二人目の妹は入学すら出来ませんでした 作:スパイラル大沼
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夏休み
夏休み。
「それでは、来週の金曜日から日曜日にかけての二泊三日で。雫に連絡してまいります」
深雪はそのままパタパタと部屋に戻る。雫から海に行こうとの誘いがあったのだ。深雪の姿を後ろから眺め、フッと息を吐くと、達也は何気なく電気代の請求書に目を通した。
「………最近、使い過ぎてるな……」
ありえない数字が書いてあったので、思わずそんな呟きが漏れた。で、達也は深雪と美雨に声をかけに部屋に向かった。先に美雨の部屋に入ったのだが、中には誰もいない。仕方ないので深雪の方を先に回った。
「深雪、入るぞ」
電話はすでに終わっていたのか、「どうぞ」と声がかかる。
「お兄様、どうかされましたか?」
「いや、別に俺が払うわけではないからどうでもいいんだが、電気代とガス代がとんでもない金額になっていてな」
「どのくらいですか?」
「20万」
「そ、それは………」
「間違いなく美雨のせいなんだろうが……あいつは何処にいるんだ今?ここ最近、まったく見てないんだが……」
「そういえば、部屋にもいませんね最近」
「携帯にかけてみるか……」
電話をかける達也。
「………出ないな」
「探してみましょう」
二人は家の中を捜索する。その途中だ。
「あら?」
風呂場に割り箸の片方が落ちてるのをみつけた。
「何故こんなところに……」
その割り箸をつまみ上げると、さらに不可解なことが。指一本分の穴が空いていた。どうしようか迷ったものの、深雪は達也を呼びに行った。
「………で、これがその穴か?」
「はい」
「……………なるほど、そういうことか」
「えっ?」
達也は納得すると、その穴に指を突っ込んだ。
「ふんっ」
そのままグイッと持ち上げた。すると、床がカポッと外れて、下に階段が現れた。
「! お兄様!」
「………深雪はここで待っていろ」
No Head Dragonの残党か、もしくは別のテロリストか……。なんにせよ、深雪を危険に合わせるわけにはいかない。だが、深雪は、
「いえ、私も行きます」
とのことで、二人で中へ入った。中は真っ暗で明かりがないので、達也は携帯のライトを着けた。そのまま階段を降りる。10段ほど下ったところで、扉が出てきた。扉からは冷気が漏れ出していて、少し肌寒い。
「……………中に、一人か。かなりの電子機器を使用しているな。盗聴、盗撮されていたか、あるいはアジトに連絡を取っているか……なんにせよ、逃すわけにはいかないな」
そう呟きながら達也はアイコンタクトだけで深雪に合図する。頷く深雪、そして、扉を開けた。中では、
美雨がカップ麺やらカップ焼きそばやらのゴミの山を築き上げた部屋で、1人でパソコンを5台弄っていた。
内、二台は動画を流しているだけ。残りの3台はそれぞれ別のゲームが繰り広げられている。戦闘、戦略、エロゲの3つ。冷気の正体はガンッガンにきいたクーラーだった。
「………寝たいよぉ〜……でも、挑まれるよぉ〜……しずくちゃあああん………」
思わず達也と深雪は固まった。すると、パソコン二台にwinnerと出て、エロゲの画面にはエンディングが流れる。
「あー!終わったー!疲れたぁー!もう無理ー!」
そのままゴロンと後ろに倒れ込んだ。
「おい美雨」
「ふえぇ…………? って、兄ちゃん!」
「何やってるんだお前。まさか、ずっとここに引き篭もってたのか?自分で地下室まで作って?」
「ま、まさかぁ〜!あたしもこの前初めて知ったんだよ〜!この家に地下室があったなん……」
「ない。その事を俺が把握してないわけがないだろう」
「……………」
「なんていうか……お前もうすごいな。普通に尊敬する」
「ご、ごめんなさい………」
「や、もう別に何も言わない。ただ電気代とガス代がとんでもないから、明日にはここを撤退しろよ。それから、毎日飯の時くらい顔を出せ」
「! うん!」
「それから、来週の金曜から日曜にかけて二泊三日で雫と海に行くから、それだけ頭に入れておいてくれ」
「………はーい」
「じゃあな」
そのまま達也は出て行った。ふぅーっ、助かったぁ〜……と美雨は息をついた。だが、
「美雨?」
深雪がにっこり微笑んだ。
「私は許したなんて言ってないわよ?」
(あ、死んだ)