱っこしてくれている。
「エリカ………」
そう呟くと、ニッコリ微笑むエリカ。あたしも思わず微笑み返した。あたしの天使は雫ちゃんだけじゃなかった……と、思った瞬間、
「わっせろーい!」
海に投げ捨てられた。
「へああぁぁぁぁあああああっっ‼︎‼︎⁉︎」
ドッボーン☆と水飛沫をあげて海に沈んだが、すぐに海面から顔を出す。
「な、何すんのよエリカ!」
「へ?特に意味はないけど?」
「こっの……」
あたしはかめはめ波を放つように両手に海水を溜め込んだ。
「えっ……何する気あの子………」
「ヤバい……!レオ、船に硬化魔法を張れ!」
「へ?お、おう!」
エリカ、兄ちゃん、レオと声を出す。あたしはそれらを一切無視して水をかめはめ波の如く放った。それが硬化魔法を張った船に直撃する。
「ッッ‼︎」
「うおっ⁉︎」
「な、何⁉︎」
結果、船は加速し、そのままあたしの見えない所まで行ってしまった。
…………置いてかれちった。
*
仕方ないので海の中を泳ぎながら進み、ようやく媒島に到着。
「あ、美雨。遅かったわね」
「み、深雪?この子、泳いで私達の到着の10分遅れなんだけど……」
「てか、なにその荷物……」
と、深雪に続いてほのかちゃんと美月が声を漏らす。あたしの手にはマグロ二頭が握られている。
「美味しそうだから狩って来たんだ。後で食べよ?」
「いや、どうやって捕らえたのそれ」
「殴って」
「うん。なんかもう何聞いても無駄な気がしてきた……」
呆れるほのかちゃん。あたしは少し疲れたのでパラソルの下で休もうとしたのだが、
「美雨」
雫ちゃんに手を握られる。
「泳ご?」
「いや、今私服で軽く三百キロくらい泳いで来……」
「泳ご?」
「ぶっちゃけここ10年分の泳ぎを披露し……」
「泳ご?」
「よぉし!泳ごうかぁっ!」
無理矢理にでもテンションを上げないと心が折れそうだった。
*
着替えて海にみんなで入る。しばらく潜ったり何したりしてたら、あたしの顔にバシャッと水が掛かった。
「んあっ⁉︎」
振り返ると、雫ちゃんがいた。
「このっ……!」
と、やり返そうとすると、さらに別の場所から水がかかる。ほのかちゃんだった。さらに、美月、エリカ、深雪と攻撃してくる。ていうか、深雪は少し嬉々とし過ぎてんな。
「ち、ちょっと!五対一なの⁉︎」
だが、向こうの猛攻は終わらない。さらに魔法を使ってるのか?ハイドロポンプ並みの水が飛んできた。
「みんなー!やれー!」
「九校戦で無敗の化け物を倒すチャンスよ!」
などと声が上がる。…………ほほう?よろしいので?あたしは少し潜水した。そして、ほぼ瞬間移動並みの速さでみんなのいる所から500mほど離れ、顔を出した。ていうか海の上に立った。
「あれ?美雨いなくない?」
「あ!あそこ!」
「た、立ってる……?」
この立ちはセツ婆式の立ち方で、足を…こう、パチャパチャさせてる。そのまま水を思いっきり掴んだ。
「ヤバいの来るよ!」
「みんな!防御!」
との声が上がるが、貴様らの盾であたしの攻撃が防げるものか。
「魚人柔術 水心 海流一本背負いィッッ‼︎‼︎」
そのまま水を思いっきりブン投げた。
「うぇあぁあっ⁉︎」
それが、五人のいるところに直撃。………いや、直撃してないな。よく見ると、兄ちゃんが相殺していた。少し加減しすぎたか。
「俺も混ぜてもらおうかな。美雨」
「兄ちゃん!そこはこっちの味方じゃないの⁉︎六対一とか男として恥ずかしないの⁉︎」
「一人で全人類分の戦闘力を持つ奴が何言ってる」
いやさすがにそこまで行くかは分からないけど………。思わず戸惑ってると、再び攻撃してきた。魔法をさらに強化して、こっちまで攻撃を届かせてくる。
こっちはこっちでベジータの気弾並に水を放つが、兄ちゃんの分解によって防がれる。
…………無理ゲーじゃね?あたしは勝利を諦めた。ただし、諦めたのは勝利だけだ。雫ちゃん、後で覚えておいてね?