二人目の妹は入学すら出来ませんでした   作:スパイラル大沼
<< 前の話 次の話 >>

39 / 91
完全勝利

 

 

 

あたしはホテルへ戻った。次の試合まで時間があるため、雫ちゃんとゆるゆりしようと思ったからだ。で、ホテルに入ると、兄ちゃん、雫ちゃん、ほのかちゃんが待っていた。

 

「うーっすみんな。見てた?あたしの華麗なる分身とスカイウォーク」

 

「ああ、見てたよ」

 

「………ていうか、美雨って飛べたの?」

 

「あと、増えるの?」

 

と、普通に微笑んでくれる兄ちゃんとゲンナリした様子で聞いてくる2人。

 

「まぁね。ま、この様子なら優勝は間違いないでしょう」

 

「それもそうだね。勝ったらお祝いしないとね」

 

と、ほのかちゃんが微笑みながら言った。

 

「今回の九校戦、本当に美雨のおかげだから。カッコよかったよ、美雨」

 

「しーずーくーちゃーん!ありがとう!結婚しよう!」

 

「久々に聞いたなそれ」

 

なんて盛り上がってると、兄ちゃんが口を開いた。

 

「それで、美雨」

 

「ん?」

 

「脚を見せてみろ」

 

「えっ……?」

 

やばっ、バレタ。

 

「な、なんで?兄ちゃんって足フェチだったっけ?」

 

「そういうことじゃない。足首を見せてみろ」

 

「あ、足首⁉︎どこまでマニアッ……」

 

「怒るぞ」

 

「……………」

 

あたしは渋々、椅子に座って足首を見せた。

 

「うわっ」

 

ほのかちゃんが声を上げた。つーかあたしも声上げそうになった。思ったより腫れ上がっていた。

 

「み、美雨⁉︎どうしたのこれ!大丈夫?……はっ!し、湿布……!」

 

「お、落ち着いて雫ちゃん。大したことないから……」

 

「た、たいしたことないわけないよ!自爆寸前のセルみたいになってるよ!き、救急車……!」

 

「いやいや!大袈裟だよ!ほんと大丈夫だから………」

 

「美雨」

 

兄ちゃんに声をかけられた。いつもより少し冷たい声。

 

「無理と油断はするなと言っておいたはずだ」

 

「うっ………」

 

「小早川先輩を助けた時だな?」

 

「………よく、わかったね」

 

「何年一緒にいると思ってるんだ。普段、分身する時は18人だが、今日は5人少なかった。それに、第二ピリオドの後半は分身の数がさらに3人減っていた。何より、最後着地する時に、若干よろ付いてたからな」

 

「やっぱりかぁ〜………」

 

あたしは思わずため息をついた。すると、兄ちゃんと雫ちゃんが目の前に顔を突き出してくる。

 

「何故言わなかった?」

 

「休もうとか思わなかったの?」

 

「まさか、その足で出るつもりだったなんて言わないよな?」

 

「無理しちゃダメって言われてたんでしょ?」

 

「もし、足が悪化したらどうするつもりだ?バカなのか?」

 

「助っ人の人に怪我されて勝っても誰も喜ばないんだよ?」

 

うう……袋叩き……。ていうかなんかこの2人が一番兄妹っぽいな……。

 

「ま、まぁまぁ二人ともその辺で……」

 

ほのかちゃんが止めてくれた。

 

「ほのかちゃーん!やっぱ天使はほのかちゃんだ!結婚しよう!」

 

「ええっ⁉︎」

 

なんて可愛らしい反応……。やっぱり、初々しい子はいいなぁ……。いずれはお嫁さんにしたい。っと、その前に、

 

「でも、あたしは出るよ」

 

「なに?」

 

「ひうっ!」

 

やばっ、今の兄ちゃんのトーンが今まで聴いた中で一番怖かった気がする。

 

「だ、だってぇ……ほ、ほら、元々渡辺さんの、替え玉の深雪の替え玉なわけでしょ?だ、だからほら、あれ……その、なに?もう、出れるのはあたししかいないしぃ……それに、一高の優勝がかかってるわけだから、その……」

 

心底ビビりながら答えた。だが、兄ちゃんは、

 

「バカ言うな。優勝なんかよりお前の体の方が大切だ」

 

「に、兄ちゃん………」

 

おお、今のは少し……いや少しっつーかガッツリ感動した。

 

「兄ちゃーん!」

 

ヒシッとあたしは兄ちゃんに飛び付いた。

 

「ふふ、甘えん坊だな美雨は」

 

………なんかあたしの望んでた反応と180°違うや。まぁいいけど。そのまま抱き締めたまま、顔だけ上を向いて聞いた。

 

「でも、どうするの?九校戦。せっかくここまで来たのに……」

 

「どうするも何も出れないものは仕方ないさ。棄権するよう……」

 

「その必要はありませんお兄様」

 

声がした。

 

「替え玉が怪我をしたのなら、その前の人物が出ればいいだけの話です」

 

言いながらニコッと微笑んだのは深雪だった。でもなぜでしょう、目が笑ってないんですよねコレが。

 

「周りな人の眼もあるというのに何をしてるのですか?お兄様、美雨」

 

「げっ、深雪………」

 

「もう風邪は大丈夫なのか?」

 

おい、このアホ兄貴は何を平然と質問してんの。他人の怒りを感じない人なの?

 

「はい。すっかり元気です」

 

だから目が笑ってないって深雪!

 

「試合に出るつもりか?病み上がりなのに平気か?」

 

「問題ありません。この通り……」

 

そこで言葉を切る深雪。かと思ったら、あたしと兄ちゃんは抱き合ったまま凍らされた。

 

「元気です」

 

「み、深雪さん……?」

 

いや、察知するの遅いよバカ兄……。ていうかあのアホ姉貴も怪我人に魔法使うか?………いや待てよ。逆に怪我であることを利用しよう。

 

「痛っ!」

 

「! どうした美雨?」

 

「あ、足が……なんか、凍ってから、また痛みが……」

 

「深雪、魔法を解除しなさい」

 

言われて渋々氷を消す深雪。

 

「まずは応急処置が先だな……。でも美雨が深雪となっている以上、普通の医務室は使えない。俺の部屋で診るか」

 

計算通り‼︎いや、むしろ兄ちゃんはあたしの狙いを知ってて乗ってる可能性すらある。

 

「んなっ……!お、お兄様の……⁉︎」

 

「深雪、CADを貸してくれ。ついでに調整しておく。深雪は先に選手控室で待機してなさい」

 

「えっ……そんなっ」

 

「行くぞ、美雨」

 

言いながら、兄ちゃんはあたしをおんぶした。

 

「んなぁっ⁉︎お、お兄様⁉︎なっななな何をっ……‼︎」

 

「悪化すると悪いからな、仕方ないだろ」

 

「〜〜〜ッッ‼︎うわああああん!」

 

そのまま深雪は走って逃げた。ふははははっ!完全勝利!

 

 

 

 





感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。